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第五章 元騎士、オークの花嫁になる
元騎士、オークの花嫁になる【4】
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予想外すぎる言葉に、俺は笑顔を保てなかった。
「……なんと仰いましたか?お芝居?夫を性奴隷として売る?」
『ええ。表向きは奴隷貿易が禁じられているから、学校の教員を募集するという形で取引を持ちかけたのでしょう?良く考えられた符牒ね。
賤しいオークとはいえ、当家……この私の取引相手として申し分なくってよ』
そう言って、女性は自慢話をはじめた。どうやら、この女性……フリージア・ド・ナーシサスは、ナーシサス男爵家当主らしい。
爵位は男爵だが、元は赤花国でも有数の大貴族ダフォデル侯爵家の令嬢である。今も生家の庇護のもと、領地とその周辺で絶大な権力をもっている。もちろん財産も豊かだ。
また、周りの男性たちは夫ではなくお気に入りの性奴隷だという。
そこまで説明したナーシサス男爵は、いやらしく口角を上げた。
『奴隷売買は当家の大切な産業なの。特に性奴隷は顧客満足度が高くってよ。まあ、今回の商品……一応はまだ夫ね。夫はあまり調教出来てないわ。
でも、所有している奴隷の中では一番魔法が使えるし、見目も良い。なにより身体が丈夫で主人に従順よ。性奴隷に魔法をどう使わせるか知らないけど、どんな行為も出来ると保証するわ』
「……さようでございますか……」
『ええ。気に入ったら、他の商品も購入して欲しいわ。これを機に、緑鉄国の奴隷市場に進出したいの』
俺はナーシサス男爵の言葉を聞き流しつつ、混乱の極みにあった。
というか、さっきからこの女性は何を言ってるんだ?頭おかしいのか?と、思っていた。
俺が赤花国に募集をかけたのは【教師の募集。緑鉄国の学校にて、人間の子供たちに読み書き算術等を教えられる人材を求む。また、魔法の達人ならなお良し】だ。
なんで性奴隷募集だと思ったんだ?そういう符牒だと判断したようだが、かなり無理がある。
というか、緑鉄国は何千年も前から、赤花国は十年ほど前から、奴隷も人身売買も禁止だ。犯罪だ。特に緑鉄国では厳しく取り締まられている。奴隷市場なんて存在しない。
確かに人攫いするクズ……人狩りは稀にいる。数年前、ゴブリンを利用した大規模な人攫い事件もあった。だが、徹底的に叩き潰されている。
そもそも自分の夫を性奴隷として売るとか、ナーシサス男爵の倫理観はどうなってるんだ?
赤花国の人間怖い。最近まで奴隷が合法だったし。……いや、国とその過去と種族は関係ないな。一まとめにしてはいけない。
あのチェリー先生も赤花国の貴族家出身だし、ナーシサス男爵が異常で悪党なだけだろう。さっさと誤解を解いて通信を切ろう。
……いや、駄目だ。
俺は嫌悪感から牙をむき出しつつ、笑顔を作り直した。
「お話は理解しました。お申し出の商品についてですが、お幾らでの販売を想定されているのでしょうか?」
どんな事情があるか知らないが、ナーシサス男爵の夫は性奴隷として売られかかっている。おまけに、いま鏡面に映っている男性たちも性奴隷にされた被害者なのだろう。
彼らを助けたい。それに話が事実なら、ナーシサス男爵は緑鉄国でも奴隷売買するつもりだ。放置すれば国際問題になる。
緑鉄国と赤花国が再び関係悪化するのは避けたい。
俺は【オークの奴隷商人】のフリをして情報を聞き出し、数日後にまた面談することを約束して通信を切った。
◆◆◆◆◆
「校長!大変なことになりました!」
悪夢のような面談を終えてすぐ、俺は校長に報告し、衛兵隊に通報した。
念のため録画していたのが功を奏した。ナーシサス男爵の勘違いと傲慢っぷりに、衛兵隊長たちの目が死んだが。
「この貴族、妄想力強すぎんだろ」
「まだ映像を観ないといけないんですか?気持ち悪いんですけど」
「すいません。耐えて下さい」
「うおおおん!どうしてこうなったあああ!」
「うるさ……校長、お気を確かに」
可哀想な校長は、期待の新人教師が存在しないことを知って号泣した。気持ちはわかるがうるさい。後でやってほしい。
ともかく、事件は速やかに緑鉄国赤花国両国に共有され、情報の裏どりが行われた。
結果、両国の衛兵隊が連携してナーシサス男爵とその一味を捕らえる事となった。
衛兵隊長が俺に頭を下げ、計画の説明をする。
「色々とおかしな奴だが、赤花国の貴族家当主であり、侯爵家の後ろ盾があるのは事実らしい。罪を軽くしないためにも、我が緑鉄国で現行犯逮捕するよう指示された。ガルグ先生、申し訳ないが協力して頂けないだろうか」
「わかりました。お引き受けします」
俺は引き続き奴隷商人のフリをして、ナーシサス男爵を緑鉄国に誘き出す役目を担った。逮捕は緑鉄国の衛兵隊がする。
