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第五章 元騎士、オークの花嫁になる
元騎士、オークの花嫁になる【8】*
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「ヒースさん。赤花国に帰るのを拒否したってのは、本当か?」
「……はい」
ここは国営病院の個室だ。窓際に置かれたベッドの上で、ヒースは困ったように笑う。
そんな笑顔も愛らしいなと考えて、脳内で自分をぶん殴る。
あの取引の夜から7日が経過した。
危うい笑みを浮かべていたヒースは、もういない。
肌を隠す病衣姿は儚く、まだまだ痩せてるし頬がこけたままだ。だが、表情に生気が戻っている。適切な治療と食事のお陰だろう。
そして、俺と打ち解けて話すようになっていた。
嬉しい。毎日見舞いに来ているからだろうか。これからも毎日来よう。
そんな風に考えていると、ヒースは胸の内を語りだした。
「赤花国には帰りたくないです。あの国には嫌な記憶が多過ぎる。なにより家族に会いたくない。
このまま緑鉄国で……出来れば、ガルグさんの側で暮らしたいです」
「……っ!」
胸がギュンとし、思わず手で押さえた。トキメキを治めつつ、冷静になれと己に言い聞かせる。
ヒースに頼ってもらって嬉しいし、故郷に帰りたくない気持ちも理解できる。今すぐ同居したいくらいだ。
「お、俺は構わないが……。ヒースさんは、本当にそれでいいのか?」
緑鉄国は赤花国とは全く違う国だ。しかも、ヒースは望んでこの国に来たわけではない。後になって後悔したり、苦しむんじゃないだろうか。
色々考えた上での発言だったが、ヒースは拒絶されたと思ったのか、顔色を変えて身を乗り出した。
「いいんです!私はガルグさんの側にいたい!助けて頂いたご恩を返したい!雑用でもなんでもします!お側に居させてください!」
涙を浮かべた必死な顔に、また心臓を撃ち抜かれる。なんだこの健気で愛しい生き物は!
こけた頬を撫でて抱きしめたい!
もう大丈夫だ!一生一緒に暮らそうぜ!というか結婚してくれ!って言いたい!
……そしてヒースは求婚に応える。俺は恥じらうヒースに口付けし、禁欲的で儚げな病衣をはいでいく。
薬の香りがする清潔な空間に、欲に濡れた息づかいが響く。
俺の無骨な緑の手が、白い肌に触れる。痛みや不快感を与えぬよう優しく快楽を引き出す。
ヒースはどこで感じるだろうか?滑らかな首筋を噛んで、喉仏の形を確かめたい。鎖骨や胸骨をたどって、胸を揉んで腹筋をなぞる。
甘い声が上がる。手が俺の腕や背中を引っ掻く。
酷い環境のせいで性欲が下がっているかもしれないが、オークは本能的に快楽を引き出すのが上手い。俺の唾液や呼吸に含まれる媚薬成分も、いい仕事をするだろう。
下生えに隠された竿が蜜をたらして、とうとう自ら脚を開く。俺は素直な腿を撫でて褒めて、きっとオークの俺より小ぶりで美しい幹を撫でて、鈴口からこぼれる蜜を味わう。
精液が空っぽになるまでしゃぶって、脱力した身体の奥に手を伸ばし……。
俺の馬鹿野郎!妄想を止めろ!
俺は脳内で自分を殴った。
多分、ヒースは求婚しても嫌がらないし、妄想したようなことをしても拒絶しない。それはヒースが俺を恩人だと思っていて、俺以外に頼れる人が居なくて、全てを失って弱っている状態だからだ。
そんな状態だとわかっているのに、付け込みたくない。ヒースに対して失礼だ。
そんな風に考えていた。
だが。
「なんでもします。こんな中年の見苦しい身体でよければ、性欲処理に使っ……」
「自分の身体を大事にしろ馬鹿!本気で襲うぞ!」
ヒースの発言にブチ切れそうになる。というかキレた。
なんだよ見苦しいって!性欲処理だと?ふざけるな!
「え?でもこんな身体……」
こんな身体!?さては、ナーシサス男爵と弟のせいで自信を無くしてるな!わからせてやる!
俺は力いっぱい息を吸ってまくしたてた!
「こんな身体じゃない!ヒースさんは美しいし魅力的だ!壮年の人間特有の色気と、ヒースさん自身の色気がたまらん!はっきり言ってそそる!
おまけに性格もいい!気が優しくて善良だ!完璧過ぎる!」
「は?え?魅力的?色気?善良?完璧?」
「そして俺は独り身のオークだ!ヒースさん!それは理解しているか!?」
「は、はい。理解しています」
「オークは人間の偏見ほど性欲で頭いっぱいじゃない!」
「え?あ、はい。し、失礼しました。で、でも、私そんなつもりで言ったわけでは……」
「だけど性欲自体は強い!今も理性と魔道具と薬で抑えてるけどな!ヒースさんみたいな綺麗で色っぽくて見た目も性格も好みど真ん中の奴を見たら、めちゃくちゃそそられるんだよ!」
「そ、そうなんですか?ご、ごめんなさい?」
「ヒースさんは悪くない!俺が勝手にそそられて、性欲を激らせてるだけだ!
だから襲わないよう気をつけてる!だけど、さっきみたいにヒースさんから煽られたらどうなるかわからん!もっと俺を警戒しろ!俺の忍耐を信じるな!わかったか!?」
「わ、わかりました?」
「よし!とにかく!軽々しく誘うような事を言うな!俺の花嫁にするぞ!」
俺は力いっぱい説明し、やっちまったと頭を抱えた。
病室とはいえ二人きりの密室で!ナニを叫んでるんだ俺は!
