討滅の刃 -漆黒の復讐者- darker than "The BLUE"

マナシロカナタ✨ねこたま✨GCN文庫

文字の大きさ
37 / 83
第三章「約束」

第37話 夢の続き

しおりを挟む
 翌朝、学校始まりの月曜日。

「ねぇねぇユウトくん、今度は水族館に行こうよ」
「…………」

 なんだろうな。

「ほんと、なんなんだろうな?」

 始業前、本鈴に備えてクラスメイトの多くが教室に戻っている中でのこの所業。

 何がまずいって「今度『は』」はまずいだろ、『は』は。
 まるでもう既に二人でどっかいったみたいじゃないか。

 いや事実二人で動物園に行ったんだけれど、その言い方だとまるでカップルがデートしたみたいな響きがあるじゃないか。

 本人にはそんな意図はないかもしれないが、少なくとも周囲はそう受け取るはずだ。

 何度もいうが愛園マナカは学園のアイドルである。
 その一挙手一投足は、多くの生徒の興味と羨望の的であり、もはや学内全ての人間によって常時監視されていると言っても過言ではないほどだ。

 その中でのこの発言である。
 察してほしい。

 だいたい昨日の別れ際のあれはなんだったんだ?
 ちょっと距離を置こう、みたいな雰囲気じゃなかったか?

 一晩サンドバッグを蹴り続けて、ぐったりしながら明け方やっと布団に入って。
 にもかかわらず、その後も頭の中がぐるぐるぐるぐるしてしまって。
 最後は心身ともに疲れ果てて寝落ちした瞬間に、即目覚まし時計に叩き起こされた俺がバカみたいじゃないか。

「どういうつもりだ、おい」

 もはや猫をかぶっている場合ではない。
 早くなんとかしないと……。

「うーんとね、わたしといて楽しくなかったんなら、今度こそ楽しんでもらおうかなって思ったんだ。鳴かぬなら鳴かせてみよう――ほーほけきょ? あれ、なんだっけ?」

「ほととぎすだ、ほととぎす。豊臣秀吉な。いやそんなことはどうでもいい」

 肘をまげて脇を寄せ、頬の横あたりで両手を握るその姿は――少し前に流行ったがんばルビィのポーズというのだろうか――本当にもう眼の中に入れても痛くないくらいに可愛かったのだが――、

「ちょ、なになに!? マナカと鶴木辺つるぎべって、マジでそういう関係なの!?」
「どんなイイ男にも振り向かなかったマナカが、まさかのチョイス!」
「ステディなの!? アモーレなの!?」
「いやー、まさか難攻不落の鉄壁要塞、愛園マナカがこうもあっさり落ちるとはねぇ」
「どこまでいったの? 手つないだ? もうヤった!?」

 きゃーという黄色い歓声とともに、女友達に一斉に囲まれて質問攻めにあうマナカ。

「あ、いや、その、そういう関係ってわけじゃ――ないわけでもないかもしれないかも的な――ごにょごにょ」

 最終的に男女問わずクラスメイト全員に取り囲まれたマナカを横目に、俺はなんかもうあほらしくなって机に突っ伏していた。

 マナカと違って特に親しいクラスメイトがいない俺には、こうするだけで誰も近寄ってはこない。

 助けを求めるマナカの視線をなんとはなしに感じるが、完全に自業自得だ。
 少しは苦労しやがれってなもんだ。

 そんなことを思いながら顔を伏せた俺はしかし――笑っていたのだった。
 こぼれたのはたぶん作り笑いではない、ごく自然な笑みで。

「なにが鳴かぬなら鳴かせてみようだ。ったく……俺の気も知らないで……でも、ありがとうな、マナカ」
 誰にも聞こえないような小さな声で、俺は素直な気持ちを口にしていた。

 なんていうかその、もう少しだけ、もう少しだけならこの甘い時間に浸っていてもいいかなって。
 真正面からストレートに踏み込んできたマナカを見て、考えるのが馬鹿らしくなったというか、頭よりも心が先にそう感じていたのだった。

「ったく、ほんとすごい女の子なんだからさ……」
 まるで、まるで――。


 そうこうするうちに担任がやってきて、本鈴が鳴ってもなお浮足立ったままの教室を不思議そうに見渡していたのが印象的だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

処理中です...