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第4章

第66話 ルミナSIDE(1)

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◇ルミナSIDE◇

「十分いたぶって楽しめたしー、そろそろいいかなー。ってわけだから勇者様、もう死んじゃっていいよ。サンドバッグ役お疲れさま、キャハッ☆」

 地に倒れ伏す私が見上げる先で、アカネはそう言うと、ケラケラと不快で下品な笑みを浮かべました。

 しかし今の私には、何をどうすることもできませんでした。

 体力も魔力も既に限界に達していて、抵抗どころかもはや立ち上がることすらできません。
 私の命運は今まさに、尽きようとしていました。

 マオくんを守ろうとしたせいで、上手く戦えなかった。
 聖剣がなかったから、本来の力を出し切れなかった。

 どんな言い訳も、意味をなしはしません。
 勇者は結果が全てなのですから。

 負けることが許されない勇者が負けてしまった。
 その結果を私はただただ恥じていました。

 しかもアカネはおそらく、魔王ブラックフィールドではありません。

 私も最初は、彼女こそが魔王ブラックフィールドの転生体だと思っていたのですが。
 戦っているうちに、前世で魔王ブラックフィールドが見せた魔力波動とあまりに違っていることに、気がついたのです。

 あまりに薄汚い魔力波動。
 これと比べれば、魔王ブラックフィールドの魔力にはどことなく気高さすら感じるほどです。

 魔王と戦って負けるならまだしも、そうでない相手に負けるなんて――。
 言いようのない悔しさが込み上げてきました。

 地べたを舐めながら悔しさを噛み殺していた私に、

「最後は焼き殺してあげるね☆ こんがりウェルダンの焼き勇者の出来上がり、ってね? キャハッ、ウケるー☆」

 アカネがフレイム・ランスを発動し、アカネの眼前にまたもや10本の炎の槍が顕現しました。
 あれが発射された瞬間に私の命は終わります。

 すぐに撃たないのは、もう私が動けないと分かっているから、この期に及んで最後の絶望感を与えようとしているからでしょう。

 性格が本当に終わっています。
 はっきり言ってクズです。
 いったい何を食べたらこんな性格に育つのでしょうか?
 甚だ疑問です。

 しかし動かなければと思っても、もうどれだけやっても私の身体は動いてくれませんでした。

 それだけでなく、意識も遠のいてきました。
 もはや気力だけでなんとか持ちこたえている状況です。

 私はここで死ぬ。
 その覚悟を決めた時でした――声が聞こえてきたのは。 

「やれやれ、なんとか上手くやれていたんだけどな。お前のせいで俺の計画は全部台無しだ。正体もバレた。なんてことをしてくれたんだ、アカネ」

 マオくんの聞き慣れた声が聴こえてきたのです。

 ですが普段の明るい声とは違って、その声は低く、厳かな気配を漂わせていました。

 上手くやれていた?
 お前のせいで台無し?
 正体もバレた?

 なんですかそれは?
 その言い方だと、まるで自分が魔王ブラックフィールドだと言っているみたいじゃないですか。

 いえ、言葉よりもなによりも。
 マオくんから発せられる強大な闇の魔力に、私は驚愕を禁じ得ませんでした。

 なぜならそれは紛れもなく、魔王ブラックフィールドの魔力波動だったからです。

 マオくんと体育館裏で初めて話した時に、ほんの少しだけ感じた魔王の気配。
 あの時は勘違いだと思ったそれが、よもや正しかったなんて――!

 まさか本当にマオくんが魔王ブラックフィールドだったなんて――!!
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