レアジョブ【精霊騎士】の俺、突然【勇者パーティ】を追放されたので【へっぽこ幼女魔王さま】とスローライフします

マナシロカナタ✨ねこたま✨GCN文庫

文字の大きさ
41 / 77
―最終章―

第37話 見送り

しおりを挟む
 今日も今日とて街に行く約束をしていた俺のところに、幼女魔王さまとミスティがやってきた。

 しかしいつもとなにやら雰囲気が違っている。

 そして二人の後ろには大将軍ベルナルド――ベルが神妙な面持ちで控えていたのだ。

「ハルト、急な話で済まぬのじゃが、しばらく会えなくなりそうなのじゃ」

 開口一番、幼女魔王さまがいつもとは違う重々しい口調でそんなことを言ってきた。

「……何があったんだ?」

 当然俺は何か緊急事態があったと察するわけで。

「昨日、【勇者】率いる帝国軍が【南部魔国】に侵攻してきたのじゃよ。既に国境近辺の砦が2つ落とされ、なおも【ゲーゲンパレス】に向かって南進中じゃ」

「はぁっ!? いやちょっと待ってくれ、帝国と【南部魔国】は長年友好関係にあったじゃないか。俺が帝国にいた時もそんな話はまったくなかったぞ? 何かの間違いじゃないのか?」

 にわかには信じられない話を聞かされた俺が勢いあまってまくしたてると、

「それについてはアタイの方から説明するよ」

 これまで後ろに控えていたベルがスッと前に出た。

「ハルトの疑問はもっともだ。どうも今回の件は帝国というよりは【勇者】が独断で動いているみたいでね」

「【勇者】が……? それは確かな筋からの情報なのか?」

「帝国軍のとある上級将校からの極秘情報さ。突発的な事態に備えて軍上層部同士は常日頃から公式・非公式問わず色んなコネクションで繋がっているんだ」

「ベルと同格の上級将校で【南部魔国】に肩入れしている信頼できる情報筋となると、情報源はマナシロ中将あたりか」

「鋭いねぇ。ま、明言は避けておくよ」

「でも短期間で、さらに【勇者】の独断となるとそこまで大規模な動員はできないはずだ。兵力は多くても5千ってところか?」

「約4千、歩兵中心と聞いている」

「兵力が大きく劣り、そして突然の奇襲攻撃……ってことは電撃的な短期決戦……それ以前にやる事もやり方もあまりにもめちゃくちゃだ。下手したら参謀本部に話が通ってない可能性もあるな」

 軍団を動かすのは簡単ではない。
 兵站へいたん――食料や備品の確保といった、兵団が戦闘活動を円滑に行うための後方支援が必要となる。

 入念な準備をして初めて戦争は行えるのだ。

 そして準備をすれば当然、【南部魔国】もその動向に気付いたはずだ。
 気付かなかったと言うことは、ろくに準備もせずに攻め込んできた可能性が極めて高い。

 そして時に慎重すぎて「甲羅干しする亀」とまで言われる腰の重い帝国参謀本部が、そんなボロボロの作戦を立案するはずもない。
 そもそも戦争で疲弊しいまだ復興途上にある帝国が、友好国である【南部魔国】を攻める理由がない。

「ご明察だ。我々も帝国の本意ではないとの意見で一致している。そして目的はおそらく――」

わらわの首じゃろうの」

「魔王さまを――【南の魔王】を討伐しようってのか! 何考えてんだ【勇者】は! 【南部魔国】は数十年来の友好国だぞ!」

「おおかた二人目の【魔王】を討伐した実績でも欲しいのじゃろう。聞くところによると【勇者】は非常に功名心の強い人間だと聞き及んでおるでの」

「だからってこんなだまし討ちみたいなやり方はしちゃいけないだろ! わかった、そういうことなら俺も行く。昔の仲間として、あいつにこれ以上の好き勝手をさせるわけにはいかない」

 俺は戦う決意を強く固めたんだけど――、

「悪いけどハルト、それは許可できないんだ」

 なぜかベルがそれに水を差してきたのだった。

「ベル、俺は【精霊騎士】だ。大きな戦力になるはずだ」

「そうだね。でもハルトは人間族だ。魔王軍の配下として同じ人間族と戦わせるわけにはいかないさ。それに軍上層部の中にはハルトが【勇者】の放ったスパイだと疑うやつもいてね」

