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【30】誤解★
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これは利害の一致から始まった偽りの関係。
そのはずだったのに、どうして?
「あっ――待って、ユアン様!」
身体の奥深くに埋められた欲望が脈打ち息が詰まる。
熱い吐息が肌に触れ、強く打ち付けられると自分のもとは思えない甘い声が零れた。
終わりを願ったはずなのに、どうして彼の腕に抱かれているの?
「ディアナ」
熱を孕んだ囁きが、幾度となく呼ばれてきた自分の名前を特別なものだと錯覚させる。
風邪を引いたわけでもないのに身体中が熱かった。
知らない。
こんなこと、わたくしは知らない……
「どうして……」
「どうして?」
何度も何度も問いかけた。
その度にユアンは心を込めて答えてくれた。
けれどやはり自分にはわからないままだ。
身体を重ねていても心は遠い気がした。
「あ、やっ! まっ、て……!」
「どうして待つ必要があるの? ディアナのここ、とても悦んでいるのに」
この行為を中断するつもりはないと明確に告げられる。
その声はどこか嬉しそうだった。彼の声はいつも優しく聞こえるが、赤裸々に語られる行為はちっとも優しくない。
逃げ出したいほど苦しいのに、悦んでいるとユアンは言う。そんなはずはないと否定するが、ひくひくと蜜口が疼くのはユアンから与えられる刺激を待ち望んでいるのだろうか。
「このまま本当に、僕の恋人になってしまいなよ」
「どうして……」
またどうしての繰り返し。
どうしてそんなことを言うのですか?
だってあなたは、わたくしのことなんて嫌いなのでしょう?
幼い頃の記憶に溺れながら、ディアナはユアンの腕に乱され続けた。
やがてくたりと力を失ったディアナに気付き、ユアンは一度動きを止めた。
「平気?」
「あ……は――、い……」
ユアンを安心させるために頷いた。
「なら、もう少し付き合ってもらうよ」
快楽を追い求める様な突き上げは先ほどよりも激しく、ユアンにも終わりが近いことを予感させた。
「あっ、う……あぁぁぁ!」
「はぁ……っ、可愛い」
熱に濡れた甘い吐息が肌に触れる。あとはもう、振り落とされないように縋りつくだけだった。
意図せず締め付ければユアンが息を詰める。
「っ――物足りないの? そんなに締め付けて」
「あ、ち、ちがっ……!」
「可愛い。可愛いよ……可愛くて、可哀想なディアナ――」
「あ……かわい、そ……ぅ?」
何を可哀想と言うのだろう。
「僕なんかに抱かれて可哀想。きみが好きなのは弟なのにね」
戯れにしては性質が悪い。ユアンの言葉は信じられないものだった。
ずっとユアンに誤解されていたのだろうか。婚約を破棄されてからも、心はレナードにあると思われていたのか。
「違います!」
「そうだね。弟は君の大切な親友の婚約者だ。否定するしかないよね」
リゼリカと親友だから、親友の気持ちを優先していると思われている。気持ちを疑われるなど心外だ。リゼリカの親友としても、レナードの元婚約者としても許せることではない。
「ちが、う、の……本当に!」
「それにしては僕との関係を知られて焦っているようだったけど?」
「リゼリカに知られたくなっ――ぁ! レナード様は、友人で!」
「うん、そうだね。きみが弟に愛されることはない。でも安心して、僕が愛してあげるから」
いくら言葉を紡ごうとユアンにはまるで届いていなかった。
「ちがう、っの……っぅ!」
そんな風に言わないでほしい。自分を貶めないでほしい。
