【完結】悲報!地味系令嬢、学園一のモテ男に「嘘の告白」をされる。

恋せよ恋

文字の大きさ
1 / 6

嘘の告白と嘘の受諾

しおりを挟む
 王立セントクレア学園の中庭。放課後の柔らかな陽光が降り注ぐ中、異様な空気が漂っていた。

 全女子生徒の憧れであり、ダービン侯爵家の次期当主、マーロン・ダービンが、一人の地味な令嬢を呼び出したからだ。
 周囲の植え込みや校舎の窓からは、固唾を呑んで見守る生徒たちの視線。
 その中には、ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべるマーロンの友人、ローガン、ジェイミー、ヘンリーの姿もあった。

「サブリナ・エアハート。……急に呼び出してすまない」
 マーロンが、黄金の髪を風に揺らし、極上の微笑みを向ける。

 対するサブリナは、擦り切れた袖口を隠すように身を縮め、分厚い眼鏡の奥でおどおどと視線を彷徨わせていた。

 マーロンは心の中で、自分を賞賛していた。

(見てろよ。こんな地味で貧乏な女、僕が優しく一言囁けば、一生忘れられないトラウマになるほどの恋に落ちるはずだ)

 彼は、とにかく「退屈」だった。
 成績優秀、家柄も完璧。すべてが手に入る人生に飽き飽きしていた彼は、友人たちとの賭けに応じたのだ。

『学園一地味で、絶対に自分と縁のなさそうな女を落とし、最高に浮かれさせたところで振る』という最低のゲームに。

「君のひたむきさに心打たれたんだ。……サブリナ、僕と付き合ってくれないか?」
 彼はサブリナの手をそっと取り、熱烈な視線を送る。
 完璧な演技。周囲の女子からは悲鳴に近い溜息が漏れた。

 その瞬間、サブリナの脳内では『エアハート商会・緊急役員会議』が開催されていた。

(ダービン侯爵……。総資産は国家予算の数%を占める超一流。さらに彼が継ぐ予定のダービン領は、北部の毛織物と南部の港を結ぶ中継地点……!)

 彼女は、地味な令嬢を演じながら、心の中で狂喜乱舞した。

(今、うちの商会が一番欲しいのは『ダービン領の通行許可証』。もし彼の恋人(仮)になれば、検問所を素通りできる。輸送費は三割カット、利益率は倍増……!)

 サブリナにとって、目の前の美形は「愛すべき人」ではなく、「足のついた金塊」にしか見えていなかった。

 サブリナは、わざとらしく顔を真っ赤にし、声を震わせて答える。
「……っ、はい。私のような、家柄も容姿も冴えない者でよろしければ……。喜んで、お受けいたしますわ」

(チョロすぎる! あとは適当にデートを重ねて、領地の通行証をネコババ……いえ、正規の手順でゲットするだけね!)

「ありがとう。……これからよろしく、サブリナ」
 マーロンは彼女を抱き寄せた。

(よし、成功だ。数ヶ月かけて依存させてから、ゴミのように捨ててやる。楽しみだな、震えて泣く顔が)

 抱き合う二人の顔は、傍から見れば幸せそうな恋人同士。
 しかし、その表情は共に、「最高のカモを捕まえた」という邪悪な笑みに歪んでいたのである。

 この日から、学園公認の「格差カップル」が誕生した。

 だが、マーロンはまだ知らない。

 自分が「落とした」はずの小娘が、夜な夜な男装して商談をまとめ、自分より稼いでいる怪物だということを。

 そしてサブリナもまだ知らない。
 マーロンが、自分を「捨てる」ための計画を練っていることを。
_____________

エール📣いいね❤️お気に入り⭐️応援宜しくお願いします🙇
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

そんなに優しいメイドが恋しいなら、どうぞ彼女の元に行ってください。私は、弟達と幸せに暮らしますので。

木山楽斗
恋愛
アルムナ・メルスードは、レバデイン王国に暮らす公爵令嬢である。 彼女は、王国の第三王子であるスルーガと婚約していた。しかし、彼は自身に仕えているメイドに思いを寄せていた。 スルーガは、ことあるごとにメイドと比較して、アルムナを罵倒してくる。そんな日々に耐えられなくなったアルムナは、彼と婚約破棄することにした。 婚約破棄したアルムナは、義弟達の誰かと婚約することになった。新しい婚約者が見つからなかったため、身内と結ばれることになったのである。 父親の計らいで、選択権はアルムナに与えられた。こうして、アルムナは弟の内誰と婚約するか、悩むことになるのだった。 ※下記の関連作品を読むと、より楽しめると思います。

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

【完結】どうかその想いが実りますように

おもち。
恋愛
婚約者が私ではない別の女性を愛しているのは知っている。お互い恋愛感情はないけど信頼関係は築けていると思っていたのは私の独りよがりだったみたい。 学園では『愛し合う恋人の仲を引き裂くお飾りの婚約者』と陰で言われているのは分かってる。 いつまでも貴方を私に縛り付けていては可哀想だわ、だから私から貴方を解放します。 貴方のその想いが実りますように…… もう私には願う事しかできないから。 ※ざまぁは薄味となっております。(当社比)もしかしたらざまぁですらないかもしれません。汗 お読みいただく際ご注意くださいませ。 ※完結保証。全10話+番外編1話です。 ※番外編2話追加しました。 ※こちらの作品は「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています。

P.S. 推し活に夢中ですので、返信は不要ですわ

汐瀬うに
恋愛
アルカナ学院に通う伯爵令嬢クラリスは、幼い頃から婚約者である第一王子アルベルトと共に過ごしてきた。しかし彼は言葉を尽くさず、想いはすれ違っていく。噂、距離、役割に心を閉ざしながらも、クラリスは自分の居場所を見つけて前へ進む。迎えたプロムの夜、ようやく言葉を選び、追いかけてきたアルベルトが告げたのは――遅すぎる本心だった。 ※こちらの作品はカクヨム・アルファポリス・小説家になろうに並行掲載しています。

冷たい王妃の生活

柴田はつみ
恋愛
大国セイラン王国と公爵領ファルネーゼ家の同盟のため、21歳の令嬢リディアは冷徹と噂される若き国王アレクシスと政略結婚する。 三年間、王妃として宮廷に仕えるも、愛されている実感は一度もなかった。 王の傍らには、いつも美貌の女魔導師ミレーネの姿があり、宮廷中では「王の愛妾」と囁かれていた。 孤独と誤解に耐え切れなくなったリディアは、ついに離縁を願い出る。 「わかった」――王は一言だけ告げ、三年の婚姻生活はあっけなく幕を閉じた。 自由の身となったリディアは、旅先で騎士や魔導師と交流し、少しずつ自分の世界を広げていくが、心の奥底で忘れられないのは初恋の相手であるアレクシス。 やがて王都で再会した二人は、宮廷の陰謀と誤解に再び翻弄される。 嫉妬、すれ違い、噂――三年越しの愛は果たして誓いとなるのか。

【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!

りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。 食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。 だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。 食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。 パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。 そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。 王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。 そんなの自分でしろ!!!!!

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...