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第三章「約束」
第37話 夢の続き
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翌朝、学校始まりの月曜日。
「ねぇねぇユウトくん、今度は水族館に行こうよ」
「…………」
なんだろうな。
「ほんと、なんなんだろうな?」
始業前、本鈴に備えてクラスメイトの多くが教室に戻っている中でのこの所業。
何がまずいって「今度『は』」はまずいだろ、『は』は。
まるでもう既に二人でどっかいったみたいじゃないか。
いや事実二人で動物園に行ったんだけれど、その言い方だとまるでカップルがデートしたみたいな響きがあるじゃないか。
本人にはそんな意図はないかもしれないが、少なくとも周囲はそう受け取るはずだ。
何度もいうが愛園マナカは学園のアイドルである。
その一挙手一投足は、多くの生徒の興味と羨望の的であり、もはや学内全ての人間によって常時監視されていると言っても過言ではないほどだ。
その中でのこの発言である。
察してほしい。
だいたい昨日の別れ際のあれはなんだったんだ?
ちょっと距離を置こう、みたいな雰囲気じゃなかったか?
一晩サンドバッグを蹴り続けて、ぐったりしながら明け方やっと布団に入って。
にもかかわらず、その後も頭の中がぐるぐるぐるぐるしてしまって。
最後は心身ともに疲れ果てて寝落ちした瞬間に、即目覚まし時計に叩き起こされた俺がバカみたいじゃないか。
「どういうつもりだ、おい」
もはや猫をかぶっている場合ではない。
早くなんとかしないと……。
「うーんとね、わたしといて楽しくなかったんなら、今度こそ楽しんでもらおうかなって思ったんだ。鳴かぬなら鳴かせてみよう――ほーほけきょ? あれ、なんだっけ?」
「ほととぎすだ、ほととぎす。豊臣秀吉な。いやそんなことはどうでもいい」
肘をまげて脇を寄せ、頬の横あたりで両手を握るその姿は――少し前に流行ったがんばルビィのポーズというのだろうか――本当にもう眼の中に入れても痛くないくらいに可愛かったのだが――、
「ちょ、なになに!? マナカと鶴木辺って、マジでそういう関係なの!?」
「どんなイイ男にも振り向かなかったマナカが、まさかのチョイス!」
「ステディなの!? アモーレなの!?」
「いやー、まさか難攻不落の鉄壁要塞、愛園マナカがこうもあっさり落ちるとはねぇ」
「どこまでいったの? 手つないだ? もうヤった!?」
きゃーという黄色い歓声とともに、女友達に一斉に囲まれて質問攻めにあうマナカ。
「あ、いや、その、そういう関係ってわけじゃ――ないわけでもないかもしれないかも的な――ごにょごにょ」
最終的に男女問わずクラスメイト全員に取り囲まれたマナカを横目に、俺はなんかもうあほらしくなって机に突っ伏していた。
マナカと違って特に親しいクラスメイトがいない俺には、こうするだけで誰も近寄ってはこない。
助けを求めるマナカの視線をなんとはなしに感じるが、完全に自業自得だ。
少しは苦労しやがれってなもんだ。
そんなことを思いながら顔を伏せた俺はしかし――笑っていたのだった。
こぼれたのはたぶん作り笑いではない、ごく自然な笑みで。
「なにが鳴かぬなら鳴かせてみようだ。ったく……俺の気も知らないで……でも、ありがとうな、マナカ」
誰にも聞こえないような小さな声で、俺は素直な気持ちを口にしていた。
なんていうかその、もう少しだけ、もう少しだけならこの甘い時間に浸っていてもいいかなって。
真正面からストレートに踏み込んできたマナカを見て、考えるのが馬鹿らしくなったというか、頭よりも心が先にそう感じていたのだった。
「ったく、ほんとすごい女の子なんだからさ……」
まるで、まるで――。
そうこうするうちに担任がやってきて、本鈴が鳴ってもなお浮足立ったままの教室を不思議そうに見渡していたのが印象的だった。
「ねぇねぇユウトくん、今度は水族館に行こうよ」
「…………」
なんだろうな。
「ほんと、なんなんだろうな?」
始業前、本鈴に備えてクラスメイトの多くが教室に戻っている中でのこの所業。
何がまずいって「今度『は』」はまずいだろ、『は』は。
まるでもう既に二人でどっかいったみたいじゃないか。
いや事実二人で動物園に行ったんだけれど、その言い方だとまるでカップルがデートしたみたいな響きがあるじゃないか。
本人にはそんな意図はないかもしれないが、少なくとも周囲はそう受け取るはずだ。
何度もいうが愛園マナカは学園のアイドルである。
その一挙手一投足は、多くの生徒の興味と羨望の的であり、もはや学内全ての人間によって常時監視されていると言っても過言ではないほどだ。
その中でのこの発言である。
察してほしい。
だいたい昨日の別れ際のあれはなんだったんだ?
