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第2章 高校デビュー
第10話 上白石雪希
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「ねぇ、アキト君。あれって同じクラスの子だよね? えっと、たしか上白石雪希《かみしらいし・ゆき》さん」
ひまりちゃんが少し先を、こそっと指差しながら言った。
「だよな」
さっきのホームルームで行われた自己紹介で、すごく珍しい名字だったのもあって、僕も名前を記憶していた。
黒髪ぱっつんがものすごく似合う、日本人形みたいに物静かで美人な女の子だ。
「もしかしてナンパされてない? しかも困ってそうな感じかも」
「やっぱりそう見えるよな」
上白石さんはチャラそうな男に手首を捕まれていた。
制服を着ているので向こうも高校生だろうか。
しかしブレザー制服をキッチリと身に着けている上白石さんとは対照的に、チャラ男はズボンはだぼだぼの腰パン、シャツは全出し、ネクタイはだるだる。
品のない金のネックレス&金のピアス。
ダラっと着崩してオラついているのがイケてると思っていそうな、いかにも軽薄な男だった。
僕とは価値観が違いすぎるので、あまり友達にはなりたくないタイプかな。
「上白石さん、美人だもんね。上品っていうか、本物のお姫様みたい」
「日本人形みたいな静謐とした綺麗さがあるよな」
「髪もモデルさんみたいにサラサラだよね」
「濡れ羽色って言うのかな? つやつやで、キューティクル感がすごいよな」
「……」
「でも嫌がってるのは分かるだろうに、ほんと美人は大変だよなぁ」
ひまりちゃんも可愛いかったので、これまでに男に言い寄られることも多かった。
そういう時、決まってひまりちゃんは僕にべったりくっついてきて、お前なんかお呼びじゃないアピールをしてきた。
僕としては、そういう過去のアレコレも含めて言ったつもりだったのだが、
「ふーん?」
「な、なんでそんな、露骨に不満そうな顔で見てくるんだよ?」
ひまりちゃんはとても不満そうな顔で僕を見つめていた。
「別にー? アキトくんはああいう清楚でお上品なお姫様タイプが好みなんだなーって思っただけー」
「そ、そんなことは言ってないだろ? あくまで一般論であってだな」
「……ま、そういうことにしておいてあげるね。それよりアキトくん」
「分かってる。助けないわけにはいかないよな」
「できそう?」
「そうだな、友達のフリ作戦で行けそうかな? でも念には念を入れて、ひまりちゃんは離れたところで隠れて監視して、何かあったら迷わず駅員さんに通報してくれ」
「二段構えだね。合点承知、任せて!」
「じゃあ行ってくる」
「頑張ってね、アキトくん!」
「ああ!」
僕はそれとなくひまりちゃんをチャラ男から遠ざけると、チャラ男に絡まれている上白石さんのところへと向かった。
「大丈夫。過去にひまりちゃんにアプローチしてくる男子たちを撃退してきたのと、何も変わらないだろ? そもそも駅前なんて目立つ場所じゃ、向こうだって騒動は起こしたくないはずなんだ」
歩きながら、緊張する自分に言い聞かせるように僕はひとり言をつぶやく。
「何も起きはしないし、万が一なにかあってもひまりちゃんのサポートだってある。昔のイキってた頃の僕でなくとも、これはイージー過ぎるミッションさ。だから緊張するな僕。ビビらずにGOだ」
ひまりちゃんが少し先を、こそっと指差しながら言った。
「だよな」
さっきのホームルームで行われた自己紹介で、すごく珍しい名字だったのもあって、僕も名前を記憶していた。
黒髪ぱっつんがものすごく似合う、日本人形みたいに物静かで美人な女の子だ。
「もしかしてナンパされてない? しかも困ってそうな感じかも」
「やっぱりそう見えるよな」
上白石さんはチャラそうな男に手首を捕まれていた。
制服を着ているので向こうも高校生だろうか。
しかしブレザー制服をキッチリと身に着けている上白石さんとは対照的に、チャラ男はズボンはだぼだぼの腰パン、シャツは全出し、ネクタイはだるだる。
品のない金のネックレス&金のピアス。
ダラっと着崩してオラついているのがイケてると思っていそうな、いかにも軽薄な男だった。
僕とは価値観が違いすぎるので、あまり友達にはなりたくないタイプかな。
「上白石さん、美人だもんね。上品っていうか、本物のお姫様みたい」
「日本人形みたいな静謐とした綺麗さがあるよな」
「髪もモデルさんみたいにサラサラだよね」
「濡れ羽色って言うのかな? つやつやで、キューティクル感がすごいよな」
「……」
「でも嫌がってるのは分かるだろうに、ほんと美人は大変だよなぁ」
ひまりちゃんも可愛いかったので、これまでに男に言い寄られることも多かった。
そういう時、決まってひまりちゃんは僕にべったりくっついてきて、お前なんかお呼びじゃないアピールをしてきた。
僕としては、そういう過去のアレコレも含めて言ったつもりだったのだが、
「ふーん?」
「な、なんでそんな、露骨に不満そうな顔で見てくるんだよ?」
ひまりちゃんはとても不満そうな顔で僕を見つめていた。
「別にー? アキトくんはああいう清楚でお上品なお姫様タイプが好みなんだなーって思っただけー」
「そ、そんなことは言ってないだろ? あくまで一般論であってだな」
「……ま、そういうことにしておいてあげるね。それよりアキトくん」
「分かってる。助けないわけにはいかないよな」
「できそう?」
「そうだな、友達のフリ作戦で行けそうかな? でも念には念を入れて、ひまりちゃんは離れたところで隠れて監視して、何かあったら迷わず駅員さんに通報してくれ」
「二段構えだね。合点承知、任せて!」
「じゃあ行ってくる」
「頑張ってね、アキトくん!」
「ああ!」
僕はそれとなくひまりちゃんをチャラ男から遠ざけると、チャラ男に絡まれている上白石さんのところへと向かった。
「大丈夫。過去にひまりちゃんにアプローチしてくる男子たちを撃退してきたのと、何も変わらないだろ? そもそも駅前なんて目立つ場所じゃ、向こうだって騒動は起こしたくないはずなんだ」
歩きながら、緊張する自分に言い聞かせるように僕はひとり言をつぶやく。
「何も起きはしないし、万が一なにかあってもひまりちゃんのサポートだってある。昔のイキってた頃の僕でなくとも、これはイージー過ぎるミッションさ。だから緊張するな僕。ビビらずにGOだ」
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