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第二章 出会い
第10話 リッケン・クンシュセー
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「なぁ、さっきから疑問だったんだけどさ? 【魔王】がへっぽこで魔族をまとめられるものなのか? 皇帝や王は国を背負って立つ存在だろ?」
「それがまとめられるのじゃよ。神輿は軽い方がいいというやつなのじゃ。【南部魔国】は立憲君主制をとっておるからの」
「リッケン・クンシュセー? なんだそりゃ? 王政とは違うのか?」
人間世界では知っている限り全ての国が、皇帝や王が全てを決める帝政(または王政)かそれに近い統治形態をとっている。
それ以外の統治の仕方なんて考えてこともなかったけど――、
「立憲君主制は、君主の権力に大きな制限をかけ、代わりに貴族と民衆の代表が政治を執り行うというシステムです」
よくわかっていない俺に、ミスティが簡単な説明をしてくれた。
「民衆が政治を? じゃあ王様は――魔族だから【魔王】か――【魔王】はなんのために存在するんだ? ろくに権力のない王がいても、ただの金の無駄だろ?」
「お主は何でも思ったことをストレートに言うのじゃ……ぐすん」
「ああうん、ごめん。さすがに今のは言いすぎた、ほんとごめん」
いじけてしまって足元の小石を蹴りだした幼女魔王さまに、俺は素直に謝った。
「ハルト様、立憲君主制における王の役目とは、全国民の象徴となることなのです」
「全国民の象徴――?」
その説明がこれまた理解できずに、俺はおうむ返しに聞き返してしまった。
「民を安心させるとともに、団結のための拠りどころ――精神的支柱となるのが象徴としての王の役目です。そのためには平素より国民に愛される存在として、魔王さまは皆の心の柱としてあり続けなければならないのです」
「な、なんだと!? それじゃあ王様という肩書だけでろくな権力もないのに、象徴になるという義務だけ一方的に負うというのか!? リッケン・クンシュセーの王とは、なんて大変な役目なんだ……!」
「はい、かように重い重い重責を背負われたのが、ここにおられる魔王さまなのですよ」
「な、なんだと……!」
ミスティの説明を聞いて、俺は驚愕に打ち震えていた。
「あの、ミスティ? ちょっとばかし大げさに言いすぎではないじゃろうか?」
「一言も嘘は申しておりません」
「いやでもどう見てもハルトが勘違いしておるのじゃが――」
「俺は、俺は感動したぞ!」
「ハルト!?」「ハルト様?」
「俺はなんて世間知らずのバカだったんだ! こんなちっこい身体にそんな重い使命を課せられていたなんて、俺は思いもよらなかった!」
「いやあの、実を申すと全然ちっともそこまでのもんではないのじゃが……あとちっこいは余計なのじゃ。割かし気にしておるからして。ちなみに先日成人しておるのじゃ」
「謙遜なんてしなくていいさ、俺には全部わかっているから! 偶然とはいえ2人を助けた甲斐があったよ。はっ!? 今、分かったぞ! 俺の人生はきっと今日、魔王さまとミスティを助けるためにあったんだな!」
「いやー、それはさすがにどうじゃろうか……?」
「良き出会いを与えてくれた幸運の精霊【ラックス】の導きに感謝を――」
最後まで謙遜し続けるよくできた幼女魔王さまに、俺も最後まで称賛の気持ちと言葉を惜しまなかった。
「ま、まぁ嘘というわけではないよの……?」
…………
……
「時にハルト。お主、旅をしておるのじゃろ? どこか行く当てはあるのか?」
「うーん、今のところ特にはないな」
なにせいきなり帝都を追放されたからな。
人生設計をし直す時間なんてありはしなかった。
「ふむ……ならしばらく妾の住まう【ゲーゲンパレス】に来ぬか? こたびの礼もさせて欲しいしの」
