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第一部「《神滅覇王》――其の者、神をも滅する覇の道を往きて――」 異世界転生 1日目

第17話 俺の求める理想のハーレム

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「あれ? その『月華草げっかそう』って薬草を煎じて飲めば、妹さんはよくなるんだよな?」
「それは、その――」

 笑顔を曇らせ言いよどむウヅキに、
「マナシロさま、あの子の――ハヅキの病は『月華草げっかそう』では治らないんですじゃ」
 グンマさんが助け船を出した。
 だがその中身は、俺が想像もしていなかったことで。

「――え? 薬では治らない病気なのか? まさか不治の病なのか……?」
「あ、いえ、その、A級秘薬『コソケル皇帝液』でもあれば、治るとは、思うんですけど……」
「――ない、んだな」

「『コソケル皇帝液』はその昔、大病に伏せった皇帝陛下をたった一晩で快癒かいゆさせたという名薬で、効果は抜群なんですけど、その分とっても高いんです……どこぞのお大臣や豪商ならまだしも、その……辺境の村での収入くらいでは、とてもじゃありませんが手に入れることはできなくて……」
 ウヅキが視線を床に落とした。

 ひまわりのような笑顔を見せていたウヅキに、そんな悲しむ顏は似合わないと。
 強く、強く。
 俺は、思った。

「他に治す方法はないのか?」
「凄腕の――A級『神官』に頼めば治るとは思います……それでも、この病を治すとなれば、かなりのお布施をしなければならないので……」
 結局、最後は金なのか……異世界に来たってのに、なんだか世知辛いな。

 この世界の経済事情がどうなっているかは知る由もないが、やはり相当な金額が必要なのだろう。
 そして悲しいことに、俺はからっけつの無一文。
 金銭面からどうにかすることはできない。

 しかし、だ。
「治す手段は、どっちもA級なんだよな……ふむ」
 俺は少し考え入りながら、小さくつぶやいた。

「辺境の村はどこも裕福ではないんです。日々を生きるのに精いっぱいなので、大きなお金を工面することは、とてもできません。わたしも特待生に与えられる無償の奨学金がなければ、街の高等学校に通うことはできませんでしたから……」
「それで、薬の代わりにC級薬草『月華草げっかそう』を取りに行ったんだな」

「『月華草げっかそう』にはわずかですが、滋養・強壮の効果があるんです。完治はしませんが、少しは症状も和らぎますから……」
 しょんぼりするウヅキを見ていると、ズキンと胸が痛んだ。
 俺には金はない。
 けれど――、

「あのさ、ちょい提案なんだけどさ」
 お金はなくても、俺にはアリッサがくれたS級チートがある――!

「そういうことなら、物は試しで少し俺に任せてもらえないかな?」
「それは、もちろん構いませんけど……」

 この世界に来ていくつかチートを使ってみて、なんとなく分かったことがある。
 この世界ではAとかBとか言ったランクが、大きな意味を持っているようなのだ。
 Sを筆頭に以下ABCDと下がっていき、上のランクであれば下のランクを攻略することができるっぽいのだ。
 ならば――

 俺はハヅキが寝ている部屋へと案内してもらうと、その枕元に膝立ちになった。
 ウヅキとよく似た顔立ちの、しかし病に伏せっているのが一目でわかる青白い顏。
 首元もほっそりしていて、呼吸もか細い。


 布団の中で抱っこしているのだろう、使い古されてボロボロになった猫のお人形が、布団からちょこんと顔だけ出している。

 軽い症状でないのは一目瞭然だった。
 だけど――、

「俺の回復系S級チートなら、A級で治る病なら余裕で癒せるはずだ……! いくぞ、回復系S級チート『天使のほどこし』発動――!」
 かざした手のひらから、温かく清浄な光の波動が発せられ、ハヅキの身体を覆っていく。
「すごい……これって、超高度の回復術――」

 治るはずだ……治らないはずがない……たのむ、治ってくれ! 治れ――っ!!
 想いを込めてひたすらに祈る。

 しばらくすると、光が収まった。
「ど、どうだ……?」
 しかしハヅキの様子には何の変化もなくて――

「ダメ、だったのか……?」
 俺の計算違いだったってことか……?

 ランクが上ならなんでもかんでも治る、ってわけじゃないのか……?
 相性とか、組み合わせとか、そういうのがあったりするのか……?

 と、
「うにゅ」
 謎の掛け声とともに、突然、ハヅキがパチッと目を開いたのだ。
 そして、がばっと上体を起き上がらせると、そのままきょろきょろと周りを見渡す。

「――っ」
 それを見たウヅキが息をのんだ。

「うにゅ、きゅうに、げんきが、でたので。……おなか、すいた。ごはん、たべたい」
「――っ! うそ……!」
「おねぇ、おなか、すいた」

「ハヅキ、ハヅキ……!」
 感極まったウヅキが、もぎゅっとハヅキを抱きしめた。

「うにゅ、おねぇ、ぐるしい……ぎぶ、ぎぶ」
「ぐすっ、本当に、良かった。ハヅキ、元気になって、本当に良かった――っ!」
「それはわかった、ので……おねぇ、おなかすいた、ごはん、つくって?」

「もう、この子ったら……さっきからそればっかり言って」
「だっておなか、ぐーぐー、なってる」
 ペロンとパジャマの裾をめくるハヅキ。
 可愛らしいおへそが丸見えだった。

「でも本当に、本当にさすがです、セーヤさん! こんな超高難度の回復術まで使えるなんて……! わたし、人生で今日が一番うれしい日になりました! ……って、セーヤさん?」
「……はっ、違う、違うんだウヅキ! 俺は別に可愛らしいおへそに見とれていたわけではなくてだな! もうちょっと上までめくったらいろいろ見えちゃうかも、とか考えたわけでもなくてだな!」
「ふふっ、へんなセーヤさん。でもそんなところも素敵です、えへへ。すっごくすっごく素敵です!」

 言って、涙をためたウヅキが、今度は俺に抱きついてきた。
 よほど嬉しかったのか、その腕にはぎゅうぎゅうと力が入っていて。
 柔らかく大きな胸が、形を変えて俺の胸へと押し付けられて。
 それを俺は優しく抱き返してあげて――。

「……これだよ、これなんだよ」
 俺が求めていたのはこういうのなんだよ。

 ラブラブで、モテモテで、俺が女の子たちに賞賛される異世界生活。
 俺が幸せで、でも俺だけじゃなく、女の子もみんな幸せで。

 悲しいことなんてなくて、みんな笑顔で、その上で俺をチヤホヤしてくれて。
 これが、これこそが俺の求める理想のハーレムの姿だ!

 今日はまずその第一歩を、俺は踏み出したのだ――!
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