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第2章 高校デビュー
第8話「はい、クラス委員に立候補します!」
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「さーてと。自己紹介も終わったから、最後にクラス委員を決めましょうか。誰か立候補したい人はいるかな?」
鈴木先生の言葉に、自己紹介でちょっと盛り上がっていた教室内がしーんと静まり返った。
「あははは……。クラス委員はクラスの雑用や生徒会のお手伝いといった面倒な役割がほとんどだけど、社会経験の練習にもなるし、内申点にも加算されるから、学校推薦やAO入試を狙ってるならやっておいて損はないわよ? 文化祭とかのイベント前以外は、言うほど忙しくもないし」
鈴木先生が、これでもかと明け透けにクラス委員のメリットを強調する。
しかし高校に入って早々、3年後の大学受験におけるメリットを話されても、入りたてホヤホヤの新入生の心には響くことはないだろう。
しかもイベント前は忙しく、大多数が受けるであろう一般入試にはまったく関係ないと言っているに等しいわけで。
鈴木先生の「美味しい話」を聞いてもクラスの誰も手を上げない中、
(大丈夫。昔はやれたじゃないか。クラス委員なんて、勉強も運動もカッコよさも関係ないんだ。だから立候補しても大丈夫。今の僕にだってやれる。ビビるな神崎暁斗。ひまりちゃんの隣で輝いていられるような、いい男になりたいんだろ――!)
僕は一度、大きく深呼吸すると、意を決して手を上げた。
「はい、クラス委員に立候補します!」
元気よく、ハキハキと。
あの頃の、ひまりちゃんが憧れた僕のように!
「君は、えぇっとお兄ちゃんの方の神崎ね。うん、やる気があるみたいで何よりよ。さて、他に立候補はいるかしら? なければクラス委員は神崎兄にしてもらうことになるけれど?」
鈴木先生の言葉に、しかしクラスの誰も反応はしない。
みんなの心境としては、面倒くさいだけのクラス委員に立候補してくれてラッキーってなもんだろう。
「じゃあクラス委員は神崎兄で決定ね。1年間、よろしく頼むわよ」
「はい!」
僕はこれまた元気良く返事を返した。
ひまりちゃんのに相応しい、いい男になるための第一歩として、まずはクラス委員としてこれから一年、頑張ろう!
「じゃあ続いてクラス委員補佐を決めるわね。クラス委員が男子だから、こちらは女子にやってもらうことになるわ。念のために説明しておくと、これは男女の違いから生じる微妙な事案にスムーズに対応できるようとの配慮であって、それ以上の意味はないからね」
最近では事あるごとに聞く耳タコの説明だが、これを省くといろいろ問題になるらしい。
学校の先生も大変だ。
「じゃあ立候補はいるかしら」
「私やります! 立候補します!」
すかさずひまりちゃんが手を上げた。
その途端に男子たちがざわめき始める。
「えー、神崎さんが補佐やるなら、俺がクラス委員をやってもいいぜー」
「先生、俺、今からクラス委員に立候補してもいいっすか?」
「俺もなんかやる気出てきたかもっす!」
好き放題言い始めた男子たちに、しかし先生はぴしゃりと言った。
「残念ながら、却下します。社会において正常なプロセスで決定したことは、原則的に覆りません」
「「「そんな~」」」
その言葉に、盛り上がっていた男子たちががっくりと肩を落とした。
「話が逸れましたが、他にクラス委員補佐に立候補する人はいませんか? はい、いませんね。ではクラス委員補佐は神崎ひまりさんに決まりました」
「やった♪」
クラス委員補佐に決まって、小さくガッツポーズをするひまりちゃん。
「じゃあ今日はこれでやることは全て終わりよ。神崎兄妹は、クラス委員の簡単な説明をするから、終わった後に少しだけ残ってもらえるかしら」
「分かりました」
「はいっ♪」
「ではまず初めての仕事として、神崎兄には終礼の号令をお願いするわね」
先生とクラスメイト達の視線が僕に集まる。
うぐっ。
久しぶりに注目を浴びたことで緊張感を覚えるが、ああもう! こんなことでいちいちビビるなっての。
ひまりちゃんの隣に立ちたいんだろ?
だったらちょっと視線が集まったくらいで、ヒヨってられるかよ!