「【ゲーゲンパレス】……確か【南の魔王】の居城がある【南部魔国】の首都だったよな」
俺はうろ覚えの知識をどうにかこうにか引っ張り出した。
「なに、警戒せんでもよいのじゃぞ? 妾が言うのもなんじゃが温暖で豊かでとても良いところなのじゃ。妾の命を救ったのじゃから相応の待遇で迎えようではないか」
「俺は別にお礼が欲しくて助けた訳じゃないんだよな」
何度も言うけど、元【勇者パーティ】の俺にとって困っている人に力を貸すのは割と普通のことなのだ。
「ほぅ……であるか」
魔王さまが少し考えるようなそぶりを見せ、
「なんと尊い志を持った殿方なのでしょう……!」
ミスティがキラキラとした目で見つめてきた。
「ではハルトよ。お主、最先端文化を学んでみぬか?」
「最先端文化を学ぶ? 俺が?」
魔王さまが急にそんなことを言いだした。
「話してみて感じたのじゃが、お主は合理性を優先するあまり少々情緒というものに欠けておるのじゃ。そして我が【ゲーゲンパレス】は世界屈指で文化が花開いた最先端文化都市なのじゃ。一緒にくれば様々な新しい知見を得られると思うのじゃが、どうじゃろうか?」
「【ゲーゲンパレス】で最先端文化を学ぶ、か……」
幼女魔王さまの提案を、俺は直感的に面白そうだなと思った。
ぶっちゃけ俺は文化的素養があまり高くない。
剣を握ってばかりでここまでの人生を過ごしてきた。
ならばこの先の人生をどう生きるにしても、様々な経験を積んでおいて損はないんじゃないだろうか?
それにどうせ行くあてもないんだ。
なら――、
「そういうことなら俺を【ゲーゲンパレス】に連れて行ってくれ。最先端文化ってやつをぜひこの目で見てみたい」
「おお、話が早いの! では早速馬車に乗るのじゃ!」
「えっと、視察の方はもういいのか?」
「このあたりの情勢はある程度把握できたからの。お飾りの妾にできるのはこの程度、後は国の優秀な者たちに任せればよいのじゃよ」
――こうして。
【勇者パーティ】を追放された俺は、幼女魔王さまとミスティを助けたことがきっかけとなり、最先端文化を学ぶべく【ゲーゲンパレス】に滞在することになった。
「それがまとめられるのじゃよ。神輿は軽い方がいいというやつなのじゃ。【南部魔国】は立憲君主制をとっておるからの」
「リッケン・クンシュセー? なんだそりゃ? 王政とは違うのか?」
人間世界では知っている限り全ての国が、皇帝や王が全てを決める帝政(または王政)かそれに近い統治形態をとっている。
それ以外の統治の仕方なんて考えてこともなかったけど――、
「立憲君主制は、君主の権力に大きな制限をかけ、代わりに貴族と民衆の代表が政治を執り行うというシステムです」
よくわかっていない俺に、ミスティが簡単な説明をしてくれた。
「民衆が政治を? じゃあ王様は――魔族だから【魔王】か――【魔王】はなんのために存在するんだ? ろくに権力のない王がいても、ただの金の無駄だろ?」
「お主は何でも思ったことをストレートに言うのじゃ……ぐすん」
「ああうん、ごめん。さすがに今のは言いすぎた、ほんとごめん」
いじけてしまって足元の小石を蹴りだした幼女魔王さまに、俺は素直に謝った。
「ハルト様、立憲君主制における王の役目とは、全国民の象徴となることなのです」
「全国民の象徴――?」
その説明がこれまた理解できずに、俺はおうむ返しに聞き返してしまった。
「民を安心させるとともに、団結のための拠りどころ――精神的支柱となるのが象徴としての王の役目です。そのためには平素より国民に愛される存在として、魔王さまは皆の心の柱としてあり続けなければならないのです」
「な、なんだと!? それじゃあ王様という肩書だけでろくな権力もないのに、象徴になるという義務だけ一方的に負うというのか!? リッケン・クンシュセーの王とは、なんて大変な役目なんだ……!」
