討滅の刃 -漆黒の復讐者- darker than "The BLUE"

マナシロカナタ✨ねこたま✨GCN文庫

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第三章「約束」

第39話 約束

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「えー、なんでよー! ユウトくんって運動神経抜群じゃん。絶対に声かかるって。ね、一緒に出よーよ、出よー、出よー、出よー、出よー」

 言いながら俺の腕をぐいぐいとひっぱってくるマナカだが、

「残念ながら俺の体育の成績は並以下だ。普段は極力目立たないようにしてるからな。よって声はかからない」

「えー、もったいないよ。っていうか授業で手抜きしたらダメだよぉ。学生の本文は学業なんだよ? まったくぅ、そんな悪いユウトくんには罰を与なければいけませんよね。ユウトくんは球技大会に立候補してください。これは先生との約束だぞ?」

「誰が誰の先生だ。何度も言っているが、俺はあまり目立ちたくないんだ。だからそういうのはやめてくれ」

「夜な夜な《想念獣》と戦ってるからでしょ? それに時間が取られるから、なるべく友達もつくらないようにしてるんだよね?」

「それは――」

 パッと見、何も考えてないように見えて、実のところほんとよく見てやがる――。

「うーん、でもさ? 学校生活は学校生活で、少しは楽しんでもいいんじゃないかな? せっかく学校に来てるんだし」

「俺は弱いから、一つのことしか選べないんだよ――」

「えっと、ごめん。声が小さくてよく聞こえなかったかも」

「なんでもない――学校に通ってるのは学生の身分が便利だから、って言ったんだ」

「――身分?」

「未成年が仕事してるわけでもなく学校にも通ってないとなると、それだけで色々と悪目立ちするだろ? その点、高校生って肩書きはいろいろと便利なんだよ。義務教育じゃないからわりかし融通利くしな」

「うーん、でもそれってなんかさみしくない?」

「それこそ人それぞれだろ」

「あ、そういうことならいいこと思いついたかも!」

 マナカがポンと手を打った。
 正直いやな予感しかしてこない。

「これよりユウトくんの高校生活を改善した委員会を結成します! 僭越せんえつながら会長はこのわたし。そしてメンバーはユウトくんです」

「だから、していらないんだよ。っていうか俺の話を聞けよ、ここまでの会話はなんだったんだ」

「ちゃんと聞いてるってば。聞いたうえで、わたしは提案しているのです」

 そういやマナカはこういう女の子だったな。
 普段はのほほんとあどけない笑顔を振りまいているくせに、ここぞという時にはピシャリと本筋に切り込んできて譲らない、一本筋の通った女の子。

「ああもうわかった。約束する。球技大会には立候補しよう。でも選ばれなかったときはどうしようもないからな? それはそうとして――」

 俺はこほんと軽く咳払いをすると、居住まいを正した。

「昨日は悪かったな」

「ううん、ユウトくんは悪くないよ。わたしこそ、急にあんなこといいだしてごめんなさいでした。なんかね、ちょっと悔しかったんだ」

「昨日の動物園の、いったいどこに悔しがる要素があったんだ?」

 デビューしたての子ペンギンの餌やりショーは、文句なしに可愛かったはずだ。
 マナカのスマホで撮影してもらったから、また今度見せてもらおう。

「だってさ、わたしには見せない本当のユウトくんを、動物さんたちには見せてたんだもん。そりゃ悔しくもなるってなもんですよ。だから絶対、今度はわたしにもあの笑顔を向けさせるの。それがわたしの当面の目標なのです」

 そう言って、えへへと笑うマナカは、それはそれは可愛くて。

 それを見て、なぜだか俺は胸が締め付けられそうな気持ちになった。
 決して嫌ではない、居心地のいい――だけどもやもやとした気持ち。

 この気持ちはいったい何なのだろうと深く考えかけて、しかし俺はかぶりを振った。

 なぜなら俺とマナカの関係は一時的なものだから。
 俺は復讐のために闇を生きる討滅の刃――仮初かりそめの日常に深入りする必要はないんだ。

 俺は自分の中に芽生えつつあった「ある気持ち」にフタをして、見て見ぬふりを決め込んだのだった。
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