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第1部
3話 アナベルの過去と覚悟
「アナベルさんに何が起きたかわかっていないというのに、何故マルグリットさんを責めるのですか!おまけに一方的に怒鳴って暴力を振るうなど理不尽にもほどがあります!」
きゃー!聖女ミシエラ様ー!
優しい表情に穏やかな話し方がトレードマークだけど、悪人を厳しく叱責する姿も素敵なんだよね!
というか小説で想像してたより迫力がある!銀髪と金の瞳も相まって神々しい!好き!
両親は聖女ミシエラ様からマルグリットお姉様への理不尽を叱責され、流石に動揺している様子だ。
「せ、聖女様まで……。し、しかしですね。この地味で不細工な娘は、昔から不出来で役立たず。その癖、頭でっかちで余計なことばかりしているのです」
「そうですわ。しかも妹のアナベルちゃんを妬んで虐めているのです。我が娘ながら恥ずかしい子ですわ」
ふざけるな!お姉様は最高の姉だ!妬まれたことも!虐められたこともない!愛して慈しんでくれた!
そう叫びかけてこらえる。アナベル、冷静になりなさい。
私は土下座をやめて正座し、口を開いた。
「いいえ。両親の言うことは全て嘘です。マルグリットお姉様は私を慈しんでくれています。素晴らしい姉です。痛みの発作に苦しんでいる時、一番お世話をしてくれたのもお姉様です」
「アナベル!一体なにを言ってるんだ!」
「そうよアナベルちゃん!」
「お父様、お母様、お控え下さい。今は私が発言しているのです」
「なっ!?」
「そんな!」
かるく睨みつけていうと、二人はショックを受けたのか黙り込んだ。信じられない様子で私を見つめながら。
うん。そういう反応になるでしょうね。これまでの私は両親にとって都合のいい人形かペットのような存在だったのだから。
ただし、家族として愛されていたとは思えない。
両親は私が痛みの発作に苦しむ度、目を背けて逃げていった。
『ひぐっ!……!ぐるじぃ……!おとう……さま……!おかあさま……!たすけ……てぇ……!』
『ひっ!な、なんだ?発作か?』
『ね、ねえ、この病って感染ることは……な、無いのね。よかったわ』
『あ、ああ。よかった。私たちはそろそろ出て行こう』
『え、ええ。そうね。看病は使用人のやることですもの。あ、アナベルちゃん、落ち着いたらまた来ますからね』
『たすけて……!』
どんなにすがっても、叫んでも、二人はいつも出ていってしまう。
普段との落差と、穢らわしい物を見る目がショックだった。だから余計に、私の世話をしてくれる人たちに八つ当たりしてしまった。結果、大半の侍女たちは世話を嫌がった。
中には嫌がらない侍女もいるけど、彼女たちは生傷が耐えない。
見かねたマルグリットお姉様は、すすんで世話をしてくれた。私がどんなに罵っても叩いても、受け止めてくれた。
『はあっ!はあっ!……ぐうぅ……!いたいぃ……!うぅ……!っ……!』
『アナベル、頑張って。私のことはいくら叩いてもいいから、鎮痛薬を飲んで。痛みが治ったら、口直しに宝玉果を食べられるわ』
『マル……グリット……お姉様……』
私はお姉様の愛情に救われていた。
なのに、健康で優秀なお姉様が妬ましくて、苦痛から気を紛らわせたくて、私は沢山の物を欲しがった。お姉様に無理難題を押し付け、全てを奪った。
マルグリットお姉様は16歳。本当なら、貴族令嬢として何不自由のない青春を送っていたはずなのに。
ああ、過去の自分が醜悪過ぎて泣きそう。
でも、泣いている場合じゃない。
私は聖女ミシエラ様と聖騎士ルグラン様をしっかり見つめ、頭を下げた。
「聖女ミシエラ様、聖騎士エリック・ルグラン様。先ほどは、見苦しく騒ぎ立てて申し訳ございませんでした。
私は、これまで目を背けていた現実が見えるようになったのです。
魔炎病にかかっていた間は、頭の中が常に混乱していて、物事を深く考えることができませんでした。己の欲望のまま生き、たくさん罪を犯してしまいました。
私は己の罪を自覚すると同時に、罪の大きさに狼狽えてしまったのです」
前世だとか転生だとかは伏せて説明する。聖女ミシエラ様は静かに私の話を聞き、手をかざして頷く。
「アナベルさんのお身体は完治しています。心をさいなむ呪いや魔法の類もかかっていません。
仰る通り、今までは魔炎病の影響で錯乱状態だったのでしょう。完治したことで、本来のアナベルさんに戻ったのだと思われます」
「なるほど。魔炎病は進行すると、思考能力や自制心を奪うからな。アナベル嬢、今まで大変だったな」
「アナベル、そうだったの……」
聖騎士ルグラン様は納得し、傷ましそうに目を細めた。マルグリットお姉様は、まだ心配そうだけど私の言葉を否定しない。労りに満ちた眼差しが、私を包むように見つめている、
けど、私を都合のいい人形あつかいしたい両親は違った。
「は?今のアナベルが本当のアナベルだと?何を言っている?」
「アナベルちゃん!その話し方はなに!?可愛い貴女には似合わないわ!やめなさい!」
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きゃー!聖女ミシエラ様ー!
