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第三章エルフ、オークの花嫁になる
エルフ、オークの花嫁になる【9】
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時刻は夕暮れ時。次の宿場に着く直前だった。
《レグレース!何か起きたみたいだよ!》
「ぎゃー!助けてくれ!」
「クソ!離しやがれ!」
先を行く人間とオークの一団が、荷馬車ごとゴブリンに襲われていた。皆、応戦してるがゴブリンの数が多い。十、いや十五匹はいる。
私は、考える前に走っていた。
「ーーー風よ!我を疾く走らせよ!ーーー」
風魔法で加速しながら、ゴブリンたちの姿を確認する。私はエルフにしては魔法が下手で貧弱だが、戦う事は出来る。
それに、ゴブリンは生かしておけない。
ゴブリンは、見た目はオークの子供を醜悪にしたような魔獣だ。しかし、オークや我々と違って凶暴で知能が低く、意思疎通が出来ない。雄しかいないため、他の生き物を連れ去って繁殖の苗床とするか、いたぶりながら食い殺すことしか考えていない存在だ。弱いが繁殖力が強い。どこの国でも、見つけたら駆除する。
「ーーー風よ唸れ!我が敵を切り裂け!ーーー」
風の刃がゴブリンを切り裂き、汚い悲鳴があがった。
幸い、大した時間もかけずに殲滅できた。
「た、助かった!荷物も無事だあ!」
「ありがとうございます!貴方様は命の恩人です!」
襲われていた者たちは緑鉄国に拠点を置く商会の一団だそうで、荷物も無事だと感謝された。
「お気になさらず。ご無事でよかったです。お礼も結構で……」
「とんでもない!高貴なエルフ族の若様の手を煩わせてしまいました!」
「せめてお礼だけでも!」
「えっ?」
「えっ?」
なぜ、エルフだと分かったのか?訪ねると、商人たちは大きな溜息をついた。
「いや、バレバレですよ。人間離れした美形ですし」
「こんな見事な輝きの髪をお持ちなのは、王侯貴族かエルフしかいねえ」
「その上、強力な魔法を短い詠唱で使えるとなると……」
「ええ~?私はエルフの中では無器量ですし、茶髪に見えるようにしたはずですし、あの程度の魔法なんて……」
「どうみても美形ですし、茶髪に見えませんし、十匹以上いたゴブリンを瞬殺する魔法は「あの程度」ではありません」
私は認識阻害魔法が苦手だ。そのせいで、エルフだとすぐバレたらしい。そういえば風の精霊も《うーん?僕の目にはあまり変わってないように見えるけど?》と、言っていた。精霊は我々と見え方が違うから大丈夫だろうと、軽く流していた。
改めて、私は風魔法と錬成魔法と治癒魔法以外はポンコツらしい。エルフなのに。
「ご恩返しにもなりませんが、私どもがご指摘させて頂きます。なあ、お前たち」
「おうよ。兄さんはエルフの中でも世間知らずみてえだからな。まずは、話し方とか所作だ。エルフは独特の気品って奴がある。もっと雑に話した方がいいですぜ」
「だな。それに魔力の強さを隠せてない。兄さん自身はもちろん、持ち物もだ。ほら、こんな純度の高い魔石を雑に袋に入れちゃあ駄目だよ。黄金の葉だの、ドラゴンの鱗だのの、青星国らしい素材もだ」
「そうだそうだ。低級魔法しか使えない俺でも、強力な魔力が良く見えますぜ」
「す、すみません。気をつけます」
私は恐縮しきりだった。
「お気をつけ下さい。今まさにゴブリンに襲われた私どもが言うのもなんですが、最近のこの辺りは物騒なんです」
「半月前までこの街道はずっと安全だったのに……」
商人たちが嘆く。
「そうなんですぜ。こいつらゴブリンが街道まで出てくるし、人狩りも多いですぜ」
「討伐されてるはずだけどよ。減るどころか増えるばかりだ。そいつらにとっちゃ、兄さんは良い獲物だよ」
確かに私と精霊も、街道を緑鉄国方向に進むほど邪悪な気配を感じていた。忌々しいが、エルフはゴブリンからも人狩りからも狙われやすい。捕えるのに手間がかかるが、有り余る魔力と寿命のぶん長く使えるからだ。
「原因がわからねーですが、どうやらゴブリンが大発生してるらしいです」
「噂では、人狩りがゴブリンを使役しているとか」
ゴブリンを使役?流石にそれはと考えこむ。
「まるで、魔王侵略時代のような話ですね。オークがゴブリンを使役していたのは有名ですが……」
「いやいや!あくまで噂です!今は悪いオークなんざほとんどいませんからね!」
「わかっています。私にもオークの知人が何人かいますが、みなさん善良です。大体、エルフにだってろくでなしはいますし。私の家族とか私の家族とかそして私の家族とか……」
