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第一章「ボーイ・ミーツ・ガール」
第5話 鶴木辺ユウトと愛園マナカ
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「おいクロ、どういうことだ。このマフラーには《認識阻害》の効果があるんじゃなかったのかよ。完全にバレてるじゃねーか。そろそろ暑くなってきたのに、わざわざマフラーしてる意味がないだろ。人民裁判にかけるぞ、こら」
「おかしいな、ちゃんと機能しているはずだよ。実際ほら、さっきの戦闘でも結構な音がしていたのに、誰も見向きもしないでしょ?」
クロのいうことはいちいちもっともだ。
路地裏で短時間だったとはいえ、派手に吹っ飛ばしたからな。
当然、かなり盛大に音もしていたはずなのに、野次馬の一人も来やしない。
つまり《認識阻害》は十二分に効果を発揮していた。
でも、それならなんでマナカには効いてないんだ?
機能してねーからばれたんじゃないのか?
くそっ、うだうだと考えていたってはじまらない。
こうなったら最後、ごり押しの力技で誤魔化すんだ――!
「ユウト? 誰だそれは? そんな名前の人間は知らないな。完全な人違いだ。俺はそんなヤツじゃない。よく見てみろ。完璧に別人だ。つまり人違いだ」
「よく見なくても毎日学校で顔を見てるんだから見間違えないよぉ。っていうか髪型も声も全く同じじゃんか。背格好もそっくりだし……雰囲気は全然違うけど」
「ほら違うだろう。つまり人違いだ」
「だから違わないってば。もう、わたしのこと判らない? 同じクラスの愛園マナカだよ。話したことはないけど、顔くらいは――」
「悪いが全く覚えがないな。つまり人違いだ」
「むむっ……!」
マナカが眉を寄せた。
さすがに今の言い方には、人がいいと評判のマナカも気を悪くしてしまったか……?
だがマナカには悪いが、俺にも事情というものがある。
ここは心を鬼にせねばならないのだ、許せ愛園マナカ。
「……その腰のポッケから顔出してる、ピンクの猫さんの携帯ストラップ。学校でもいつもつけてるよね?」
――俺はさりげなくストラップを手で隠した。
「や、今更隠したって遅いし……見覚えありまくりだし……あ、そうだ、学校と言えば、明日の数学Iで小テストあるらしいよ。ちーちゃんがね、職員室で先生が話してるのを聞いたんだって」
「なっ、抜き打ちテストか。数学の高峰先生は面倒見がよくて熱心で素晴らしい先生だが、抜き打ちテスト好きなのが玉に瑕だな――って、あ――」
「ほら、やっぱり鶴木辺くんじゃん」
「くっ、誘導尋問とは姑息な……可愛い見た目に似合わず、その本性たるや、なんという狡猾な女狐か――」
「ええぇ……? っていうか、わたし抜き打ちテストのこと教えてあげたような……?」
首元のクロが、やれやれとため息ついてるのが無性にイラッとした。
「くっ――まぁなんにせよ君が無事でよかった。ただ夜遊びは感心しないな」
「別に夜遊びしてたわけじゃないもん――」
そう言ってあざとくぷんすかしてみせる愛園マナカ。
くっ、さすがは学園のアイドル。
怒ってみせるその姿も、まごうことなき可愛いさだ。
芸術系の採点競技であれば、それだけで出来映え点がガッツリもらえてしまうことだろう。
「そうかわかった、何かやむにやまれぬ事情があるんだな。詮索はしない。事情も人生も人それぞれだ。人が歩んだ数だけ道ができるんだからな。人生いろいろ。偉い人も言っていた。そして君には君の人生があるように、俺には俺の生きる道がある。話は終わりだ。じゃあな、もう遅いからさっさと家に帰るんぞ」
話はここまでとばかりに俺は早口でまくし立てると、一方的に話を打ち切った。
「あ、ちょっと待って――」
後ろからはマナカの呼ぶ声が聞こえてくるが、誰が待つものか。
俺は窓枠や看板を利用して一瞬でビル屋上まで駆け上がると、そのまま夜の闇へと姿を隠す。
残されたのは少女だけ。
こうして。
闇に生きる俺、鶴木辺ユウトと、光の世界に住まう少女、愛園マナカの初めての出会いは、やや強引な形で幕を閉じたのだった。
「おかしいな、ちゃんと機能しているはずだよ。実際ほら、さっきの戦闘でも結構な音がしていたのに、誰も見向きもしないでしょ?」
クロのいうことはいちいちもっともだ。
路地裏で短時間だったとはいえ、派手に吹っ飛ばしたからな。
当然、かなり盛大に音もしていたはずなのに、野次馬の一人も来やしない。
つまり《認識阻害》は十二分に効果を発揮していた。
でも、それならなんでマナカには効いてないんだ?