「起立、気を付け、礼!」
僕は緊張感をグッと飲み込むと、ハキハキと号令した。
「「「「「ありがとうございました」」」」」
もちろんクラス委員となった僕の号令がスルーされるなんてことはなく、クラス全員が立ち上がって礼をして、これで入学式の一連の学校行事は全て終了した。
ということで僕はクラス委員に。
ひまりちゃんはクラス委員補佐になった。
鈴木先生の言葉に、自己紹介でちょっと盛り上がっていた教室内がしーんと静まり返った。
「あははは……。クラス委員はクラスの雑用や生徒会のお手伝いといった面倒な役割がほとんどだけど、社会経験の練習にもなるし、内申点にも加算されるから、学校推薦やAO入試を狙ってるならやっておいて損はないわよ? 文化祭とかのイベント前以外は、言うほど忙しくもないし」
鈴木先生が、これでもかと明け透けにクラス委員のメリットを強調する。
しかし高校に入って早々、3年後の大学受験におけるメリットを話されても、入りたてホヤホヤの新入生の心には響くことはないだろう。
しかもイベント前は忙しく、大多数が受けるであろう一般入試にはまったく関係ないと言っているに等しいわけで。
鈴木先生の「美味しい話」を聞いてもクラスの誰も手を上げない中、
(大丈夫。昔はやれたじゃないか。クラス委員なんて、勉強も運動もカッコよさも関係ないんだ。だから立候補しても大丈夫。今の僕にだってやれる。ビビるな神崎暁斗。ひまりちゃんの隣で輝いていられるような、いい男になりたいんだろ――!)
僕は一度、大きく深呼吸すると、意を決して手を上げた。
「はい、クラス委員に立候補します!」
元気よく、ハキハキと。
あの頃の、ひまりちゃんが憧れた僕のように!
「君は、えぇっとお兄ちゃんの方の神崎ね。うん、やる気があるみたいで何よりよ。さて、他に立候補はいるかしら? なければクラス委員は神崎兄にしてもらうことになるけれど?」
鈴木先生の言葉に、しかしクラスの誰も反応はしない。
みんなの心境としては、面倒くさいだけのクラス委員に立候補してくれてラッキーってなもんだろう。
「じゃあクラス委員は神崎兄で決定ね。1年間、よろしく頼むわよ」
「はい!」
僕はこれまた元気良く返事を返した。
ひまりちゃんのに相応しい、いい男になるための第一歩として、まずはクラス委員としてこれから一年、頑張ろう!
「じゃあ続いてクラス委員補佐を決めるわね。クラス委員が男子だから、こちらは女子にやってもらうことになるわ。念のために説明しておくと、これは男女の違いから生じる微妙な事案にスムーズに対応できるようとの配慮であって、それ以上の意味はないからね」
最近では事あるごとに聞く耳タコの説明だが、これを省くといろいろ問題になるらしい。
学校の先生も大変だ。
「じゃあ立候補はいるかしら」
「私やります! 立候補します!」
すかさずひまりちゃんが手を上げた。
その途端に男子たちがざわめき始める。
「えー、神崎さんが補佐やるなら、俺がクラス委員をやってもいいぜー」
「先生、俺、今からクラス委員に立候補してもいいっすか?」
「俺もなんかやる気出てきたかもっす!」
好き放題言い始めた男子たちに、しかし先生はぴしゃりと言った。
「残念ながら、却下します。社会において正常なプロセスで決定したことは、原則的に覆りません」
「「「そんな~」」」
その言葉に、盛り上がっていた男子たちががっくりと肩を落とした。
「話が逸れましたが、他にクラス委員補佐に立候補する人はいませんか? はい、いませんね。ではクラス委員補佐は神崎ひまりさんに決まりました」
「やった♪」
クラス委員補佐に決まって、小さくガッツポーズをするひまりちゃん。
「じゃあ今日はこれでやることは全て終わりよ。神崎兄妹は、クラス委員の簡単な説明をするから、終わった後に少しだけ残ってもらえるかしら」
「分かりました」
「はいっ♪」
「ではまず初めての仕事として、神崎兄には終礼の号令をお願いするわね」
先生とクラスメイト達の視線が僕に集まる。
うぐっ。
久しぶりに注目を浴びたことで緊張感を覚えるが、ああもう! こんなことでいちいちビビるなっての。
ひまりちゃんの隣に立ちたいんだろ?
だったらちょっと視線が集まったくらいで、ヒヨってられるかよ!
「起立、気を付け、礼!」
僕は緊張感をグッと飲み込むと、ハキハキと号令した。
「「「「「ありがとうございました」」」」」
もちろんクラス委員となった僕の号令がスルーされるなんてことはなく、クラス全員が立ち上がって礼をして、これで入学式の一連の学校行事は全て終了した。
ということで僕はクラス委員に。
ひまりちゃんはクラス委員補佐になった。
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