73 / 83
―最終章―
第73話 ほとばしる力
しおりを挟む
「……なぁ、クロ」
ここまでの説明を聞いていて、俺の心にひとつの疑問が浮かんでいた。
「どうしておまえは《想念》だけでなく、剣部のことについてもそんなに詳しいんだ?」
「ぇ――」
クロは4年前のあの時、恐怖に駆られた俺が生き逃げるために生みだした、比較的新しい《想念》のはずだ。
だっていうのに俺も知らないような剣部の開祖にまつわる話を――おそらくこれは当主のみに代々口伝されるという秘中の秘の一つだ――どうしてクロが知っているんだ?
「ボクはユウトの生み出した《想念》――いや、ボクは、ボクは――?」
クロが何かに思い至ろうとしかけたその時――、
「エクセレント! マーベラス! 素晴らしい! これぞ我の求めていたものだ! 《弱者の至る最強》と《最強たる最強》が交差した、まさに究極至高の《最強》の誕生というわけだ!」
ざっくり横やりが入りやがった。
「はぁ――。そういやいたな、お前」
「ユウトくん……」
さっき俺が散々凹られたのを思い出したのか、少し不安げに身体を寄せてくるマナカに、
「マナカ、ちょっと待ってろ。今からそいつとケリつけてくるからさ」
言って、俺は安心させるようにそっとその頭を撫でてやった。
「でも、大丈夫なの?」
それでもまだ不安の色を隠そうとしないマナカだが、
「ああ、今の俺は一人じゃない。俺にはマナカ、お前の心がついていてくれるんだ。だから負けるなんてありえないさ。安心して俺が勝つのを見守っていてくれ」
「……うん、わかった。ユウトくんが言うなら、今度こそ待ってる」
「オッケー、いいこだ」
もう一度、軽く頭を撫でてやると、マナカは今度は不安なんて全くなくて、嬉しそうに目を細めてくれた。
そんなマナカのさらさらだった天使のような髪には、所々血がついて固まっていて。
そんな風にさせてしまった弱い自分に対して、ふつふつと怒りが沸いてきた。
そうして触れ合っていたマナカを下がらせると、俺はかつての仇敵へと向き直った。
「よっ、待たせたな《蒼混じりの焔》」
そして軽く挨拶するみたいに俺は言葉をかける。
もう俺の中に気負いとか暗い情念は残ってはいないのだ。
ただ《正義の味方》としてこれからお前を討滅するだけさ。
「構わないさ、好物はとっておくタイプだからね。さぁそれではお楽しみの、メインディッシュといこうじゃないか――!」
そう言って構えをとる《蒼混じりの焔》。
不可視のために見えないが、《絶対剣域》も展開したのだろう。
だが――、
「あのさ? 悪いんだけど、お前の役目はもう終わたんだ。だからここからはフィナーレ、俺による一方的な幕引きだ」
宣言と同時に俺はクロと一体化すると、そのまま即、最大出力でクロの力を解放する。
そのまま真っすぐ《蒼混じりの焔》へと突っ込んでいくと、
「《螺旋槍》!」
強烈な一撃で《蒼混じりの焔》を殴り飛ばした。
「なにィ――っ!?」
渾身の右ストレートが《蒼混じりの焔》の顔面を捉えると、ゴリっという打撃感とともに、その巨体を文字通り吹き飛ばした。
「なっ、《絶対剣域》が反応しない――だと!?」
驚きながらも、すぐさま体勢を立て直す《蒼混じりの焔》。
しかし実は今の一撃に関しては、俺の方もやや困惑気味だった。
「うーむ、今のはちょっと踏み込み過ぎたか」
マナカから引き抜いた、まるで小さな太陽の如き膨大な力――《紅蓮の心剣》によって、俺の身体能力は大幅にブーストされていた。
まるで特大のターボチャージャーでも積んだかのように、身体中に猛烈な力がみなぎっているのだ。
今のはその膨大な力を完全に持て余してしまい、突っ込み過ぎてインパクトが少しずれてしまっていた。
さらにトラウマをのり越えたことで可能となった、相手の認識に強烈に干渉するクロという《想念》の全力解放だ。
《絶対剣域》すら発動させない、世界の理すらも欺く認識阻害の力。
今の一発は正直、二つの力の凄まじさに俺自身が振り回された感じだった。
それにしても、
「クロ、今まで悪かったな」
俺はそっとつぶやいた。
「お前はこんなにも半端ない力を持っていたっていうのにさ」
俺の心が弱かったせいでその力のほんのごくごく一部だけしか、使ってやることができなかったんだな。
「でも今のである程度の感覚は掴めたよ。長引かせるのも馬鹿らしい。次で決めるぜ――」
言って俺は両の拳を握り込む。
見据える先には《蒼混じりの焔》。
しかし仇敵を前にしても、俺の心は晴れ渡る青空のごとく穏やかだった。
トラウマを吹っ切れたこともある。
しかし一番の要因は、
「もうお前は俺の相手じゃねぇんだよ」
それは確信ともいえる実感だった。
ここまでの説明を聞いていて、俺の心にひとつの疑問が浮かんでいた。
「どうしておまえは《想念》だけでなく、剣部のことについてもそんなに詳しいんだ?」
「ぇ――」
クロは4年前のあの時、恐怖に駆られた俺が生き逃げるために生みだした、比較的新しい《想念》のはずだ。
だっていうのに俺も知らないような剣部の開祖にまつわる話を――おそらくこれは当主のみに代々口伝されるという秘中の秘の一つだ――どうしてクロが知っているんだ?
