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ARKADIA──それが人であるということ──
ARKADIA────『極剣聖』進撃す(前編)
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時間は遡り、魔石塔内部。そこを独り進む、一つの影があった。
サクラである。今し方フィーリア──まあ偽の紛い物ではあったが──と対話を終えた彼女は単身、フィーリア────否、『理遠悠神』アルカディアが待ち構える魔石塔に突入した訳だが、その内部は随分と様変わりしていた。
まず、広い。外から見た以上に内部は広大かつ複雑な構造へと変貌を遂げている。そして見渡す限り、視界に映る全てが薄青い魔石に覆われ囲まれており、文字通りサクラの視界を埋め尽くし支配していた。
人は同じ景色が永遠と続く様を見せ続けられると、どうやら気が狂うらしい。だが依然としてサクラは平気なままで、道の続く限り彼女は先を進む。
──ウインドア……他の者たちは無事に、上手くやっているのだろうか。
街の防衛を任せた冒険者たちの身を案じながらも、サクラは止まらず突き進む。今、彼女には立ち止まる時間さえもないのだ。
「……む」
と、不意にサクラがスッと身を屈める。直後、彼女の頭上を壁から突如として伸びた魔石が通り過ぎる。その魔石の先は細く鋭利に尖っており、人体などいとも容易く貫けることが見ただけでもわかる。そしてそれは明らかにサクラを狙っていた。
──始めたか。
サクラがそう思った直後、彼女の周囲の壁が──否、壁を覆う薄青い魔石がグニャリと歪み変形し、そして一気に伸びた。
言うなれば、それは粗く雑な槍。しかしの切先は人体を貫くには充分過ぎる程に鋭利に尖っており、目で見て確認するだけでも十数は軽く越すそれらがサクラに向かって殺到する。その伸びる速度も常人は当然として、並の《S》冒険者にも到底捉え切れぬものだ。
が、それをサクラは見てから次々と躱す。目標を貫けなかった魔石の槍が、それぞれ壁やら地面やらに突き刺さっていく。
しかし、息もつかせぬ間にサクラを第二波が襲う。今度は壁からだけでなく、彼女の頭上からも、そして足元からもさっき以上の数が迫り来る。
だが、それでもサクラに焦燥が芽生えることはない。その顔に日常通りの表情を浮かべ、あくまでも冷静に淡々と彼女はその襲来に対応する。
頭上からのは頭を軽く捻り、壁からのは身を翻し、足元からのは前に跳んで回避する。その瞬間、宙にいるサクラを狙って、前方から一際巨大な魔石の槍が突き出て伸びた。
回避によって生じる一瞬の隙を、文字通り突いた一撃────けれど、それすらもサクラに届くことはなかった。目の前にまで迫ったそれを、彼女は宙で身を捻って器用に躱したのだ。そしてあろうことか、その槍の上に着地してしまった。
槍の上を疾駆するサクラに、また新たな槍が伸びる。だが今度の数はもはや数十と片付けられず、群れとすら形容できる程に膨大だった。
人体を貫くどころか細切れにする槍の群れ────だがしかし、それを前にしても、サクラを動揺させるには至らなかった。
サクラは腰に下げた得物たる刀の柄に手をかけ、口を開く。
「温い」
瞬間、すぐ目の前にまで迫っていた魔石の槍全てが、全く同時に粉々に砕け散り、宙に撒かれたその欠片すらも吹き飛ばされる。気がつけば、サクラの視界には薄青い魔石の壁しか残っていなかった。
と、その時──サクラが駆けていた槍の至る箇所から、まるで茨のように無数の棘が生え出す。その先も凄まじく鋭利に尖っており、やはり人体など容易くズタズタにしてしまえるだろう。
だがその棘が生え終わる時には、既にサクラの姿は消えていた。刹那、生えたばかりの棘が根刮ぎ削ぎ落ち、そして槍すらも真っ二つに折られた。
「遅い」
地面に着地していたサクラはそう呟いて、抜いた刀を鞘へ納刀する。そして顔を前方に向ける。
「……」