ヒースもポカンとした顔だよ!当たり前だ!
「……ぷっ!あははは!ははははは!」
「……はい」
ここは国営病院の個室だ。窓際に置かれたベッドの上で、ヒースは困ったように笑う。
そんな笑顔も愛らしいなと考えて、脳内で自分をぶん殴る。
あの取引の夜から7日が経過した。
危うい笑みを浮かべていたヒースは、もういない。
肌を隠す病衣姿は儚く、まだまだ痩せてるし頬がこけたままだ。だが、表情に生気が戻っている。適切な治療と食事のお陰だろう。
そして、俺と打ち解けて話すようになっていた。
嬉しい。毎日見舞いに来ているからだろうか。これからも毎日来よう。
そんな風に考えていると、ヒースは胸の内を語りだした。
「赤花国には帰りたくないです。あの国には嫌な記憶が多過ぎる。なにより家族に会いたくない。
このまま緑鉄国で……出来れば、ガルグさんの側で暮らしたいです」
「……っ!」
胸がギュンとし、思わず手で押さえた。トキメキを治めつつ、冷静になれと己に言い聞かせる。
ヒースに頼ってもらって嬉しいし、故郷に帰りたくない気持ちも理解できる。今すぐ同居したいくらいだ。
「お、俺は構わないが……。ヒースさんは、本当にそれでいいのか?」
緑鉄国は赤花国とは全く違う国だ。しかも、ヒースは望んでこの国に来たわけではない。後になって後悔したり、苦しむんじゃないだろうか。
色々考えた上での発言だったが、ヒースは拒絶されたと思ったのか、顔色を変えて身を乗り出した。
「いいんです!私はガルグさんの側にいたい!助けて頂いたご恩を返したい!雑用でもなんでもします!お側に居させてください!」
涙を浮かべた必死な顔に、また心臓を撃ち抜かれる。なんだこの健気で愛しい生き物は!
こけた頬を撫でて抱きしめたい!
もう大丈夫だ!一生一緒に暮らそうぜ!というか結婚してくれ!って言いたい!
……そしてヒースは求婚に応える。俺は恥じらうヒースに口付けし、禁欲的で儚げな病衣をはいでいく。
薬の香りがする清潔な空間に、欲に濡れた息づかいが響く。
俺の無骨な緑の手が、白い肌に触れる。痛みや不快感を与えぬよう優しく快楽を引き出す。
ヒースはどこで感じるだろうか?滑らかな首筋を噛んで、喉仏の形を確かめたい。鎖骨や胸骨をたどって、胸を揉んで腹筋をなぞる。
甘い声が上がる。手が俺の腕や背中を引っ掻く。
酷い環境のせいで性欲が下がっているかもしれないが、オークは本能的に快楽を引き出すのが上手い。俺の唾液や呼吸に含まれる媚薬成分も、いい仕事をするだろう。
下生えに隠された竿が蜜をたらして、とうとう自ら脚を開く。俺は素直な腿を撫でて褒めて、きっとオークの俺より小ぶりで美しい幹を撫でて、鈴口からこぼれる蜜を味わう。
精液が空っぽになるまでしゃぶって、脱力した身体の奥に手を伸ばし……。
俺の馬鹿野郎!妄想を止めろ!
俺は脳内で自分を殴った。
多分、ヒースは求婚しても嫌がらないし、妄想したようなことをしても拒絶しない。それはヒースが俺を恩人だと思っていて、俺以外に頼れる人が居なくて、全てを失って弱っている状態だからだ。
そんな状態だとわかっているのに、付け込みたくない。ヒースに対して失礼だ。
そんな風に考えていた。
だが。
「なんでもします。こんな中年の見苦しい身体でよければ、性欲処理に使っ……」
「自分の身体を大事にしろ馬鹿!本気で襲うぞ!」
ヒースの発言にブチ切れそうになる。というかキレた。
なんだよ見苦しいって!性欲処理だと?ふざけるな!
「え?でもこんな身体……」
こんな身体!?さては、ナーシサス男爵と弟のせいで自信を無くしてるな!わからせてやる!
俺は力いっぱい息を吸ってまくしたてた!
「こんな身体じゃない!ヒースさんは美しいし魅力的だ!壮年の人間特有の色気と、ヒースさん自身の色気がたまらん!はっきり言ってそそる!
おまけに性格もいい!気が優しくて善良だ!完璧過ぎる!」
「は?え?魅力的?色気?善良?完璧?」
「そして俺は独り身のオークだ!ヒースさん!それは理解しているか!?」
「は、はい。理解しています」
「オークは人間の偏見ほど性欲で頭いっぱいじゃない!」
「え?あ、はい。し、失礼しました。で、でも、私そんなつもりで言ったわけでは……」
「だけど性欲自体は強い!今も理性と魔道具と薬で抑えてるけどな!ヒースさんみたいな綺麗で色っぽくて見た目も性格も好みど真ん中の奴を見たら、めちゃくちゃそそられるんだよ!」
「そ、そうなんですか?ご、ごめんなさい?」
「ヒースさんは悪くない!俺が勝手にそそられて、性欲を激らせてるだけだ!
だから襲わないよう気をつけてる!だけど、さっきみたいにヒースさんから煽られたらどうなるかわからん!もっと俺を警戒しろ!俺の忍耐を信じるな!わかったか!?」
「わ、わかりました?」
「よし!とにかく!軽々しく誘うような事を言うな!俺の花嫁にするぞ!」
俺は力いっぱい説明し、やっちまったと頭を抱えた。
病室とはいえ二人きりの密室で!ナニを叫んでるんだ俺は!
ヒースもポカンとした顔だよ!当たり前だ!
「……ぷっ!あははは!ははははは!」
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