「ボクはユウトの生み出した《想念》――いや、ボクは、ボクは――?」
クロが何かに思い至ろうとしかけたその時――、
「エクセレント! マーベラス! 素晴らしい! これぞ我の求めていたものだ! 《弱者の至る最強》と《最強たる最強》が交差した、まさに究極至高の《最強》の誕生というわけだ!」
ざっくり横やりが入りやがった。
「はぁ――。そういやいたな、お前」
「ユウトくん……」
さっき俺が散々凹られたのを思い出したのか、少し不安げに身体を寄せてくるマナカに、
「マナカ、ちょっと待ってろ。今からそいつとケリつけてくるからさ」
言って、俺は安心させるようにそっとその頭を撫でてやった。
「でも、大丈夫なの?」
それでもまだ不安の色を隠そうとしないマナカだが、
「ああ、今の俺は一人じゃない。俺にはマナカ、お前の心がついていてくれるんだ。だから負けるなんてありえないさ。安心して俺が勝つのを見守っていてくれ」
「……うん、わかった。ユウトくんが言うなら、今度こそ待ってる」
「オッケー、いいこだ」
もう一度、軽く頭を撫でてやると、マナカは今度は不安なんて全くなくて、嬉しそうに目を細めてくれた。
そんなマナカのさらさらだった天使のような髪には、所々血がついて固まっていて。
そんな風にさせてしまった弱い自分に対して、ふつふつと怒りが沸いてきた。
そうして触れ合っていたマナカを下がらせると、俺はかつての仇敵へと向き直った。
「よっ、待たせたな《蒼混じりの焔》」
そして軽く挨拶するみたいに俺は言葉をかける。
もう俺の中に気負いとか暗い情念は残ってはいないのだ。
ただ《正義の味方》としてこれからお前を討滅するだけさ。
「構わないさ、好物はとっておくタイプだからね。さぁそれではお楽しみの、メインディッシュといこうじゃないか――!」
そう言って構えをとる《蒼混じりの焔》。
不可視のために見えないが、《絶対剣域》も展開したのだろう。
だが――、
「あのさ? 悪いんだけど、お前の役目はもう終わたんだ。だからここからはフィナーレ、俺による一方的な幕引きだ」
宣言と同時に俺はクロと一体化すると、そのまま即、最大出力でクロの力を解放する。
そのまま真っすぐ《蒼混じりの焔》へと突っ込んでいくと、
「《螺旋槍》!」
強烈な一撃で《蒼混じりの焔》を殴り飛ばした。
「なにィ――っ!?」
渾身の右ストレートが《蒼混じりの焔》の顔面を捉えると、ゴリっという打撃感とともに、その巨体を文字通り吹き飛ばした。
「なっ、《絶対剣域》が反応しない――だと!?」
驚きながらも、すぐさま体勢を立て直す《蒼混じりの焔》。
しかし実は今の一撃に関しては、俺の方もやや困惑気味だった。
「うーむ、今のはちょっと踏み込み過ぎたか」
マナカから引き抜いた、まるで小さな太陽の如き膨大な力――《紅蓮の心剣》によって、俺の身体能力は大幅にブーストされていた。
まるで特大のターボチャージャーでも積んだかのように、身体中に猛烈な力がみなぎっているのだ。
今のはその膨大な力を完全に持て余してしまい、突っ込み過ぎてインパクトが少しずれてしまっていた。
さらにトラウマをのり越えたことで可能となった、相手の認識に強烈に干渉するクロという《想念》の全力解放だ。
《絶対剣域》すら発動させない、世界の理すらも欺く認識阻害の力。
今の一発は正直、二つの力の凄まじさに俺自身が振り回された感じだった。
それにしても、
「クロ、今まで悪かったな」
俺はそっとつぶやいた。
「お前はこんなにも半端ない力を持っていたっていうのにさ」
俺の心が弱かったせいでその力のほんのごくごく一部だけしか、使ってやることができなかったんだな。
「でも今のである程度の感覚は掴めたよ。長引かせるのも馬鹿らしい。次で決めるぜ――」
言って俺は両の拳を握り込む。
見据える先には《蒼混じりの焔》。
しかし仇敵を前にしても、俺の心は晴れ渡る青空のごとく穏やかだった。
トラウマを吹っ切れたこともある。
しかし一番の要因は、
「もうお前は俺の相手じゃねぇんだよ」
それは確信ともいえる実感だった。
0
あなたにおすすめの小説
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~
ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。
休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。
啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。
異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。
これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる