レアジョブ【精霊騎士】の俺、突然【勇者パーティ】を追放されたので【へっぽこ幼女魔王さま】とスローライフします

マナシロカナタ✨ねこたま✨GCN文庫

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第四章 ゲーゲンパレス・スローライフ(後編)

第35話 にぶにぶにぶにぶにぶにぶにぶちん

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「はぁ……」
 ミスティが小さな声でため息をついた。

 聞こえるか聞こえないかの本当に小さな声だったけど、おせっかいな風の上位精霊【シルフィード】が気を利かせて、本来なら聞こえないはずの言葉を風に乗せて俺に届けてくれたのだ。
 
 【シルフィード】がわざわざ俺の耳に入れたってことは、突っ込んで聞いてみた方がいいんだろうな。

「珍しいなミスティがため息なんて」

「あっ、ご不快にさせてしまい申し訳ありません。特にどうこうと言うことはありませんのでご安心ください」

 謝罪の言葉と共にミスティが頭を下げた。

「ああごめん、違うんだ。責めたわけじゃなくて、もしかして疲れてるのかなってちょっと気になっただけなんだ」

「お心遣いありがとうございます。本当にそういうわけではありませので」

 そう言ってにっこり笑うミスティは、確かに疲れているようには見えなかった。

「ならいいんだけどね」
 特に何事もなく話が終わろうとしたところに――、

「ミスティはの。ここに来る前、見合いの話を断ったのじゃよ」

 これ幸いと幼女魔王さまが話にのっかってきた。
 それもちょっと嬉しそうに。

「ま、魔王さま! この件はハルト様には内緒にすると、何度も念を押したではありませんか!」
 するとなぜかミスティが急にあたふたしだしたのだ。

「おおこれはすまぬ、わらわとしたことがてっきり忘れておったのじゃ」
「わざとですね魔王さま……!」

「いやーすまぬ、ちょちょーっと口が滑ってしまったのじゃ。まったくいけないお口なのじゃ」
「うぅ……っ!」

 これまたミスティには珍しく、魔王さまへの抗議の意思をミスティが見せた。

 魔王さまがわざと言った理由はさっぱり分からないんだけど、どうもミスティはこの話を俺に聞かれたくなかったようだ。

 もしかしたら――。

「大丈夫、ちゃんと俺は分かってるよ」

「は、ハルト様!?」
「もしやハルト、ミスティの気持ちを分かっておるのか?」

 ミスティが傾聴!って感じでピンと背筋を伸ばし、幼女魔王さまは温泉にタヌキが入っているのでも見たような驚いた顔を見せた。

 えっと、なんでそんな大げさなリアクションなんだ?
 いやいいんだけどさ。

「まぁなんとなくなく想像はつくよ。つまりこういうことだろ? ミスティくらい美人になると、相手も相応のイケメンじゃないとトキメかないんだよな?」

「えっと……はい?」
 どうしてかミスティが小首をかしげ、

「ハルト……もしかしなくとも、ちーっとも分かってないのかえ?」
 幼女魔王さまはジト目になった。

「だから分かってるって。エルフは美意識が特に高い種族だってことくらい俺も知ってるから。心がときめくのは自分より綺麗な相手だけ、とかちょっと大げさだけどそんな風に言われるくらいだもんな」

「いえ、あの、そういうことでは――」

「だから相手をり好みしてるとか、そんな風には思ったりはしてないよ。エルフって種族の特徴だからな。だから安心してねミスティ」

「あ、はい……おこころづかい……ありがとうございます……」
 ありがとうと言いながら、なぜかミスティはがっくり意気消沈していた。

「ハルトはよく『にぶにぶにぶにぶにぶにぶにぶちん』と言われるじゃろ、言われまくりじゃろ」

「だからそんなことないってば。自分で言うのもなんだが俺は割と気が利く方だ」

「ほんと自分で言うのもなんじゃの……」

 なぜかやれやれと肩をすくめる幼女魔王さまだった。
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