43 / 58

第42話 愛情と餌付け

しおりを挟む
 その後、ミストルティアを泣き止ませ。
 少しだけ休んで体力をちょびっと回復させた俺たちは、再び空を飛んでお城へと帰還した。

 そして風呂に入って汗と汚れを落とすと、俺はリュスターナを部屋に呼んで事のあらましを全て正直に語って聞かせた。
 もちろんミストルティアのことも包み隠さず話した。

「そんなことがあったんですね……」
「ごめんな、なんかなりゆきでそういうことになっちゃったんだ」

「いいえ、仕方がありませんよ。それにミストルティアがいなければ勇者様は死んでいたんですよね?」
「十中八九、死んでいただろうな」

 ギガントドラゴンの卑劣な作戦は、ミストルティアの裏切りが無ければ確実に成功していただろう。
 下手したら俺はヘトヘトの状態で、ドラゴン四天王2体と同時に戦う羽目になっていたのだから。

「だったらミストルティアは、私にとっても大切な勇者様の命を救ってくれた恩人です。だからある程度のことは譲歩しないとです」

「そう言ってくれるとありがたい」

 感謝の言葉とともに頭を下げた俺の頭を、リュスターナは優しく抱えるとそっと胸に抱きとめた。

「でも一番は私ですからね? そこは約束してくださいよ?」
「もちろんだよリュスターナ。俺はリュスターナが一番好きだ」

 リュスターナの柔らかい胸にぽわぽわされながら俺はしっかりと断言した。
 俺にとってリュスターナは何よりも誰よりも大事だから。

「じゃあさっそく今日の夜は可愛がってくださいね♡」
「それなら夜まで待たずに今からどうだ?」

「もう、勇者様ったらエッチなんですから♡」
「リュスターナが可愛すぎるのがいけないんだよ」

 俺はリュスターナを抱きしめると夜の勇者王に変身しようとして――、

「ねーねー、もう話は終わった?」

 コンコン、ガチャ。
 雑なノックがあったかと思うとほぼ同時にドアが開いて、俺の返事も待たずにミストルティアがひょこっとドアの隙間から顔を出した。

 俺は慌ててリュスターナと距離を取る。

「い、今ちょうど説明し終えたところだよ。なぁリュスターナ!」
「は、はい! 偶然にも今ちょうど説明し終えたところなんですよね、これが!」

 そのまま何事もなかった風を装う俺とリュスターナ。

「ならよかった♪ ちゃんとボクのことも説明してくれたんだよね?」

 ほっ、よかった。
 ミストルティアは俺たちがえっちなことをおっぱじめようとしていたとは、まったく気づいていないようだ。

「もちろんだ。オッケーも貰えたぞ。でもあくまでお前は2番だからな。俺はリュスターナが一番大事なんだから」

「そんなに何度も言われなくたってちゃんと分かってるもーん! じゃあそういうわけだからご飯いこ、ご飯♪ なんかね、今から美味しいご飯をいっぱい食べさせてくれるんだって♪ ボクすごく楽しみー!」

 そういや軍師メイリンが言ってたな。

『ミストルティアのことなんだが。仲間になったと言われてもやはり完全に信用するのは難しい。だからまずは君の愛情でその首に鎖を付けるんだ』

『ま、当然の判断だな』

『そしてもう一つ、餌付けによって鎖を付けようと思っている』
『餌付け?』

『さっき少し話した時に聞いたんだが、ドラゴンは普段はあまりいいものを食べていないようだからね。ここは人間の料理でミストルティアの胃袋をわしづかみしようじゃないか』

 みたいなことを言っていたのだ。
 今のミストルティアの反応を見る限りその作戦は大成功のようだ。
 さすが天才軍師メイリン様だな。

「よっしゃ、じゃあみんなで美味しいご飯を食べに行くか」
「そうしましょう勇者様」
「わーい♪」

 こうして竜姫ミストルティアが俺たちの仲間に加わり、大魔竜ドラグバーンと戦うことになったのだった。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

「え、俺なんかしました?」無自覚チート《概念編集》で石ころを魔石に、なまくらを聖剣に書き換えて、国を追われた聖女様と世界を救う

黒崎隼人
ファンタジー
◆◇◆完結保証◆◇◆ ◆◇◆毎日朝7時更新!◆◇◆ 「え、俺なんかしました?」 ごく普通の大学生、朝霧 海(あさぎり かい)が迷い込んだのは、剣と魔法が息づく異世界エーテルディア。右も左も分からぬままモンスターに襲われた彼を救ったのは、聖なる光を操る謎の美少女、ルミナだった。 彼女は言った。『あなた、一体何者なの?』と。 カイ自身も知らない、触れたモノの”理”を書き換えるチート能力《概念編集(リアライター)》。 「ただの石」が「爆ぜる魔石」に? 「なまくらの剣」が「伝説級の聖剣」に!? 無自覚に規格外の力を振るうカイは、やがて国を追われる訳ありの少女ルミナと共に、巨大な陰謀に立ち向かう運命に巻き込まれていく。 これは、一人の平凡な青年が、大切な人を守るために世界の理すら書き換えて最強へと至る、王道異世界ファンタジー!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...