ちょっと距離を置こう、みたいな雰囲気じゃなかったか?
一晩サンドバッグを蹴り続けて、ぐったりしながら明け方やっと布団に入って。
にもかかわらず、その後も頭の中がぐるぐるぐるぐるしてしまって。
最後は心身ともに疲れ果てて寝落ちした瞬間に、即目覚まし時計に叩き起こされた俺がバカみたいじゃないか。
「どういうつもりだ、おい」
もはや猫をかぶっている場合ではない。
早くなんとかしないと……。
「うーんとね、わたしといて楽しくなかったんなら、今度こそ楽しんでもらおうかなって思ったんだ。鳴かぬなら鳴かせてみよう――ほーほけきょ? あれ、なんだっけ?」
「ほととぎすだ、ほととぎす。豊臣秀吉な。いやそんなことはどうでもいい」
肘をまげて脇を寄せ、頬の横あたりで両手を握るその姿は――少し前に流行ったがんばルビィのポーズというのだろうか――本当にもう眼の中に入れても痛くないくらいに可愛かったのだが――、
「ちょ、なになに!? マナカと鶴木辺って、マジでそういう関係なの!?」
「どんなイイ男にも振り向かなかったマナカが、まさかのチョイス!」
「ステディなの!? アモーレなの!?」
「いやー、まさか難攻不落の鉄壁要塞、愛園マナカがこうもあっさり落ちるとはねぇ」
「どこまでいったの? 手つないだ? もうヤった!?」
きゃーという黄色い歓声とともに、女友達に一斉に囲まれて質問攻めにあうマナカ。
「あ、いや、その、そういう関係ってわけじゃ――ないわけでもないかもしれないかも的な――ごにょごにょ」
最終的に男女問わずクラスメイト全員に取り囲まれたマナカを横目に、俺はなんかもうあほらしくなって机に突っ伏していた。
マナカと違って特に親しいクラスメイトがいない俺には、こうするだけで誰も近寄ってはこない。
助けを求めるマナカの視線をなんとはなしに感じるが、完全に自業自得だ。
少しは苦労しやがれってなもんだ。
そんなことを思いながら顔を伏せた俺はしかし――笑っていたのだった。
こぼれたのはたぶん作り笑いではない、ごく自然な笑みで。
「なにが鳴かぬなら鳴かせてみようだ。ったく……俺の気も知らないで……でも、ありがとうな、マナカ」
誰にも聞こえないような小さな声で、俺は素直な気持ちを口にしていた。
なんていうかその、もう少しだけ、もう少しだけならこの甘い時間に浸っていてもいいかなって。
真正面からストレートに踏み込んできたマナカを見て、考えるのが馬鹿らしくなったというか、頭よりも心が先にそう感じていたのだった。
「ったく、ほんとすごい女の子なんだからさ……」
まるで、まるで――。
そうこうするうちに担任がやってきて、本鈴が鳴ってもなお浮足立ったままの教室を不思議そうに見渡していたのが印象的だった。
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