機能してねーからばれたんじゃないのか?
くそっ、うだうだと考えていたってはじまらない。
こうなったら最後、ごり押しの力技で誤魔化すんだ――!
「ユウト? 誰だそれは? そんな名前の人間は知らないな。完全な人違いだ。俺はそんなヤツじゃない。よく見てみろ。完璧に別人だ。つまり人違いだ」
「よく見なくても毎日学校で顔を見てるんだから見間違えないよぉ。っていうか髪型も声も全く同じじゃんか。背格好もそっくりだし……雰囲気は全然違うけど」
「ほら違うだろう。つまり人違いだ」
「だから違わないってば。もう、わたしのこと判らない? 同じクラスの愛園マナカだよ。話したことはないけど、顔くらいは――」
「悪いが全く覚えがないな。つまり人違いだ」
「むむっ……!」
マナカが眉を寄せた。
さすがに今の言い方には、人がいいと評判のマナカも気を悪くしてしまったか……?
だがマナカには悪いが、俺にも事情というものがある。
ここは心を鬼にせねばならないのだ、許せ愛園マナカ。
「……その腰のポッケから顔出してる、ピンクの猫さんの携帯ストラップ。学校でもいつもつけてるよね?」
――俺はさりげなくストラップを手で隠した。
「や、今更隠したって遅いし……見覚えありまくりだし……あ、そうだ、学校と言えば、明日の数学Iで小テストあるらしいよ。ちーちゃんがね、職員室で先生が話してるのを聞いたんだって」
「なっ、抜き打ちテストか。数学の高峰先生は面倒見がよくて熱心で素晴らしい先生だが、抜き打ちテスト好きなのが玉に瑕だな――って、あ――」
「ほら、やっぱり鶴木辺くんじゃん」
「くっ、誘導尋問とは姑息な……可愛い見た目に似合わず、その本性たるや、なんという狡猾な女狐か――」
「ええぇ……? っていうか、わたし抜き打ちテストのこと教えてあげたような……?」
首元のクロが、やれやれとため息ついてるのが無性にイラッとした。
「くっ――まぁなんにせよ君が無事でよかった。ただ夜遊びは感心しないな」
「別に夜遊びしてたわけじゃないもん――」
そう言ってあざとくぷんすかしてみせる愛園マナカ。
くっ、さすがは学園のアイドル。
怒ってみせるその姿も、まごうことなき可愛いさだ。
芸術系の採点競技であれば、それだけで出来映え点がガッツリもらえてしまうことだろう。
「そうかわかった、何かやむにやまれぬ事情があるんだな。詮索はしない。事情も人生も人それぞれだ。人が歩んだ数だけ道ができるんだからな。人生いろいろ。偉い人も言っていた。そして君には君の人生があるように、俺には俺の生きる道がある。話は終わりだ。じゃあな、もう遅いからさっさと家に帰るんぞ」
話はここまでとばかりに俺は早口でまくし立てると、一方的に話を打ち切った。
「あ、ちょっと待って――」
後ろからはマナカの呼ぶ声が聞こえてくるが、誰が待つものか。
俺は窓枠や看板を利用して一瞬でビル屋上まで駆け上がると、そのまま夜の闇へと姿を隠す。
残されたのは少女だけ。
こうして。
闇に生きる俺、鶴木辺ユウトと、光の世界に住まう少女、愛園マナカの初めての出会いは、やや強引な形で幕を閉じたのだった。
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