今の今まで、サクラは長く細い一本道を進んでいた。そんな彼女の目の前に広がっていたのは────明らかに塔の構造を無視した、巨大な空間であった。
サクラである。今し方フィーリア──まあ偽の紛い物ではあったが──と対話を終えた彼女は単身、フィーリア────否、『理遠悠神』アルカディアが待ち構える魔石塔に突入した訳だが、その内部は随分と様変わりしていた。
まず、広い。外から見た以上に内部は広大かつ複雑な構造へと変貌を遂げている。そして見渡す限り、視界に映る全てが薄青い魔石に覆われ囲まれており、文字通りサクラの視界を埋め尽くし支配していた。
人は同じ景色が永遠と続く様を見せ続けられると、どうやら気が狂うらしい。だが依然としてサクラは平気なままで、道の続く限り彼女は先を進む。
──ウインドア……他の者たちは無事に、上手くやっているのだろうか。
街の防衛を任せた冒険者たちの身を案じながらも、サクラは止まらず突き進む。今、彼女には立ち止まる時間さえもないのだ。
「……む」
と、不意にサクラがスッと身を屈める。直後、彼女の頭上を壁から突如として伸びた魔石が通り過ぎる。その魔石の先は細く鋭利に尖っており、人体などいとも容易く貫けることが見ただけでもわかる。そしてそれは明らかにサクラを狙っていた。
──始めたか。
サクラがそう思った直後、彼女の周囲の壁が──否、壁を覆う薄青い魔石がグニャリと歪み変形し、そして一気に伸びた。
言うなれば、それは粗く雑な槍。しかしの切先は人体を貫くには充分過ぎる程に鋭利に尖っており、目で見て確認するだけでも十数は軽く越すそれらがサクラに向かって殺到する。その伸びる速度も常人は当然として、並の《S》冒険者にも到底捉え切れぬものだ。
が、それをサクラは見てから次々と躱す。目標を貫けなかった魔石の槍が、それぞれ壁やら地面やらに突き刺さっていく。
しかし、息もつかせぬ間にサクラを第二波が襲う。今度は壁からだけでなく、彼女の頭上からも、そして足元からもさっき以上の数が迫り来る。
だが、それでもサクラに焦燥が芽生えることはない。その顔に日常通りの表情を浮かべ、あくまでも冷静に淡々と彼女はその襲来に対応する。
頭上からのは頭を軽く捻り、壁からのは身を翻し、足元からのは前に跳んで回避する。その瞬間、宙にいるサクラを狙って、前方から一際巨大な魔石の槍が突き出て伸びた。
回避によって生じる一瞬の隙を、文字通り突いた一撃────けれど、それすらもサクラに届くことはなかった。目の前にまで迫ったそれを、彼女は宙で身を捻って器用に躱したのだ。そしてあろうことか、その槍の上に着地してしまった。
槍の上を疾駆するサクラに、また新たな槍が伸びる。だが今度の数はもはや数十と片付けられず、群れとすら形容できる程に膨大だった。
人体を貫くどころか細切れにする槍の群れ────だがしかし、それを前にしても、サクラを動揺させるには至らなかった。
サクラは腰に下げた得物たる刀の柄に手をかけ、口を開く。
「温い」
瞬間、すぐ目の前にまで迫っていた魔石の槍全てが、全く同時に粉々に砕け散り、宙に撒かれたその欠片すらも吹き飛ばされる。気がつけば、サクラの視界には薄青い魔石の壁しか残っていなかった。
と、その時──サクラが駆けていた槍の至る箇所から、まるで茨のように無数の棘が生え出す。その先も凄まじく鋭利に尖っており、やはり人体など容易くズタズタにしてしまえるだろう。
だがその棘が生え終わる時には、既にサクラの姿は消えていた。刹那、生えたばかりの棘が根刮ぎ削ぎ落ち、そして槍すらも真っ二つに折られた。
「遅い」
地面に着地していたサクラはそう呟いて、抜いた刀を鞘へ納刀する。そして顔を前方に向ける。
「……」
今の今まで、サクラは長く細い一本道を進んでいた。そんな彼女の目の前に広がっていたのは────明らかに塔の構造を無視した、巨大な空間であった。
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