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第一章

第5話 勇者ハルト、初めての戦い!

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「じゃあ戦いに行ってくるね」

 精霊剣プリズマノワールをグッと握ると、ボクはセフィに言った。
 実はちょっとだけカッコをつけてたりする。

「ハルトくん、召喚しておいてこんなことを言えた義理ではありませんが、どうかお気をつけて」

 セフィが両手を組んでお祈りするように言ってくる。
 すごく心配そうな顔だった……どうにかして元気づけてあげたいな。

「大丈夫だよ、ボクには精霊たちがついてるから! そうだよね、みんな!」

 元気よく言ったボクの言葉に、姿は見えないままだけど精霊たちがうなずいてくれる。
 それを見てセフィはちょっと安心したみたいだった。

 セフィが安心してくれたところで、じゃあまずは戦いの準備をしないとね。

「戦いの精霊『タケミカヅチ』よ! お願い、ボクに力を貸して! 精霊術『カヅツチ』セットアップ!」

御心みこころのままに――!』

 ボクの呼びかけに戦いの精霊『タケミカヅチ』が応えてくれる。
 そしてボクの体に歴戦の猛勇だけが持つものすごい戦闘力がみなぎってくる!

 精霊使いは精霊の力を借りることで、色んな特別な力を使うことができるんだ!

 戦いの準備をしたボクは部屋をとび出すと、まずはさっき音がしたところへと向かう。
 風の精霊『シルフィード』の風の力で背中を押してもらったから、目的のところまでは一気だ。

「あ、あれだ! 壁が壊されてる!」
 壊された壁の近くには、黒いユーレイのようなやつらがいて。

「あれが闇の精霊たちだな! うぉぉぉっっっ!!」

 ボクは走った勢いをぶつけるように、精霊剣プリズマノワールを思いっきり振りおろした。
 その一撃で闇の精霊は真っ二つになり、そのままスゥっと消えていく。

「やった!」

 精霊は倒されるとエネルギー体になって、また別の精霊になって生まれ変わるんだ。
 これも本の中と一緒だ……!

 悪い精霊でも殺しちゃうのはイヤだなって、ちょっと思ってたんだけど。
 でもこれならひと安心だね。

 よし、まずはお城の中に入ってきたやつらを全部倒すんだ!
 ボクは精霊剣プリズマノワールで、闇の精霊たちを片っ端から倒していった。

 もちろん、闇の精霊たちも反撃してきたけど、

「精霊剣プリズマノワールをなめるな!」

 精霊術によって歴戦の猛勇となったボクには、闇の精霊たちの攻撃なんて全然効かないんだからね!

 ボクは闇の精霊をバッタバッタと倒していく。

「どうだ! 戦いの精霊術『タケミカヅチ』と精霊剣プリズマノワールがあれば、怖いものなんてないんだ!」

 お城の中に入ってきた20体の闇の精霊はすぐに全部、倒してしまった。
 これでお城のセフィたちは安心だね。

 ボクは次にお城の外に飛び出た。
 そこではセフィロト軍の精霊たちが闇の精霊たちと激しく戦っている。

 パッと見た感じ、
「まずいぞ、かなり押されてるっぽい」

 あれこれゆっくり考えているヒマはないかな。
 ボクは手あたりしだいに闇の精霊たちに突っ込んでいった。

「うぉぉぉっっっっ!!」
 戦いの精霊カグツチの教えてくれるとおりに、精霊剣プリズマノワールを振りまわす!

 闇の精霊たちを次から次へと倒していると、慌てた様子で命令をしている1体の偉そうな闇の精霊がいるのを見つけた。

「あいつが、闇の精霊たちのリーダーだな!」

 だったら――!

「風の精霊『シルフィード』よ! お願い、ボクに力を貸して! 精霊術『天まで届け』セットアップ!」

『はーい♪』

 ボクの呼びかけに、すぐに風の精霊『シルフィード』が応えてくれる。

「行くよっ!」

 ボクは助走をすると思いっきりジャンプした。
 精霊術『天まで届け』によってボクの体は高く高く、遠く遠くへと舞いあがる!

 リーダー精霊の目の前に一気に飛びおりたボクは、

「はぁっ――!」
 着地すると同時に精霊剣プリズマノワールを振り下ろした!

 完全に予想外の不意打ちを受けたリーダー精霊は、何もできずに斬られてしまって、そのまま空気にとけるように消えていく。

 そしてリーダーが倒されたと知った途端に、闇の精霊たちは次から次に逃げ出していった。

「やった、勝ったんだ……!」
 ボクは嬉しくて精霊剣プリズマノワールをズバッと、空に向かってつき上げた。

 すると、

「わぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!」
 戦いに勝ったセフィロト軍の精霊たちが、一斉に喜びの声をあげる。

 そこにお城からセフィもやってきて。

「さすがです、ハルトくん!」
 ひまわりのような笑顔でボクに抱きついてきたのだった。

 セフィみたいな可愛い女の子に、みんなの見ている前でぎゅっと抱きしめられるのは、ううっ、ちょっと恥ずかしいな。

 でもそれよりもなによりも。
 闇の精霊たちに勝てたことがボクは嬉しかったんだ。

 ボクは勇者ハルトとして、セフィの笑顔を守ることできんだ。

 そのことが、とてもとても誇らしかった。

 こうして。
 勇者カゼ・ハルトの初めての戦いは、大勝利に終わった。
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