けれどディアナの訴えは聞き届けられなかった。いくら否定してもそれを証明する術はないのだ。ユアンの愛の囁きと同じように消えてしまう。
「もういいよ」
訴えを抑え込むように唇を塞がれた。
「ふっ、んんっ!」
張りつめた性器が終わりが近いことを告げている。
疲れ果てたディアナの身体はだらりとシーツに預けられ、好き勝手に揺さぶられていた。身体に埋められた熱は最奥を突いても、さらに奥へと滑りこもうとする。こじ開けられる感覚に、ディアナはぐったりとされるがままになっていた。
あとはもう、ただユアンの熱に溺れていくだけだ。そのたびに手を伸ばせばユアンは答えてくれた。なんてことの無い仕草に愛おしさを感じる。彼もそうであれば良いと思った。
「はっ、あっ、も、おく! だ……めぇ……!」
熱い飛沫が注がれ、ぐりぐりと奥にこすりつけるように塗り込まれる。先端が奥を刺激すると、敏感になった身体は意思とは関係なく跳ねてしまう。
「だ、め、ぇ……」
もう奥には入らない。だから止まってほしいと、かすれた声で訴えた。
熱を放ったばかりの性器は未だ胎内に収められたまま、深く抱き込まれる。
「良い子」
重い頭の隅で誰かが囁く。
疲れて動かせない身体に、瞼が重い。
レナードのことは誤解されたままだ。この関係にも答えが出ていない。けれどユアンが熱を放った瞬間、ディアナは確かに幸せを感じていた。まだ心は遠いけれど、傍にいられることを嬉しいと思えた。
きっとそれが答えなのだと思う。
「疲れたよね? もうお休み」
優しい声だ。ずっと自由で、奔放で、年上なのに世話を焼かなければならない人だと思った。でも今は、優しく自分を寝かしつけようとしてくれている。大人の人だと、そう感じた。
ユアンに抱きしめられながら意識を失う。
「本当に、きみのことなんて好きになりたくなかったよ」
最後に聞こえたのは哀しい一人言だった。
こんな状況だったからこそ、ディアナは気付いてしまった。院長室では拒絶にしか聞き取れなかったはずの言葉が持つ、もう一つの意味に。
好きになりたくないのは、すでに心があったから?
好きになってしまった。心を奪われてしまった。それでも否定したいと願う気持ちが、ユアンにそう言わせたのだろうか。
目が覚めたのなら話をしよう。ユアンと、二人のこれからについて……
そのはずだったのに、どうして?
「あっ――待って、ユアン様!」
身体の奥深くに埋められた欲望が脈打ち息が詰まる。
熱い吐息が肌に触れ、強く打ち付けられると自分のもとは思えない甘い声が零れた。
終わりを願ったはずなのに、どうして彼の腕に抱かれているの?
「ディアナ」
熱を孕んだ囁きが、幾度となく呼ばれてきた自分の名前を特別なものだと錯覚させる。
風邪を引いたわけでもないのに身体中が熱かった。
知らない。
こんなこと、わたくしは知らない……
「どうして……」
「どうして?」
何度も何度も問いかけた。
その度にユアンは心を込めて答えてくれた。
けれどやはり自分にはわからないままだ。
身体を重ねていても心は遠い気がした。
「あ、やっ! まっ、て……!」
「どうして待つ必要があるの? ディアナのここ、とても悦んでいるのに」
この行為を中断するつもりはないと明確に告げられる。
その声はどこか嬉しそうだった。彼の声はいつも優しく聞こえるが、赤裸々に語られる行為はちっとも優しくない。
逃げ出したいほど苦しいのに、悦んでいるとユアンは言う。そんなはずはないと否定するが、ひくひくと蜜口が疼くのはユアンから与えられる刺激を待ち望んでいるのだろうか。
「このまま本当に、僕の恋人になってしまいなよ」
「どうして……」
またどうしての繰り返し。
どうしてそんなことを言うのですか?
だってあなたは、わたくしのことなんて嫌いなのでしょう?
