【五章完結】サラリーマン、オークの花嫁になる

花房いちご

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第五章 元騎士、オークの花嫁になる

元騎士、オークの花嫁になる【11】

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 なんやかんやでヒースが退院するまで見舞いに日参し、退院したその足で同居して二ヶ月ほど経った。
 同居といっても、部屋は階層ごと別々だ。俺が5階ヒースが4階で、共有部分である階段と風呂以外は勝手に入らないよう約束している。それに、お互い仕事があるのでずっと一緒ではない。

 でも食事は必ず一緒に食べるし、一日のかなりの時間を二人で過ごしてるんだよな。

 というか、夜間は同じ建物の中で二人きりだ。めちゃくちゃ意識する。寝る直前まで欲情を抑える魔道具が外せない。そして外した後は反動で自慰しまくるのだが、それでも淫らな夢を見てしまう。

 要するに、愛しい人と二人きりで幸せだけど辛い。特にちんぽが辛い。助けてくれ。

 しかも、理性と気合いと魔道具で欲情を抑えているが、好きという気持ちは抑えられない。
 ヒースが好きだ。今日も可愛い。可愛すぎて辛い。

 などと脳内で嘆きながら、俺もエプロンを身につけた。朝飯を作らないといけない。

「パンは俺が切るよ。昨日の残りはあるか?」

「スープが余ってたので温め直してます。後は卵とベーコンを焼こうかと」

「上等だ。あとはサラダでも作るか」

 いつもこうやって一緒に料理している。仲のいい夫夫みたいで嬉しい。

 まあ、お互いに「食事は自分が作るから休んでて欲しい」と言い張った結果なんだが。

 話しながらパンを切ったり、卵とベーコンを焼いたり、サラダを作ったり、それらを盛り付けたりした。

「ガルグ先生、盛り付け多過ぎです。私はそんなに食べられないですってば」

「悪い。余った分は俺が食うよ」

 お互いの食事量が違いすぎて、今だにうっかりしてしまう。というか、ヒースの食べる量が少なくて心配だ。
 ヒースと同僚たちいわく、人間の成人男性の平均らしいが。
 たわいもない話をしながら朝飯を食べる。今日の目玉焼きはヒースが焼いた。良い感じの半熟だし、好きな人が焼いたので美味さが増してる。
 でもヒースはちょっと残念そうだ。

「なかなか双子の卵は出ませんね」

 同居してすぐ、卵から卵黄が二つ出たことがあった。ヒースは喜んで、目玉焼きにしたそれを俺と分け合って食べた。

「味は一緒だろ?」

「そうですけど。双子の卵は幸福の象徴といって、縁起がいいんです。それに見つけると、なんだか得したような、今日は良いことがありそうな気分になりますし」

「ふーん。そんな考え方もあるんだな。なら、今度出たら全部一人で食べたらいい」

「いいえ。ガルグ先生と分け合います。私、良いことは大切な人と分け合いたいんです」

「ぐっ!」

 ギュンッ!と、胸が高鳴る。魔道具もちょっと軋んだ音を立てた。
 両手で胸を押さえる俺に、ヒースがはにかんだ笑みを浮かべる。

「い、今のどうでした?欲情しませんか?私を抱きたくな……」

「なってない!さっさと食べろ!」

 胸はキュンキュンするが、魔道具のおかげで欲情はしていない。魔道具がなければ、速攻で欲情して勃起してただろうし、ヒースを押し倒していただろう。
 でもこのままだとヤバい。ヒースを見ないようにして、気合いでちんぽを鎮める。

「……はーい」

 残念そうな声を聞きつつ、手早く食事を済ませた。

 食後。昼食用のサンドイッチを作ってから、台所を片付けた。
 玄関の鍵や廊下の窓を開けつつ、二階の職員室に向かう。
 後は、全教員朝礼をするまで待機だ。

「ガルグ先生、今夜は何を食べたいですか?」

「まだ山鳥の肉があったよな。シチューかグラタンがいいな。ヒース先生は何が食べたい?」

「私はグラタンがいいです。バーチ先生からもらったキノコも入れましょう」

 ヒース……いや、ヒース先生も俺と共に職員室に向かいながら、眩しい笑顔で話した。

 そう、ヒース先生だ。結局、この学校の人間担当教師になったのだ。
 慣用句の【水筒からドラゴン】というか、【ゴブリン転じて豊作になる】というか……とにかく予想外だったが、人間担当教師を確保したい校長の執念のせいで実現した。
 あとヒース先生が【どうしてもガルグさんの側にいたい。出来れば一緒に暮らしたい。その為なら、教師でもなんでもします】と、潤んだ瞳で言うから……。

「あと私、いつでも大丈夫ですからね」

「……ナニが大丈夫なんだ?」

 わかっていて聞いてしまう。案の定、ヒースはそっと俺に寄り添い頬を染めた。

「いつでも、私の身体で欲を発散して下さ……」

「発散しない!」

 俺は叫び、横に避けて距離を取った。
 しかしヒースの色気にあてられて欲情しかけたせいで、それを抑える魔道具が悲鳴をあげた。
 ギチギチビキビキ不穏な音だ。この魔道具も寿命が近いだろう。俺は理性と気合いでちんぽを鎮めた。

「ヒース先生!馬鹿なことを言うな!自分の身体を大事にしろって言ってるだろ!」

「大事にしてますよ。私が貴方に恩返ししたいんです。……私がまだ貴方にとって魅力的な年齢の内に……」

「恩返しはもう充分だ!というか、ヒース先生の魅力が年齢で下がるわけないだろ!むしろ益々ムラムラするに決まってる!とにかくやめてくれ!襲いかかって孕ませてしまう!」

 ヒース先生はさらに頬を頬を赤らめ頷いた。

「それが貴方の望みなら、私はいつでも貴方を受け入れて、貴方の子を孕みます」

「駄目だ!絶対駄目だ!」

 職員室に着いてからも、不毛なやり取りが続く。
 出勤した同僚たちは「若いっていいわねー」「今日も仲良しですね」と、生温く笑うばかりで助けてくれない。
 校長に至っては「安心したまえ。我が校は職場恋愛を禁じてない。結婚する時は、真っ先に私に教えてくれたまえ」とニヤニヤしてやがる。
 完全に面白がってるな!畜生め!

 ヒース先生の体調は全快し、周囲に馴染んで仕事にも慣れたというのに、いまだに俺への依存が治らない。
 このままでは、いつ魔道具と俺の理性がブッ壊れて襲うかわかったもんじゃない。
 なんとかしないといけないのに。


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