「はい、かように重い重い重責を背負われたのが、ここにおられる魔王さまなのですよ」
「な、なんだと……!」
ミスティの説明を聞いて、俺は驚愕に打ち震えていた。
「あの、ミスティ? ちょっとばかし大げさに言いすぎではないじゃろうか?」
「一言も嘘は申しておりません」
「いやでもどう見てもハルトが勘違いしておるのじゃが――」
「俺は、俺は感動したぞ!」
「ハルト!?」「ハルト様?」
「俺はなんて世間知らずのバカだったんだ! こんなちっこい身体にそんな重い使命を課せられていたなんて、俺は思いもよらなかった!」
「いやあの、実を申すと全然ちっともそこまでのもんではないのじゃが……あとちっこいは余計なのじゃ。割かし気にしておるからして。ちなみに先日成人しておるのじゃ」
「謙遜なんてしなくていいさ、俺には全部わかっているから! 偶然とはいえ2人を助けた甲斐があったよ。はっ!? 今、分かったぞ! 俺の人生はきっと今日、魔王さまとミスティを助けるためにあったんだな!」
「いやー、それはさすがにどうじゃろうか……?」
「良き出会いを与えてくれた幸運の精霊【ラックス】の導きに感謝を――」
最後まで謙遜し続けるよくできた幼女魔王さまに、俺も最後まで称賛の気持ちと言葉を惜しまなかった。
「ま、まぁ嘘というわけではないよの……?」
…………
……
「時にハルト。お主、旅をしておるのじゃろ? どこか行く当てはあるのか?」
「うーん、今のところ特にはないな」
なにせいきなり帝都を追放されたからな。
人生設計をし直す時間なんてありはしなかった。
「ふむ……ならしばらく妾の住まう【ゲーゲンパレス】に来ぬか? こたびの礼もさせて欲しいしの」
「【ゲーゲンパレス】……確か【南の魔王】の居城がある【南部魔国】の首都だったよな」
俺はうろ覚えの知識をどうにかこうにか引っ張り出した。
「なに、警戒せんでもよいのじゃぞ? 妾が言うのもなんじゃが温暖で豊かでとても良いところなのじゃ。妾の命を救ったのじゃから相応の待遇で迎えようではないか」
「俺は別にお礼が欲しくて助けた訳じゃないんだよな」
何度も言うけど、元【勇者パーティ】の俺にとって困っている人に力を貸すのは割と普通のことなのだ。
「ほぅ……であるか」
魔王さまが少し考えるようなそぶりを見せ、
「なんと尊い志を持った殿方なのでしょう……!」
ミスティがキラキラとした目で見つめてきた。
「ではハルトよ。お主、最先端文化を学んでみぬか?」
「最先端文化を学ぶ? 俺が?」
魔王さまが急にそんなことを言いだした。
「話してみて感じたのじゃが、お主は合理性を優先するあまり少々情緒というものに欠けておるのじゃ。そして我が【ゲーゲンパレス】は世界屈指で文化が花開いた最先端文化都市なのじゃ。一緒にくれば様々な新しい知見を得られると思うのじゃが、どうじゃろうか?」
「【ゲーゲンパレス】で最先端文化を学ぶ、か……」
幼女魔王さまの提案を、俺は直感的に面白そうだなと思った。
ぶっちゃけ俺は文化的素養があまり高くない。
剣を握ってばかりでここまでの人生を過ごしてきた。
ならばこの先の人生をどう生きるにしても、様々な経験を積んでおいて損はないんじゃないだろうか?
それにどうせ行くあてもないんだ。
なら――、
「そういうことなら俺を【ゲーゲンパレス】に連れて行ってくれ。最先端文化ってやつをぜひこの目で見てみたい」
「おお、話が早いの! では早速馬車に乗るのじゃ!」
「えっと、視察の方はもういいのか?」
「このあたりの情勢はある程度把握できたからの。お飾りの妾にできるのはこの程度、後は国の優秀な者たちに任せればよいのじゃよ」
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