その間に赤花国の衛兵隊が、ナーシサス男爵家を制圧して奴隷たちを保護する計画だ。
2回目の通信面談で俺は仕掛けた。
「……なんと仰いましたか?お芝居?夫を性奴隷として売る?」
『ええ。表向きは奴隷貿易が禁じられているから、学校の教員を募集するという形で取引を持ちかけたのでしょう?良く考えられた符牒ね。
賤しいオークとはいえ、当家……この私の取引相手として申し分なくってよ』
そう言って、女性は自慢話をはじめた。どうやら、この女性……フリージア・ド・ナーシサスは、ナーシサス男爵家当主らしい。
爵位は男爵だが、元は赤花国でも有数の大貴族ダフォデル侯爵家の令嬢である。今も生家の庇護のもと、領地とその周辺で絶大な権力をもっている。もちろん財産も豊かだ。
また、周りの男性たちは夫ではなくお気に入りの性奴隷だという。
そこまで説明したナーシサス男爵は、いやらしく口角を上げた。
『奴隷売買は当家の大切な産業なの。特に性奴隷は顧客満足度が高くってよ。まあ、今回の商品……一応はまだ夫ね。夫はあまり調教出来てないわ。
でも、所有している奴隷の中では一番魔法が使えるし、見目も良い。なにより身体が丈夫で主人に従順よ。性奴隷に魔法をどう使わせるか知らないけど、どんな行為も出来ると保証するわ』
「……さようでございますか……」
『ええ。気に入ったら、他の商品も購入して欲しいわ。これを機に、緑鉄国の奴隷市場に進出したいの』
俺はナーシサス男爵の言葉を聞き流しつつ、混乱の極みにあった。
というか、さっきからこの女性は何を言ってるんだ?頭おかしいのか?と、思っていた。
俺が赤花国に募集をかけたのは【教師の募集。緑鉄国の学校にて、人間の子供たちに読み書き算術等を教えられる人材を求む。また、魔法の達人ならなお良し】だ。
なんで性奴隷募集だと思ったんだ?そういう符牒だと判断したようだが、かなり無理がある。
というか、緑鉄国は何千年も前から、赤花国は十年ほど前から、奴隷も人身売買も禁止だ。犯罪だ。特に緑鉄国では厳しく取り締まられている。奴隷市場なんて存在しない。
確かに人攫いするクズ……人狩りは稀にいる。数年前、ゴブリンを利用した大規模な人攫い事件もあった。だが、徹底的に叩き潰されている。
そもそも自分の夫を性奴隷として売るとか、ナーシサス男爵の倫理観はどうなってるんだ?
赤花国の人間怖い。最近まで奴隷が合法だったし。……いや、国とその過去と種族は関係ないな。一まとめにしてはいけない。
あのチェリー先生も赤花国の貴族家出身だし、ナーシサス男爵が異常で悪党なだけだろう。さっさと誤解を解いて通信を切ろう。
……いや、駄目だ。
俺は嫌悪感から牙をむき出しつつ、笑顔を作り直した。
「お話は理解しました。お申し出の商品についてですが、お幾らでの販売を想定されているのでしょうか?」
どんな事情があるか知らないが、ナーシサス男爵の夫は性奴隷として売られかかっている。おまけに、いま鏡面に映っている男性たちも性奴隷にされた被害者なのだろう。
彼らを助けたい。それに話が事実なら、ナーシサス男爵は緑鉄国でも奴隷売買するつもりだ。放置すれば国際問題になる。
緑鉄国と赤花国が再び関係悪化するのは避けたい。
俺は【オークの奴隷商人】のフリをして情報を聞き出し、数日後にまた面談することを約束して通信を切った。
◆◆◆◆◆
「校長!大変なことになりました!」
悪夢のような面談を終えてすぐ、俺は校長に報告し、衛兵隊に通報した。
念のため録画していたのが功を奏した。ナーシサス男爵の勘違いと傲慢っぷりに、衛兵隊長たちの目が死んだが。
「この貴族、妄想力強すぎんだろ」
「まだ映像を観ないといけないんですか?気持ち悪いんですけど」
「すいません。耐えて下さい」
「うおおおん!どうしてこうなったあああ!」
「うるさ……校長、お気を確かに」
可哀想な校長は、期待の新人教師が存在しないことを知って号泣した。気持ちはわかるがうるさい。後でやってほしい。
ともかく、事件は速やかに緑鉄国赤花国両国に共有され、情報の裏どりが行われた。
結果、両国の衛兵隊が連携してナーシサス男爵とその一味を捕らえる事となった。
衛兵隊長が俺に頭を下げ、計画の説明をする。
「色々とおかしな奴だが、赤花国の貴族家当主であり、侯爵家の後ろ盾があるのは事実らしい。罪を軽くしないためにも、我が緑鉄国で現行犯逮捕するよう指示された。ガルグ先生、申し訳ないが協力して頂けないだろうか」
「わかりました。お引き受けします」
俺は引き続き奴隷商人のフリをして、ナーシサス男爵を緑鉄国に誘き出す役目を担った。逮捕は緑鉄国の衛兵隊がする。
その間に赤花国の衛兵隊が、ナーシサス男爵家を制圧して奴隷たちを保護する計画だ。
2回目の通信面談で俺は仕掛けた。
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