優しい表情に穏やかな話し方がトレードマークだけど、悪人を厳しく叱責する姿も素敵なんだよね!
というか小説で想像してたより迫力がある!銀髪と金の瞳も相まって神々しい!好き!
両親は聖女ミシエラ様からマルグリットお姉様への理不尽を叱責され、流石に動揺している様子だ。
「せ、聖女様まで……。し、しかしですね。この地味で不細工な娘は、昔から不出来で役立たず。その癖、頭でっかちで余計なことばかりしているのです」
「そうですわ。しかも妹のアナベルちゃんを妬んで虐めているのです。我が娘ながら恥ずかしい子ですわ」
ふざけるな!お姉様は最高の姉だ!妬まれたことも!虐められたこともない!愛して慈しんでくれた!
そう叫びかけてこらえる。アナベル、冷静になりなさい。
私は土下座をやめて正座し、口を開いた。
「いいえ。両親の言うことは全て嘘です。マルグリットお姉様は私を慈しんでくれています。素晴らしい姉です。痛みの発作に苦しんでいる時、一番お世話をしてくれたのもお姉様です」
「アナベル!一体なにを言ってるんだ!」
「そうよアナベルちゃん!」
「お父様、お母様、お控え下さい。今は私が発言しているのです」
「なっ!?」
「そんな!」
かるく睨みつけていうと、二人はショックを受けたのか黙り込んだ。信じられない様子で私を見つめながら。
うん。そういう反応になるでしょうね。これまでの私は両親にとって都合のいい人形かペットのような存在だったのだから。
ただし、家族として愛されていたとは思えない。
両親は私が痛みの発作に苦しむ度、目を背けて逃げていった。
『ひぐっ!……!ぐるじぃ……!おとう……さま……!おかあさま……!たすけ……てぇ……!』
『ひっ!な、なんだ?発作か?』
『ね、ねえ、この病って感染ることは……な、無いのね。よかったわ』
『あ、ああ。よかった。私たちはそろそろ出て行こう』
『え、ええ。そうね。看病は使用人のやることですもの。あ、アナベルちゃん、落ち着いたらまた来ますからね』
『たすけて……!』
どんなにすがっても、叫んでも、二人はいつも出ていってしまう。
普段との落差と、穢らわしい物を見る目がショックだった。だから余計に、私の世話をしてくれる人たちに八つ当たりしてしまった。結果、大半の侍女たちは世話を嫌がった。
中には嫌がらない侍女もいるけど、彼女たちは生傷が耐えない。
見かねたマルグリットお姉様は、すすんで世話をしてくれた。私がどんなに罵っても叩いても、受け止めてくれた。
『はあっ!はあっ!……ぐうぅ……!いたいぃ……!うぅ……!っ……!』
『アナベル、頑張って。私のことはいくら叩いてもいいから、鎮痛薬を飲んで。痛みが治ったら、口直しに宝玉果を食べられるわ』
『マル……グリット……お姉様……』
私はお姉様の愛情に救われていた。
なのに、健康で優秀なお姉様が妬ましくて、苦痛から気を紛らわせたくて、私は沢山の物を欲しがった。お姉様に無理難題を押し付け、全てを奪った。
マルグリットお姉様は16歳。本当なら、貴族令嬢として何不自由のない青春を送っていたはずなのに。
ああ、過去の自分が醜悪過ぎて泣きそう。
でも、泣いている場合じゃない。
私は聖女ミシエラ様と聖騎士ルグラン様をしっかり見つめ、頭を下げた。
「聖女ミシエラ様、聖騎士エリック・ルグラン様。先ほどは、見苦しく騒ぎ立てて申し訳ございませんでした。
私は、これまで目を背けていた現実が見えるようになったのです。
魔炎病にかかっていた間は、頭の中が常に混乱していて、物事を深く考えることができませんでした。己の欲望のまま生き、たくさん罪を犯してしまいました。
私は己の罪を自覚すると同時に、罪の大きさに狼狽えてしまったのです」
前世だとか転生だとかは伏せて説明する。聖女ミシエラ様は静かに私の話を聞き、手をかざして頷く。
「アナベルさんのお身体は完治しています。心をさいなむ呪いや魔法の類もかかっていません。
仰る通り、今までは魔炎病の影響で錯乱状態だったのでしょう。完治したことで、本来のアナベルさんに戻ったのだと思われます」
「なるほど。魔炎病は進行すると、思考能力や自制心を奪うからな。アナベル嬢、今まで大変だったな」
「アナベル、そうだったの……」
聖騎士ルグラン様は納得し、傷ましそうに目を細めた。マルグリットお姉様は、まだ心配そうだけど私の言葉を否定しない。労りに満ちた眼差しが、私を包むように見つめている、
けど、私を都合のいい人形あつかいしたい両親は違った。
「は?今のアナベルが本当のアナベルだと?何を言っている?」
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