おっと。恨みを思い出して目の前が暗くなってきた。
「この話やめましょうか。とにかく、お気をつけて」
商人たちの助言を胸に刻んで進み、緑鉄国に入る。やはり、状況は悪化していった。
《レグレース!何か起きたみたいだよ!》
「ぎゃー!助けてくれ!」
「クソ!離しやがれ!」
先を行く人間とオークの一団が、荷馬車ごとゴブリンに襲われていた。皆、応戦してるがゴブリンの数が多い。十、いや十五匹はいる。
私は、考える前に走っていた。
「ーーー風よ!我を疾く走らせよ!ーーー」
風魔法で加速しながら、ゴブリンたちの姿を確認する。私はエルフにしては魔法が下手で貧弱だが、戦う事は出来る。
それに、ゴブリンは生かしておけない。
ゴブリンは、見た目はオークの子供を醜悪にしたような魔獣だ。しかし、オークや我々と違って凶暴で知能が低く、意思疎通が出来ない。雄しかいないため、他の生き物を連れ去って繁殖の苗床とするか、いたぶりながら食い殺すことしか考えていない存在だ。弱いが繁殖力が強い。どこの国でも、見つけたら駆除する。
「ーーー風よ唸れ!我が敵を切り裂け!ーーー」
風の刃がゴブリンを切り裂き、汚い悲鳴があがった。
幸い、大した時間もかけずに殲滅できた。
「た、助かった!荷物も無事だあ!」
「ありがとうございます!貴方様は命の恩人です!」
襲われていた者たちは緑鉄国に拠点を置く商会の一団だそうで、荷物も無事だと感謝された。
「お気になさらず。ご無事でよかったです。お礼も結構で……」
「とんでもない!高貴なエルフ族の若様の手を煩わせてしまいました!」
「せめてお礼だけでも!」
「えっ?」
「えっ?」
なぜ、エルフだと分かったのか?訪ねると、商人たちは大きな溜息をついた。
「いや、バレバレですよ。人間離れした美形ですし」
「こんな見事な輝きの髪をお持ちなのは、王侯貴族かエルフしかいねえ」
「その上、強力な魔法を短い詠唱で使えるとなると……」
「ええ~?私はエルフの中では無器量ですし、茶髪に見えるようにしたはずですし、あの程度の魔法なんて……」
「どうみても美形ですし、茶髪に見えませんし、十匹以上いたゴブリンを瞬殺する魔法は「あの程度」ではありません」
私は認識阻害魔法が苦手だ。そのせいで、エルフだとすぐバレたらしい。そういえば風の精霊も《うーん?僕の目にはあまり変わってないように見えるけど?》と、言っていた。精霊は我々と見え方が違うから大丈夫だろうと、軽く流していた。
改めて、私は風魔法と錬成魔法と治癒魔法以外はポンコツらしい。エルフなのに。
「ご恩返しにもなりませんが、私どもがご指摘させて頂きます。なあ、お前たち」
「おうよ。兄さんはエルフの中でも世間知らずみてえだからな。まずは、話し方とか所作だ。エルフは独特の気品って奴がある。もっと雑に話した方がいいですぜ」
「だな。それに魔力の強さを隠せてない。兄さん自身はもちろん、持ち物もだ。ほら、こんな純度の高い魔石を雑に袋に入れちゃあ駄目だよ。黄金の葉だの、ドラゴンの鱗だのの、青星国らしい素材もだ」
「そうだそうだ。低級魔法しか使えない俺でも、強力な魔力が良く見えますぜ」
「す、すみません。気をつけます」
私は恐縮しきりだった。
「お気をつけ下さい。今まさにゴブリンに襲われた私どもが言うのもなんですが、最近のこの辺りは物騒なんです」
「半月前までこの街道はずっと安全だったのに……」
商人たちが嘆く。
「そうなんですぜ。こいつらゴブリンが街道まで出てくるし、人狩りも多いですぜ」
「討伐されてるはずだけどよ。減るどころか増えるばかりだ。そいつらにとっちゃ、兄さんは良い獲物だよ」
確かに私と精霊も、街道を緑鉄国方向に進むほど邪悪な気配を感じていた。忌々しいが、エルフはゴブリンからも人狩りからも狙われやすい。捕えるのに手間がかかるが、有り余る魔力と寿命のぶん長く使えるからだ。
「原因がわからねーですが、どうやらゴブリンが大発生してるらしいです」
「噂では、人狩りがゴブリンを使役しているとか」
ゴブリンを使役?流石にそれはと考えこむ。
「まるで、魔王侵略時代のような話ですね。オークがゴブリンを使役していたのは有名ですが……」
「いやいや!あくまで噂です!今は悪いオークなんざほとんどいませんからね!」
「わかっています。私にもオークの知人が何人かいますが、みなさん善良です。大体、エルフにだってろくでなしはいますし。私の家族とか私の家族とかそして私の家族とか……」
おっと。恨みを思い出して目の前が暗くなってきた。
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