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登場人物紹介・番外編など
番外編・ある平和な一日【中編】*
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魔王を倒し、ルナルシオンと結婚してからもダガンは忙しかった。特に最初の半年は怒涛だった。一年以上が過ぎた今、やっと時間を作れるようになってきた。
今日はそんな一日だ。騎士団の調練の指導や演習も、公式行事などの社交関連も、それらにまつわる書類仕事その他も無い休日である。しかも、ルナルシオンも昼からは休める。それまで時間を潰して待つことにした。
「ノーチェ、元気だったか?」
最初は愛馬の様子を見に行った。共に旅をした黒毛の愛馬は、老いてもダガンを慕ってくれる。声をかけながらブラッシングしたり、健康状態を確認した。調子が良さそうなので、離宮のすぐ側にある森に向かう。森の中には、調練場があるのだ。
調練場は、簡素な石造りの施設だ。ルナルシオンや護衛騎士たちも鍛錬に使っている。今日は誰もいなかった。
(巻き込む恐れがなくて助かる)
しばしダガンは、思う存分身体を動かした。
形稽古を一通り済ませて休憩する。まだ昼には間がある。もう少し剣を振るおう。他にすることもない。
と、そこでダガンは唐突に気づいた。
(することならある。自領について学ぶことだ)
正確には、ルナルシオンが受領し管理している領地だ。いずれ、夫であるダガンにも運営に関わって欲しいと言われている。ダガンはその領地についても、領地運営についても知識がない。平民から貴族に成り上がったとはいえ、領地は持たなかったせいだ。
(これは不味いな)
ダガンの仕事は別にあるので、その辺りはおいおい学べばいいと言われている。が、いずれ学ぶなら早ければ早いほどいい。せめてルナルシオンの足を引っ張らない程度にはなりたい。
そうと決まれば早かった。井戸で手早く汗を流し、調練場を後にして離宮に戻る。
(資料は書庫にいけばあるか)
月花離宮の書庫は、本来ならばルナルシオンか書庫の管理官の許可がなければ入れない。ダガンは許可なしで入れる。特別である。優越感を感じ、そんな自分に苦笑いしながら書庫に向かった。足取りは軽い。五十路過ぎの中年親父が浮かれてみっともないという意識はまだあるが、同時に『幸せだから仕方ない』と、開き直ってもいた。
『やっと幸せに慣れてきたね』とは、愛しい夫の評である。閨の中でもそれ以外でも、ルナルシオンはダガンを慈しみ、幸福と安寧を注ぐ。ダガンは、とっくの昔に溺れて中毒になっている。
(もう、誰かを愛する事を諦めていた頃には戻れないだろう)
自分の寿命が人間より長いかもしれない恐怖はあるが、喪った後の覚悟はしている。以前、白状したらルナルシオンに怒られた。
◆◆◆◆◆
「ダガンの馬鹿!後ろ向き過ぎる!そこは私に長生きしろと言うところだよ!」
「す、すまん。悪かった」
寝室のベッドの上、ダガンはルナルシオンに涙目で怒られた。狼狽えて謝ることしか出来ない。そんなダガンを、ルナルシオンはじっとりした目で見つめた。
「君を独りになんてしないからね……今夜は、私が君を気持ちよくしてあげる。不安になる間もないくらい」
ルナルシオンは夜着をゆっくり見せつけながら脱ぎ、ダガンを押し倒してまたがった。
「る、ルナルシオン?なにを……」
「ふふ。じっとしてて。……ああ、もう固くなりかけてる」
「うっ!る、ルナルシオン!」
夜着の上から股間を撫でられ、腰が浮く。ルナルシオンは、己の下半身を擦り付けながら手を動かす。
白く美しい手がダガンの夜着をはぎ、形よく柔らかな唇が太い首に吸い付く。ちゅっちゅと、可愛い音が立つ。ルナルシオンは唇と舌で、ダガンの赤黒く逞しい身体を軽く吸ったり、甘噛みしたり、舐めて愛撫していった。
「ダガン、気持ちいいんだね。もうこんな……」
ルナルシオンはすっかり勃ち上がった剛直に息をかけた。剛直がビクビクと揺れ、先走りが滲む。
