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第6章 優香のお料理大作戦

第91話 真似っこは禁止だもん!

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「いやいや。いいよそんなの。クラスメイトに家政婦みたいなことをさせるだなんて、どう考えても普通じゃないし」

 もちろん俺は固辞したんだけど――。

「ううん、私が良くないから」

「……なんで優香が良くないんだ?」
 優香の謎な主張に、俺は思わず首を傾げてしまう。

「だってそうでしょ? 疲れていてちょっと熱っぽい蒼太くんを一人で放っておいて倒れられでもしたら、私、自分のことを一生許せなくなっちゃうもん」

「倒れるなんて、そんな大げさな」

 あと熱っぽいのは風邪とかじゃまったくなくて、優香がキスしてくるのかと思って恥ずかしさで身体が熱くなっただけだから、心配する必要はマジでないからな?
 言えないけど。

「大げさじゃないもん。本当に心配なんだもん。だからね? 蒼太くんの晩ご飯を作らせてもらえないかな?」

「気持ちは嬉しいけど……それでもやっぱり悪いよ。せっかくのテスト明けの週末なのに」

 しかも俺、多分ご飯を作ってもらっている間は寝ちゃっていると思うしさ。
 ぐっすり眠りこけてる間に、クラスメイトの女の子にご飯を作ってもらうとか何様だって話だ。

「そこは私の心の平穏のためもあると思って、ね? 譲ってくれると嬉しいな?」

 俺を心配しているからだけでなく、自分のためでもあるから、と優香は言う。
 そうまで言われてしまったら、これ以上は無下に断り続けるのも逆に感じ悪いかな?

「じゃあ……お願いしちゃおうかな?」
「はい、お願いされちゃいました♪」

 俺は優香の好意に甘えることにしつつ、だけどギブ&テイクすることも忘れない。

「でもそのお礼に、今度遊びに行った時は俺がご飯でも奢るな」
「え、一緒に遊びに行ってくれるの?」
 すると優香が少しだけ驚いたように言った。

「……さっき優香から、遊びに誘ってくれたよな? 今日は無理でもまた今度行けたらなって思ったんだけど」

 げげっ。
 ここまで言ってから気付いたんだけど、もしかしてさっきのアレ、いわゆる社交辞令だったんじゃないか?

 テスト終わりの解放感について話してたから、話を盛り上げるために遊びに行こうって言ってくれただけだったのでは?
 ってことは、俺はそれを察して辞退しないといけなかったんじゃ?

「てっきりその話は断られたのかと思ってたから」

「断るなんてそんなまさかだよ。俺だって優香とは遊びに行きたいけど、今日だけは眠すぎて、どうしても無理かなって思っただけだから」

「なーんだ。そうだったんだね」
「おうよ」
 優香と一緒に遊びに行くなんて、ご褒美以外の何物でもないからな。

「そっか~、そうだったんだ。蒼太くんも私と一緒に遊びに行きたかったんだ~」
「そりゃあ、もちろん」

 なんだか知らないけど、優香が妙に嬉しそうだぞ?
 あれか?
 テスト明けのハイテンションってやつか?

「そっか~、ふふっ。あ、でもでも、お礼なんていいよ? 私が好きでご飯を作るんだし」
「そこは俺の心の平穏のためもあると思って、な? 奢らせてくれると嬉しいな?」

 俺はここぞとばかりに、ついさっき優香に言われたセリフを使った。

「あ、それ私の真似したでしょ?」
「すごく使い勝手のいいセリフだと思ってさ」

「真似っこは禁止だもん!」
「リスペクトしたんだよ」
「絶対してないし。賭けてもいいよ」
「あはは、バレたか」
「もう蒼太くんってばー」

 テスト明けでハイテンションな優香と、どうでもいいことで無駄に盛り上がる俺だった。

 というわけで。
 後日、優香と一緒に遊ぶ約束を取り付けつつ、今日は優香に晩ご飯を作って貰うことになった。

 ……改めて思うとさ、いろいろとすごくね?

 ここまで、まるで付き合ってる彼氏と彼女みたいなやりとりだったぞ?
 何がどうやってこうなったんだ?
 いやほんとマジで。
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