【五章完結】サラリーマン、オークの花嫁になる

花房いちご

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第五章 元騎士、オークの花嫁になる

元騎士、オークの花嫁になる【12】

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 俺の苦悩を他所に時は流れる。
 全教員朝礼で軽く情報交換し、授業のためにオーク用校舎へ行く。
 俺は主に保健体育を教えている。7歳から15歳までのオーク男児に対し、オークの身体の構造や身体能力の使い方などを座学と実技で教えるのだ。
 オークの子供は多いので、学年と性別ごとにクラスが分かれている。
 今は10歳男児クラスの保健授業で、内容は性欲制御訓練に向けての座学だ。

「……と、言うわけで、俺たちオークの身体を流れる覇気も、人間やエルフに流れている魔力も、元は生き物が持つ生命力だ。同一のものと言ってもいい。
 ただし俺たちは、覇気のほとんどを身体の強化や腕力に使う。そのため、魔法を使うのは苦手だ。
 また、覇気は性欲とも密接な関係がある。覇気を理性でコントロールすることで、性欲の制御がよりやりやすくなる。
 薬も魔道具も魔法も絶対じゃない。最後に性欲の暴走を止めるのは己の理性だ」

 生徒たちの反応は様々だ。

「へー」「知らなかった」と、言って感心したり、「知ってたぜ」「常識だよな」「俺らはもう10歳なんだぜ」と訳知り顔で頷いたり、無言でなにやら考えたりしている。
 我が子に性知識を教えるか否かは、各家庭によってバラバラだというのが良くわかる。
 だから学校か、それに準じる場所で教えるのが必要なのだ。

 その後、簡単に理性での性欲制御……平たく言うとちんぽの鎮め方を解説した。
 将来性交する気がなくても、花婿でなく花嫁になるつもりだとしても、男のオークには必要な知識だ。

「性欲制御も身体の強化も同じだ。慣れれば無意識のうちに出来るようになる。
 だが、意識的に制御する方が効率がいいし、威力が上がる。自分だけでなく、大切な人を守ることに繋がる知識だ。よく覚えておくように。
 ……今日の授業はここまで。実技は次回行う。最後に質問はあるか?」

 何人かが手を上げる。一人を指名した。

「あの!僕ずっと気になってたんですけど、ガルグ先生が性欲制御できてるのって、ヒース先生と毎日性交して発散してるからですか?」

「違う。俺とヒース先生はそういう関係じゃない」

 ぶっ飛ばすぞクソガキ!などと怒鳴るのをこらえた俺を褒めてくれ。
 質問に爆笑して「それ聞いちゃう~?」「明らかにデキてんじゃん!」とか言ってる奴らごとぶっ飛ばして罵っても問題にならないだろうが、相手は子供だ。冷静に諭すのが教師の役割だ。
 ……あまり騒ぐようなら、クソガキ時代の俺が、先代校長やチェリー先生にされたようにぶっ飛ばすが。
 腕輪型の魔道具を見せて説明した。

「俺が性欲制御できているのは、訓練を重ねたからと、この魔道具のお陰だ」

「そうなんですか……。遠目に見たことしかないですけど、ガルグ先生とヒース先生はいつも一緒にいるから、恋人か夫夫かと思ってました。違うんですね……」

 おいこら。授業に関係ないことを気にしてるんじゃない。なんで残念そうなんだ。

「ヒース先生って、新しい人間の先生だよな?ガルグ先生と市場で買い物してたのを見かけたけど、夫夫にしか見えなかったぜ」

「お似合いだし仲良いよなー。しかも二人で暮らしてるんだろ?付き合わないの?」

「仲がいいのは本当だが、恋人でも夫夫でもない。
 ヒース先生に失礼だから、今の発言は二度とするな。そもそも、他者に交際の有無を安易に聞くな。失礼にあたる場合が多……」

「えー?なんで?ガルグ先生って、あの先生のこと好きで……ひっ!」

「いいから、二度と、するな。わかったな?」

「……はい」

 声と表情、そして軽く覇気を出して黙らせた。
 それにしても、校長や同僚たちだけでなく生徒や保護者からも揶揄われることが増えた。あと友人知人からも、いつ結婚するか聞かれる。
 勘弁してくれ!


 ◆◆◆◆◆◆◆



 その後。昼食を挟んで授業を続けた。
 ちなみに昼食もヒース先生と食べるが、午後も授業があるのであまり話せない。いや、仕事中だから当たり前なんだが。
 ともかく、受け持った授業をこなしていく。 

 昼の3時。終礼の鐘が鳴る。

「ガルグ先生ー!さよーならー!」

「さよなら。気をつけて帰れよ。寄り道してもいいが、魔獣やゴブリンを見かけたら大人を呼ぶんだぞ」

「はーい」

 生徒たちが下校するのを見送る。何もなければ、俺たち教師も仕事を終えていい。
 だが今日は、生徒に出した課題の採点と、明日の授業の準備をしなければならない。

「お疲れ様です」

「お疲れ様」

 職員室には、同じ理由で残っている同僚たちがいた。
 ヒース先生はいないのか。まだ店が開いてる時間だから、買い物にでも行ったのかも知れない。
 少し残念に思いながら採点していく。採点を終え、授業の準備に入ったところで職員室のドアが開いた。賑やかな話し声が聞こえる。
 その声に、ついつい笑みが浮かんでしまう。畜生。好きだ。

「ヒース先生、チェリー先生、お疲れ様です」

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