「私ももう……待てないよ。ダガン」
濡れた剛直を握り、ルナルシオンは己の肉壁に誘った。ちゅこっと、肛門に亀頭が当たる。ルナルシオンは恍惚とした顔で、腰を下ろしていった。
それからはもう、めくるめく一夜だった。
「あんっ!ダガン、愛してる……!」
「俺も……うぅっ!また、でるっ……!」
「だして!わたしのなか……!ああぁっ!」
ダガンは騎乗位で搾り取られ、ドロドロに甘やかされたのだった。
◆◆◆◆◆
(駄目だ。まだルナルシオンは休みじゃ無い。これ以上思い出すな)
甘い記憶を浮かべている内に書庫に着いた。見張り兵と軽い挨拶を交わし、魔術ランプを受け取って中に入る。中は真っ暗で、幾つもの本棚がぎっしり詰まっている。入り口脇にある地図で場所を確認して歩く。領地関連の本が納められた棚は奥まった場所にあった。
(思ったより多いな……)
どれを選ぶか。ざっと見ただけでも駐留騎士団の名簿、事件事故の記録、地域産業の資料、歴史や伝承、地域別の徴税記録、などなど多岐に渡る。とりあえず、現地に駐留している騎士団については既に知っているので、地域産業関連の本を数冊選んだ。夜会や茶会で王侯貴族と話をする機会も増えた。夫の領地の特産品も知らないのは不味いだろう。
今でこそダガンは、周囲に受け入れられている。
「いくら勇者でも半魔はちょっと……と、思ってたけど、あの引っ込み思案のルナくんがあんなに幸せそうだからいいわぁ。貴方って話してみると紳士だし。誤解されやすいのね」とか「はあはあ……ゴツくて赤黒い肌の厳つい中年男と均整のとれた白い肌の高貴な美青年……はあはあ……原稿しよ」
などと好意的?に。しかし、半魔への差別が完全になくなったわけではない。いつ足元を掬われるかわかったものではない。掬われる前に、スカイレッドかテオドラが相手を様々な意味で沈めるだろうが、闇に葬られる者は少ない方がいい。
ともかく、自発的に学ぶことは大事だ。歳を取るとつくづく感じる。
(そうだ。どうせならルナルシオンの仕事ぶりをながめながら読むか)
こちらから話しかけなければ邪魔にはならないだろう。ダガンは早速、執務室に向かった。
今日はそんな一日だ。騎士団の調練の指導や演習も、公式行事などの社交関連も、それらにまつわる書類仕事その他も無い休日である。しかも、ルナルシオンも昼からは休める。それまで時間を潰して待つことにした。
「ノーチェ、元気だったか?」
最初は愛馬の様子を見に行った。共に旅をした黒毛の愛馬は、老いてもダガンを慕ってくれる。声をかけながらブラッシングしたり、健康状態を確認した。調子が良さそうなので、離宮のすぐ側にある森に向かう。森の中には、調練場があるのだ。
調練場は、簡素な石造りの施設だ。ルナルシオンや護衛騎士たちも鍛錬に使っている。今日は誰もいなかった。
(巻き込む恐れがなくて助かる)
しばしダガンは、思う存分身体を動かした。
形稽古を一通り済ませて休憩する。まだ昼には間がある。もう少し剣を振るおう。他にすることもない。
と、そこでダガンは唐突に気づいた。
(することならある。自領について学ぶことだ)
正確には、ルナルシオンが受領し管理している領地だ。いずれ、夫であるダガンにも運営に関わって欲しいと言われている。ダガンはその領地についても、領地運営についても知識がない。平民から貴族に成り上がったとはいえ、領地は持たなかったせいだ。
(これは不味いな)
ダガンの仕事は別にあるので、その辺りはおいおい学べばいいと言われている。が、いずれ学ぶなら早ければ早いほどいい。せめてルナルシオンの足を引っ張らない程度にはなりたい。
そうと決まれば早かった。井戸で手早く汗を流し、調練場を後にして離宮に戻る。
(資料は書庫にいけばあるか)
月花離宮の書庫は、本来ならばルナルシオンか書庫の管理官の許可がなければ入れない。ダガンは許可なしで入れる。特別である。優越感を感じ、そんな自分に苦笑いしながら書庫に向かった。足取りは軽い。五十路過ぎの中年親父が浮かれてみっともないという意識はまだあるが、同時に『幸せだから仕方ない』と、開き直ってもいた。
