【五章完結】サラリーマン、オークの花嫁になる

花房いちご

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第五章 元騎士、オークの花嫁になる

元騎士、オークの花嫁になる【6】*

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 俺は【スケベすぎる】と言いかけて口を閉ざした。
 だが、頭の中はそれでいっぱいだ。
 馬車の中にある檻の中、鉄格子ごしに俺を見上げる人間の男性を見たせいだ。

「貴方は……オーク?」

 かすれた声に正気に返る。俺は怯えさせないよう、できるだけ穏やかな声を出した。

「ああ。俺はオークのガルグという。あんたを助けに来た」

「助けに……」

 男性は首をかしげて、ぼんやりとこちらを見る。
 物憂い眼差しだ。スケベすぎる。
 この男性が、ナーシサス男爵の元夫で被害者に違いない。スケベすぎる。
 年齢は40歳くらいか?肌は青ざめていて不健康そうだし痩せている。おまけにボロ切れみたいな服を着ていた。だが、顔立ちの端正さと色気が際立っている。スケベすぎる。
 薄暗がりの中でもほんのり光って見える紫色の瞳、こけた頬を隠すように長い金髪が色っぽい。スケベすぎる。
 人間にしては体格がいいし、筋肉もしっかりついているようだ。おまけに、儚げな表情も品がある話し方も俺の好みど真ん中だ。スケベすぎる。
 そそられる。優しく抱きたい。つまりスケベすぎる。

 俺は怒涛の勢いで妄想した。脳内で何回スケベすぎると言ったかわからない。

 ……その痩せた身体を抱きしめて、身体の形と性感帯を覚えるまで撫でまわしたい。怖がらせないよう優しく話しかけて、ゆっくり先に進んでいく。
 首筋と鎖骨を舐め回して肌と汗を味わい、胸を揉んで乳首を吸って舌で虐めたい。恐らく薄い尻も揉んで、割れ目の先にある窄まりに快楽を教え込みたい。
 たっぷり舌と指で可愛がって、受け入れられるまで肉壺を柔らかくする。そして、俺の反り返ったちんぽで分け入って貫く。
 最初は優しく突いて、徐々に激しく抽送して……奥に種付けしたい……。

 妄想が止まらない。欲情を抑える魔道具を着けているのに、ちんぽが痛いくらい張り詰めていく。
 後に振り返る。
 この時、俺は【性欲大爆発】を起こしかけていただろう。俺は後もう少しで、完全に発情して汗や呼吸から媚薬成分を振り撒き、男性を襲っていた。
 だが。

「あの……どうされましたか?」

 かすれた声に話しかけられた瞬間、正気になった。

 被害者に対して何考えてんだ!俺の馬鹿!最低だ!

 気合いで欲情を抑え込み、やるべきことをした。

「あ、ああ。なんでもない。少し考えてただけだ。檻をぶち壊すから、少し離れててくれ」

「はい。わかりました」

 素直だ。可愛い。
 俺はキュンとしつつ、引き続き理性でちんぽを鎮めた。そして、鉄格子を引っ張って壊した。

「すごい……オークは怪力とはきいてましたが、想像以上です」

 男性は目を丸くして驚いているが、怯えてはいない様子だ。ホッとした。

 しかしまさか、学校の教師を募集したら性奴隷を売り込まれるなんて想像もしなかった。

 あの貴族、なんでこんな儚くて美しい夫を性奴隷として売ろうとしたんだ?いや、はじめから色々とおかしい奴だと思ったが。

 などと当時を振り返りつつ、男性に手を差し出して檻の外へ誘導する。

「ゆっくりでいい。俺が支えるから歩いてくれ」

「え?あ、はい」

 重なった手にドキドキした。
 人間の手は、オークに比べれば小さくて柔らかくて繊細だ。
 しかし、感触から剣を扱っていた手だとわかる。剣だこがあるし、人間にしては硬くてがっしりしている。体格から言って、相当鍛えているのだろう。
 魔法も使えるそうだし、騎士か冒険者だったんじゃないかな?凄いな。カッコいい。
 このカッコいい手で俺のちんぽを撫でてくれたらどんな気分に……だから止めろ!未遂とはいえ奴隷売買被害者相手にナニ考えてるんだ!
 それに、まずは健全なデートで手を繋ぎたい!美味いものを食わせてやりたい!いやいや!それも違う!
 というか、なんかいい匂いもする。ちんぽがむずむず……俺の馬鹿!やめろ!被害者男性を思い遣らずに妄想ばかりして!恥知らず!

 俺は脳内で騒ぎながら外に出た。
 制圧が終わった様子にホッとする。そして、男性を保護してもらおうとしたのだが。

「っ!」

 風にさらりと金髪が揺れ、周囲の灯りを弾いて輝く。アメジストのような紫の瞳が俺を見つめて微笑む。
 頬がこけているせいか、どこか壊れたような笑みだった。

 この男が欲しい。花嫁にしたい。

 俺は危うい色気にくらりと来て、手を伸ばし……。

「状況はよくわかりませんが……貴方様が、私の新しいご主人様ですね。私は賤しい性奴隷のヒースと申します。ご挨拶が遅れて失礼いたしま……」

「だから違う!緑鉄国は人身売買も奴隷も禁止だ!お前ら赤花国の人間は!俺たちオークをなんだと思ってるんだ!」

 とんでもない発言に我に返って叫んだ。人間の男性……もといヒースは、目を丸くして固まる。

「……は?え?」

「俺は人間担当教師を募集しただけだ!ちゃんと正規の仲介業者を通して求人募集したんだぞ!なのに性奴隷を売り込むとかどういうことだよ!
 というかナーシサス男爵は、自分の夫を性奴隷と名乗らせて、自分のことをご主人様と呼ばせてたのか!?」

「え、あ、はい」

「なんだそれ!頭おかしいんじゃねえか!いや、おかしいよな!そもそも性奴隷として自分の夫を売るとか!正気の沙汰じゃねえ!」

「え?は、はい。おかしい……ですね?」

「だよなー!おかしいよなー!」

 衛兵たちが止めるまで、俺はヒースにまくしたてたのだった。


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