【五章完結】サラリーマン、オークの花嫁になる

花房いちご

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第五章 元騎士、オークの花嫁になる

元騎士、オークの花嫁になる【3】

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 手紙が届いた数日後の放課後。俺は浮き浮きしていた。オークの全身を写せる姿見の前で、最終チェックをする。

「さて、資料と質問事項はまとめてあるし、身だしなみもバッチリだな」

 普段はもっと楽な格好だが、俺もオークなので人間より筋肉が発達していて背が高い。
 威圧感を与えないよう、長袖の生成色のシャツと茶色のジャケットを羽織り、クラバットで品良くまとめてみた。

「話す時は、牙をむき出しにしたり胸を張りすぎないようにしないとな」

 なにせ、今日はとても大切な日だ。赤花国の教員希望者と、通信面談するのだから。
 赤花国から緑鉄国辺境までは移動に時間がかかる。通信用魔道具で面談して、労働条件を伝えたり、本人の希望と人柄を見たりするのだ。

「教員希望者はどんな人だろう。まだ名前すらわからないんだよな。俺を見て怖がらない人だといいんだが……」

 オークを怖がる人間は、まだまだ多い。特に赤花国の人間は、15年前まで緑鉄国と戦争していただけあり、今だにオークに対し嫌悪と偏見を持つ者が多いという。
 校長と同僚からは、俺に怯えて嫌悪するようなら断っていいと言われているが、出来れば同僚として仲良くなりたい。
 人間担当教師2人からは、「ガルグ先生はいいオークだから大丈夫ですよ!」「そうよお。面倒見がいいし、真面目だもの。うふふ。恋の花が咲くかもしれないわねえ」なんて言われて激励されたし。

「恋の花か。確かに、【一人前の教師になるまで、恋愛も結婚もしない】と決めていたが、そろそろいいかもな」

 俺は15歳で成人してすぐ軍人になった。
 本当は教師になりたかったが、両親を亡くしたばかりで金が無かった。
 当時は赤花国と戦争中だったので、軍人の給料がよかった。金を貯めるために軍に入ったのだ。
 ただし、軍人はいつ死ぬかわからない職業だ。大切な人を残すかもしれない。そう思うと、恋愛も結婚も考えられなかった。

 赤花国との戦争が終わって一年後。目標額まで金を貯めた俺は、軍を退職した。
 そして故郷に帰り、憧れの職業である教師になったのだ。
 教師になって14年になる。俺は35歳になった。オーク的にはまだまだ若造の年齢だが、独り身なのは寂しい。
 俺も健康なオークだ。恋愛に興味はある。健全なデートって奴もしてみたい。

 相手はオークか人間がいいな。性別は何でもいいが、上品で憂いを帯びた色気のある人が好みだ。出来れば花婿ではなく花嫁になって欲しい。

「花嫁になってくれたら、大事にして幸せにする」

 俺は童貞処女だけど、オークは本能的に相手を気持ち良くすることができる。ドロドロに愛撫して、それから……。

「馬鹿!仕事中に妄想するな!」

 俺は自分の頬をバシン!と叩いた。
 独り身なせいか、俺はスケベな妄想に耽りがちだ。自覚してるがやめられない。妄想し出すと止まらないので、こうやって自分に喝を入れている。

「妄想してる場合じゃない。そろそろ指定された時間だ」

 気を取り直して朗らかな笑顔を作り、手紙に同封してあった受信用魔道具を姿見に装着する。
 さっきから目の前にある姿見は、通信用魔道具だ。遠くの場所と映像と音声で繋がり、鏡面に写すことができる。受信用魔道具をつけることで、指定の通信用魔道具と繋がれるのだ。
 パッと姿見が光り、鏡面にここではない景色が映る。

 ん?なんかおかしくないか?

 ここで俺は違和感を感じた。というか、違和感しか無かった。
 鏡面には、なんかギラギラした金のかかってそうな部屋と、その中央にある椅子に座る人間の女性、その脇に控えている人間の男性たちが写っている。

 女性は、年齢は三十代後半くらいだろう。艶やかな金髪で、露出の多い派手なドレスを着て、意地悪そうな笑みを浮かべている。
 というか、露骨にこちらを見下していないか?
 まさかこの女性が教員希望者なのか?うちの学校に合いそうもない!
 いやいや、見た目と偏見で判断するな。そう思い、俺は挨拶をした。

「この度はお忙しい中、お時間を頂きありがとうございます。
 お初にお目にかかります。私は、本学の教員採用を担当しております。オーク担当教師のガルグと申しま……」

『あら。オークも知恵をつけてきたとは聞いていたけれど、それなりに口がきけるのね。演技も上手いわ』

 クスクスと笑う女性に、こめかみがヒクついた。なんだコイツ?

『せっかくだけど、お芝居はもう結構よ。
 性奴隷をお求めなんですってね?丁度、夫を捨てるところですの。お安くしておきますわよ』

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