『やっと幸せに慣れてきたね』とは、愛しい夫の評である。閨の中でもそれ以外でも、ルナルシオンはダガンを慈しみ、幸福と安寧を注ぐ。ダガンは、とっくの昔に溺れて中毒になっている。
(もう、誰かを愛する事を諦めていた頃には戻れないだろう)
自分の寿命が人間より長いかもしれない恐怖はあるが、喪った後の覚悟はしている。以前、白状したらルナルシオンに怒られた。
◆◆◆◆◆
「ダガンの馬鹿!後ろ向き過ぎる!そこは私に長生きしろと言うところだよ!」
「す、すまん。悪かった」
寝室のベッドの上、ダガンはルナルシオンに涙目で怒られた。狼狽えて謝ることしか出来ない。そんなダガンを、ルナルシオンはじっとりした目で見つめた。
「君を独りになんてしないからね……今夜は、私が君を気持ちよくしてあげる。不安になる間もないくらい」
ルナルシオンは夜着をゆっくり見せつけながら脱ぎ、ダガンを押し倒してまたがった。
「る、ルナルシオン?なにを……」
「ふふ。じっとしてて。……ああ、もう固くなりかけてる」
「うっ!る、ルナルシオン!」
夜着の上から股間を撫でられ、腰が浮く。ルナルシオンは、己の下半身を擦り付けながら手を動かす。
白く美しい手がダガンの夜着をはぎ、形よく柔らかな唇が太い首に吸い付く。ちゅっちゅと、可愛い音が立つ。ルナルシオンは唇と舌で、ダガンの赤黒く逞しい身体を軽く吸ったり、甘噛みしたり、舐めて愛撫していった。
「ダガン、気持ちいいんだね。もうこんな……」
ルナルシオンはすっかり勃ち上がった剛直に息をかけた。剛直がビクビクと揺れ、先走りが滲む。
「私ももう……待てないよ。ダガン」
濡れた剛直を握り、ルナルシオンは己の肉壁に誘った。ちゅこっと、肛門に亀頭が当たる。ルナルシオンは恍惚とした顔で、腰を下ろしていった。
それからはもう、めくるめく一夜だった。
「あんっ!ダガン、愛してる……!」
「俺も……うぅっ!また、でるっ……!」
「だして!わたしのなか……!ああぁっ!」
ダガンは騎乗位で搾り取られ、ドロドロに甘やかされたのだった。
◆◆◆◆◆
(駄目だ。まだルナルシオンは休みじゃ無い。これ以上思い出すな)
甘い記憶を浮かべている内に書庫に着いた。見張り兵と軽い挨拶を交わし、魔術ランプを受け取って中に入る。中は真っ暗で、幾つもの本棚がぎっしり詰まっている。入り口脇にある地図で場所を確認して歩く。領地関連の本が納められた棚は奥まった場所にあった。
(思ったより多いな……)
どれを選ぶか。ざっと見ただけでも駐留騎士団の名簿、事件事故の記録、地域産業の資料、歴史や伝承、地域別の徴税記録、などなど多岐に渡る。とりあえず、現地に駐留している騎士団については既に知っているので、地域産業関連の本を数冊選んだ。夜会や茶会で王侯貴族と話をする機会も増えた。夫の領地の特産品も知らないのは不味いだろう。
今でこそダガンは、周囲に受け入れられている。
「いくら勇者でも半魔はちょっと……と、思ってたけど、あの引っ込み思案のルナくんがあんなに幸せそうだからいいわぁ。貴方って話してみると紳士だし。誤解されやすいのね」とか「はあはあ……ゴツくて赤黒い肌の厳つい中年男と均整のとれた白い肌の高貴な美青年……はあはあ……原稿しよ」
などと好意的?に。しかし、半魔への差別が完全になくなったわけではない。いつ足元を掬われるかわかったものではない。掬われる前に、スカイレッドかテオドラが相手を様々な意味で沈めるだろうが、闇に葬られる者は少ない方がいい。
ともかく、自発的に学ぶことは大事だ。歳を取るとつくづく感じる。
(そうだ。どうせならルナルシオンの仕事ぶりをながめながら読むか)
こちらから話しかけなければ邪魔にはならないだろう。ダガンは早速、執務室に向かった。
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