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INTERLUDE9
INTERLUDE9
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比嘉と別れたあと、立花は警視庁本部庁舎を出ると、そのまま外務省へ向かった。その間も恋人の祖父江優樹菜のスマホや自宅固定電話に掛けてみるが、一向に繫がらなかった。
優樹菜の同僚外務省欧州局ロシア課の男性職員を呼び出し、事情を説明した。
「彼女に、電話が全く繫がらなくて」
「可笑しいな祖父江さんなら、今日は私用があるので定時で上がりますとのことで、午後六時十五分頃に帰った筈なんですけど。彼氏さんと一緒じゃなかったの?」
立花は、無言で首を横に振った。
「あの、私、仕事がまだ残っているので、これで失礼させて頂きます」
伝えると、男性職員は一礼し、立花の前から去った。
「どうしよう……」
立花はスマホを手に取り、その液晶画面を凝視した。
その姿を警備に当たる制服警官が訝し気に眺めていた。
立花の頭と肩を雨が叩いた。次第に雨脚が酷くなっていった。歩道を行き交う人々は、少しでも雨に濡れまいと鞄を傘代わりにして、地下鉄の出入り口へ向かって駆け出した。
立花は雨に濡れたスマホの液晶画面を指先でタップした。ずぶ濡れ状態で呼び出し音を聞く。だが、数分間待っても反応はなかった。諦めてスマホを切った。今度は、優樹菜の自宅マンションに電話を掛けてみた。結果は同じだった。
立花はスマホを片手に、濡れた街をとぼとぼと地下鉄の出入り口へ向かって歩き出した。
優樹菜の同僚外務省欧州局ロシア課の男性職員を呼び出し、事情を説明した。
「彼女に、電話が全く繫がらなくて」
「可笑しいな祖父江さんなら、今日は私用があるので定時で上がりますとのことで、午後六時十五分頃に帰った筈なんですけど。彼氏さんと一緒じゃなかったの?」
立花は、無言で首を横に振った。
「あの、私、仕事がまだ残っているので、これで失礼させて頂きます」
伝えると、男性職員は一礼し、立花の前から去った。
「どうしよう……」
立花はスマホを手に取り、その液晶画面を凝視した。
その姿を警備に当たる制服警官が訝し気に眺めていた。
立花の頭と肩を雨が叩いた。次第に雨脚が酷くなっていった。歩道を行き交う人々は、少しでも雨に濡れまいと鞄を傘代わりにして、地下鉄の出入り口へ向かって駆け出した。
立花は雨に濡れたスマホの液晶画面を指先でタップした。ずぶ濡れ状態で呼び出し音を聞く。だが、数分間待っても反応はなかった。諦めてスマホを切った。今度は、優樹菜の自宅マンションに電話を掛けてみた。結果は同じだった。
立花はスマホを片手に、濡れた街をとぼとぼと地下鉄の出入り口へ向かって歩き出した。
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