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第三章 アンナローゼの悪意

第27話 純潔の証

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「ちょ、ちょっと!? 痛い目だなんて冗談ですわよね?」

「冗談かどうかはすぐにお分かりになりますわ。あなたたち、そのいやらしい女狐を捕まえてしまいなさい!」

 号令一下、アンナローゼの取り巻きの女官たちは全員でミリーナを取り囲んだ。
 そしてミリーナの恐怖を煽るように、じりじりとその包囲の輪を縮めてくる。

「ちょっと、あのっ?」

「顔を傷つけたりはしませんからどうぞご安心くださいませ。ですがそれ以外のところは少々傷ついてしまうかもしれませんけれども」

「それ以外……とは?」

 ミリーナは恐る恐るたずねた。

「例えば──大切な処女膜、とかかしら?」

「処女膜……?」

「清い関係でしたら当然まだおありですわよね? せっかくだから嘘を言っていないかどうか、今から確かめて差し上げますわよ。もっとも仮にあったとしても失ってしまうかもしれませんけど」

 そう言うと、アンナローゼはまるで演劇に出てくる悪役令嬢のごとく下卑た笑いをしながら、歪な形をした短い棒のようなものを取り出した。
 それを見たミリーナは顔を青ざめさせる。

 アンナローゼが取り出した歪な短い棒、それはなんとディルド――屹立きつりつした男性器を模した張形はりかただったのだ!

 つまりアンナローゼは今からあれでミリーナの純潔の証、処女膜を破ろうというのだ――!

「さ、さすがに嘘ですわよね……?」

「うふふ、ジェフリー王太子殿下は、あなたが処女膜のない中古売女だと知っても今まで通りに愛して下さるかしら?」

(なにがご安心くださいませよ!? あんな性玩具でロストバージンだなんて本気で冗談じゃないんだから!)

 ミリーナは逃げ出そうと包囲網の隙を窺うものの、いかんせん相手は6人もいてミリーナは自分1人きり。
 しかもここは王宮の隅の方にある人気のない小さな部屋で、入り口には鍵までかけられている。

 ミリーナの運動神経はそれなりにいい方だとはいえ、この状況でたった1人きりで逃げきれる可能性は皆無だった。

(くっ、捕まって押さえつけられたら終わりよ。あのディルドで無理やり処女膜を破られてしまうわ。押さえつけられる前になんとかして逃げ出さないと。でもどうやって――)

 ミリーナは迫りくる悪意におびえながらも、この絶体絶命のピンチからなんとか逃げ出そうと懸命に頭を巡らせる。
 しかしついには捕まってしまい、身体の自由を奪われてスカートを脱がされてしまった。
 さらには下着もはぎとられてしまい、あられもない姿を露出させられる。

「あ、アンナローゼ様、どうかお考え直し下さいませ。それにこのようなことをしたとジェフリー王太子殿下がお知りになられたら、大変なことになりますわよ!」

「あらあら、自分はもう処女ではないとあなた自身の口からジェフリー王太子殿下にお言いつけになるのでしょうか? それはまた見ものですこと。ぜひその席にはわたくしもお呼びくださいませね」

「な、なんて卑劣な! 恥を知るのはあなたの方ですわアンナローゼ!」

「おほほ、負け犬の遠吠えが実に耳に心地よいですわね。では早速、あなたが本当に処女であるかどうか、赤き純潔が流れ落ちるかどうかで確認させていただきましょうか。せめてもの情けとして、ディルドは濡らしておいてさしあげますわよ」

 アンナローゼが興奮した面持ちで、ディルドをいやらしく赤い舌で舐めまわす。

「誰か、誰か助けて下さいまし! ジェフリー王太子殿下!」

「おほほほ、ジェフリー王太子殿下は今日は朝から丸一日会議で出ずっぱりですのよ。あなたを助けになんて来れませんわ」

(それを狙って今日という日を選んだのね――!)

 身体の自由を奪われたミリーナには、もはや打つ手なし。
 どうすることもできなかった。

 哀れ、その美しき純潔の証は嫉妬に狂ったアンナローゼによって無残にも性玩具で散らされてしまう――。

 まさにその寸前だった。

「お前たち! そこで何をしている!」

 突然小部屋の扉が吹き飛ぶように蹴り開けられたかと思うと、猛々しくも鋭い声が狭い室内に高らかに響き渡ったのは――!
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