【完結】目指せ、破談!お見合い決戦! 病弱白塗り令嬢 vs 感涙公爵令息

恋せよ恋

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幸せな夏の午後

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 オルレアン伯爵家とコルディア公爵家が結ばれたあの日から、数年の月日が流れた。
 かつて「病弱ゆえに屋敷の奥深くに隠されている」と囁かれた少女、ジュリエットは今、王都で最も『優秀』、かつ『爆速』な公爵夫人としてその名を馳せている。

「――はい、この案件は否決。予算の配分が非効率的ですわ。こちらは承認。ただし、納期を三日早めてちょうだい。……ええい、じれったい! その書類、私が直接サインするからこちらへ回して!」
 コルディア公爵邸の執務室。羽根ペンを剣のように振るい、凄まじい速度で書類の山を片付けていくのは、麗しき若奥様、ジュリエット・コルディア公爵夫人である。
 彼女の瞳はかつての「死相メイク」の面影など微塵もなく、健康的な輝きに満ち、頬は常にバラ色だ。

「奥様、本日分の商工会への回答書、全て完了いたしました」
「ご苦労様! 次は領地の開墾計画書ね。……さあ、さっさと済ませるわよ! 午後はサミュエル様と遠乗りに行く約束なんだから!」
 その言葉に、控えていた使用人一同が「おお……!」と感嘆の声を漏らす。

 実はジュリエット、公爵夫人としての素質が桁外れだったのだ。
 「早く遊びに行きたい」という野生児ゆえの強烈なモチベーションが、彼女の事務処理能力を極限までブーストさせていた。複雑な領地経営も、彼女にかかれば「障害物競争」と同じ。最短ルートを見つけ出し、力強く突破していくその手腕に、当初は不安視していた義両親も今では手放しで大満足している。

「ジュリエットが来てからというもの、我が家は実に風通しが良くなった」
「ええ、あんなに面白みのないサミュエルが、まるで子供のように笑うようになるなんて」
 大公夫妻が目を細める先には、執務室に現れた現公爵、サミュエルの姿があった。

 かつての鉄仮面のような面影はどこへやら。今の彼は、ジュリエットを見るだけで目尻が下がり、纏う空気は春の陽光のように明るく穏やかだ。
「ジュリエット、終わったかい? 私の方は準備万端だ」
「サミュエル様! ええ、ちょうど最後の一枚が終わったところですわ!」
 ジュリエットは羽根ペンを投げ置くと、ドレスの裾を少しだけ摘んでサミュエルの元へ駆け寄った。サミュエルは当然のように彼女を抱き上げ、その額に優しく口づけをする。

「今日も見事な仕事ぶりだ。家令のシオンが君の事務処理速度を『蒸気機関並みだ』と嫉妬していたよ」
「あの方、まだ私の数値を測ろうとしてるんですもの。放っておいてくださいませ」
 笑い合う二人の背後から、騒がしい足音が響いてきた。

「母上! 父上! 僕たちも行く!」
「ずるい! 私はお父様の前に乗るの!」
「にいさま、どいて。私が一番よ!」
 部屋に飛び込んできたのは、五人の子供たち。

 三男二女。どの子も金色の髪と新緑の瞳を受け継ぎ、そして何より――全員が驚異的な身体能力の持ち主だった。
 三男は既に庭の木を最上階まで登り、長女は池で魚を手掴みにし、末っ子はサミュエルの足元を猛スピードで駆け抜けていく。

「子宝にも恵まれすぎましたわね、サミュエル様」
「ああ、君の生命力が遺伝したんだろう。賑やかで素晴らしいことだ」
 一家はそのまま、お抱えの騎士たちも追いつけないほどの速度で馬を走らせ、思い出の「あの湖」へと向かった。

 夏の日の湖畔。大人たちが木陰で休憩する中、子供たちは一斉に服を脱ぎ捨て……といっても、今は特注の動きやすい水着を着ているが、水面へと飛び込んでいく。
「暑い日には、泳ぐのが一番だわ!」
 ジュリエットもまた、公爵夫人の礼装を脱ぎ捨てると、その下に着込んでいた水遊び用の服で浅瀬に立った。
 その姿は、あの日サミュエルが「死にゆく少女」と見間違えた姿と重なる。けれど、今の彼女は誰よりも生を謳歌し、愛に満ちている。

 サミュエルは傍らで彼女の肩を抱き、静かに囁いた。
「ジュリエット。あの時、君を助けて本当によかった」
「……もう。まだ言いますの? 私はただ、暑かっただけなのに」

「分かっている。だが、あの勘違いがなければ、私は今も灰色の世界で、ただ息をしていただけだろう。……君が私を、光の中に連れ出してくれたんだ」
 ジュリエットは照れ隠しに、サミュエルの顔に思い切り水を跳ね上げた。
「だったら、私とあの子たちと、どっちが早く対岸まで泳げるか勝負ですわ!」

「おっと。……負けないよ、私の女神様」
 水しぶきが上がり、笑い声が湖畔に響き渡る。

 かつて人目を忍んで泳いでいた少女は、今や愛する家族と共に、燦々と降り注ぐ太陽の下で人生を泳ぎ続けている。
 暑がりな伯爵令嬢と、優秀な公爵令息。
 二人の「奇跡」のような恋物語は、これからも波紋のように広がり、幸せな音を立てて続いていくのである。
 
 ハッピーエンド
____________

二人の幸せに、エール📣いいね❤️お気に入り⭐️応援よろしくお願いします🙇‍♀️
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