「【黒曜の精霊剣・プリズマノワール】に誓って俺はスパイじゃない、それは信じて欲しい」

「もちろんアタイはわかってるよ。そもそもハルトがその気になればスパイなんてまどろっこしいことしなくても即、魔王さまの命をとれたわけだからね」

「だったら――」

「今回の不測の事態にゃ、うちも一枚岩じゃいられないのさ。拘束せずに自由を保障することがアタイのしてやれる最大限の誠意だと、どうか分かってはくれないかな?」

「……悪い、ちょっと熱くなっていたみたいだ」

 そうだよな、ベル――ベルナルドは軍の実質トップである大将軍だ。
 人の上に立つ公的立場の人間なんだ。
 個人的な好き嫌いだけで物事を判断できるわけがない。

「わかった。俺はあくまで魔王さまに招かれた客人だから要請には従うよ。あと俺のことで迷惑かけてすまなかった、恩に着る」

「なに、ハルトは魔王さまの命を救ってくれた恩人だ。アタイも個人的にハルトを気に入ってる。これくらいの迷惑、たいしたことはないってことよ」

 そう言ってベルはニカっと男前に笑ってみせた。

 さらに、

「のぅハルト、【勇者】はお主の昔の仲間じゃろう? 仲間と戦うのは辛いものじゃ。わらわはハルトにそんな辛い思いをしてほしくはないのじゃよ」

 幼女魔王さまがいたわる様な優しい目でそんなことを言ってくる。

「魔王さま……うん、わかってる」
 まったく、気遣いばっかり上手なへっぽこ魔王さまなんだからよ……。

「では話は以上じゃ。しばらく留守にするゆえ、ハルトは今まで通りゆるりとここで過ごすがよい。王宮の者には変わらぬ対応をするように申し付けておるからの。好きに出歩いても構わんのじゃ」

「ああ、ありがとう。心遣い恩に着るよ」

「ハルトよ。これまでハルトと過ごした日々はなかなかに楽しかったのじゃ」
「おいおい縁起でもない、そんな死地におもむくような言い方するなよな」

「戦地では何が起こるか分からんゆえの。なにより相手は【勇者】であるからして」
「そうだな……みんなの武運を祈ってるよ」


 翌日。
 幼女魔王さまとミスティは緊急招集された2万の軍勢と共に【ゲーゲンパレス】の北部の平原へと旅立っていった。

 そこでさらに近隣の兵力を結集しつつ野戦にて【勇者】を迎え撃つとの事だった。

 そして俺はそれをただ見送るしかできないのだった。
しおりを挟む
感想 66

あなたにおすすめの小説

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

「お前の代わりはいる」と追放された俺の【万物鑑定】は、実は世界の真実を見抜く【真理の瞳】でした。最高の仲間と辺境で理想郷を創ります

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の代わりはいくらでもいる。もう用済みだ」――勇者パーティーで【万物鑑定】のスキルを持つリアムは、戦闘に役立たないという理由で装備も金もすべて奪われ追放された。 しかし仲間たちは知らなかった。彼のスキルが、物の価値から人の秘めたる才能、土地の未来までも見通す超絶チート能力【真理の瞳】であったことを。 絶望の淵で己の力の真価に気づいたリアムは、辺境の寂れた街で再起を決意する。気弱なヒーラー、臆病な獣人の射手……世間から「無能」の烙印を押された者たちに眠る才能の原石を次々と見出し、最高の仲間たちと共にギルド「方舟(アーク)」を設立。彼らが輝ける理想郷をその手で創り上げていく。 一方、有能な鑑定士を失った元パーティーは急速に凋落の一途を辿り……。 これは不遇職と蔑まれた一人の男が最高の仲間と出会い、世界で一番幸福な場所を創り上げる、爽快な逆転成り上がりファンタジー!

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る

神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】 元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。 ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、 理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。 今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。 様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。 カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。 ハーレム要素多め。 ※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。 よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz 他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。 たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。 物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz 今後とも応援よろしくお願い致します。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

処理中です...