幼い頃の記憶に溺れながら、ディアナはユアンの腕に乱され続けた。
やがてくたりと力を失ったディアナに気付き、ユアンは一度動きを止めた。
「平気?」
「あ……は――、い……」
ユアンを安心させるために頷いた。
「なら、もう少し付き合ってもらうよ」
快楽を追い求める様な突き上げは先ほどよりも激しく、ユアンにも終わりが近いことを予感させた。
「あっ、う……あぁぁぁ!」
「はぁ……っ、可愛い」
熱に濡れた甘い吐息が肌に触れる。あとはもう、振り落とされないように縋りつくだけだった。
意図せず締め付ければユアンが息を詰める。
「っ――物足りないの? そんなに締め付けて」
「あ、ち、ちがっ……!」
「可愛い。可愛いよ……可愛くて、可哀想なディアナ――」
「あ……かわい、そ……ぅ?」
何を可哀想と言うのだろう。
「僕なんかに抱かれて可哀想。きみが好きなのは弟なのにね」
戯れにしては性質が悪い。ユアンの言葉は信じられないものだった。
ずっとユアンに誤解されていたのだろうか。婚約を破棄されてからも、心はレナードにあると思われていたのか。
「違います!」
「そうだね。弟は君の大切な親友の婚約者だ。否定するしかないよね」
リゼリカと親友だから、親友の気持ちを優先していると思われている。気持ちを疑われるなど心外だ。リゼリカの親友としても、レナードの元婚約者としても許せることではない。
「ちが、う、の……本当に!」
「それにしては僕との関係を知られて焦っているようだったけど?」
「リゼリカに知られたくなっ――ぁ! レナード様は、友人で!」
「うん、そうだね。きみが弟に愛されることはない。でも安心して、僕が愛してあげるから」
いくら言葉を紡ごうとユアンにはまるで届いていなかった。
「ちがう、っの……っぅ!」
そんな風に言わないでほしい。自分を貶めないでほしい。
けれどディアナの訴えは聞き届けられなかった。いくら否定してもそれを証明する術はないのだ。ユアンの愛の囁きと同じように消えてしまう。
「もういいよ」
訴えを抑え込むように唇を塞がれた。
「ふっ、んんっ!」
張りつめた性器が終わりが近いことを告げている。
疲れ果てたディアナの身体はだらりとシーツに預けられ、好き勝手に揺さぶられていた。身体に埋められた熱は最奥を突いても、さらに奥へと滑りこもうとする。こじ開けられる感覚に、ディアナはぐったりとされるがままになっていた。
あとはもう、ただユアンの熱に溺れていくだけだ。そのたびに手を伸ばせばユアンは答えてくれた。なんてことの無い仕草に愛おしさを感じる。彼もそうであれば良いと思った。
「はっ、あっ、も、おく! だ……めぇ……!」
熱い飛沫が注がれ、ぐりぐりと奥にこすりつけるように塗り込まれる。先端が奥を刺激すると、敏感になった身体は意思とは関係なく跳ねてしまう。
「だ、め、ぇ……」
もう奥には入らない。だから止まってほしいと、かすれた声で訴えた。
熱を放ったばかりの性器は未だ胎内に収められたまま、深く抱き込まれる。
「良い子」
重い頭の隅で誰かが囁く。
疲れて動かせない身体に、瞼が重い。
レナードのことは誤解されたままだ。この関係にも答えが出ていない。けれどユアンが熱を放った瞬間、ディアナは確かに幸せを感じていた。まだ心は遠いけれど、傍にいられることを嬉しいと思えた。
きっとそれが答えなのだと思う。
「疲れたよね? もうお休み」
優しい声だ。ずっと自由で、奔放で、年上なのに世話を焼かなければならない人だと思った。でも今は、優しく自分を寝かしつけようとしてくれている。大人の人だと、そう感じた。
ユアンに抱きしめられながら意識を失う。
「本当に、きみのことなんて好きになりたくなかったよ」
最後に聞こえたのは哀しい一人言だった。
こんな状況だったからこそ、ディアナは気付いてしまった。院長室では拒絶にしか聞き取れなかったはずの言葉が持つ、もう一つの意味に。
好きになりたくないのは、すでに心があったから?
好きになってしまった。心を奪われてしまった。それでも否定したいと願う気持ちが、ユアンにそう言わせたのだろうか。
目が覚めたのなら話をしよう。ユアンと、二人のこれからについて……
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