90 / 566
ーインタールードー

第85話 プロジェクトSS―《神滅覇王》顕現計画

しおりを挟む
「『プロジェクトSSダブルエス』、『神話級SS級チート《神滅覇王しんめつはおう》顕現計画』ですか?」

 渡されたのはわずか数枚のA4ペーパー。
 けれどその左上には、私たちペーペーの下っ端はまず見ることがない威圧感たっぷりの「機密」のふた文字が、赤字の判で押されていた。

「そうだ。簡潔に言えば最強S級チート『剣聖』をベースに、一部上書きする形で《アガニロム》最強と言われるSS級チート《神滅覇王しんめつはおう》を顕現させ、行使する」

「SS級チート《神滅覇王しんめつはおう》……。あの、よろしいでしょうか? そもそもさっきからおっしゃられている、SS級とはなんなのでしょうか? チートはS級が最上位のはずでは……?」

「S級を超える存在だから、SS級。暫定的な呼称ではあるが、わかりやすいだろう? そして《アガニロム》という異世界に関して、分かっている数少ない情報の一つが最強と言われるSS級チート《神滅覇王しんめつはおう》の存在だ」

「そんなものが――」

 にわかには信じられない話だった。
 だけど本部長がわたしのような下っ端を直々に呼び出して、わざわざそんな嘘をつく必要はちゃぶ台をひっくり返しても存在しないわけで――。

「そしてだ。『剣聖』をベースとして《神滅覇王》顕現させることで、《アガニロム》を正しく管理下に置くための橋頭保きょうとうほとする」

「そんなことが可能なのですか……?」

「理論的には可能だ。例えばA級チート『剣豪』がS級チート『剣聖』へと進化するように、同系統のチートは完全別個というわけではなく縦に繋がっているのは知っているな?」

「もちろんです。当初『剣豪』を付与された転生者が、異世界で研鑽を積んだことにより『剣聖』にたどり着いた――なんて話は有名ですし」

 『昇華』と呼ばれるチートの進化システムだ。
 下位のチートは様々な条件を満たすことで、同系の上位チートへ進化することができるのだ。

「そしてそれと同じようにして、本来『最強』のS級チートである『剣聖』を、さらなるSS級さいきょうへと昇華させようというのが、このSS計画プロジェクトダブルエスというわけだ」

「――――!」

「SS級は完全なオーバーテクノロジーであり、同等の力を再現するのは今の技術では不可能だ。だがしかし既にあるもの、『剣聖』から繋げるだけならば、必ずしも不可能とさじを投げるほどのものではない」

「確かに! たしかに、二つの間にパスを繋ぐだけだったら……難易度は格段に落ちます!」
 それは暗闇に射し込んだ、希望という名の一筋の光明!

「もちろん、だからと言って実際にSS級チートを顕現させるには、それこそ命をけるような『何か』が必要だろう。もしかしたら命を懸けてすら、届かないかもしれない。世界の中心――ある種の特異点のような存在も、必要かもしれないね」

「成功する可能性は限りなく低い……けれど……!」
 これならば麻奈志漏まなしろさんを助けられる可能性は、十二分にある……!

「『剣聖』を昇華させるために必要なシステムは、既に組んである。万が一、《アガニロム》への転生者が現れた場合に、その機会を逃さないようにと極秘裏に開発されていたものだ。あとは最終調整でパラメータを設定するだけ。そしてアリッサ・コーエン、その最終調整を君に任せたい」

「……私に、ですか?」

麻奈志漏まなしろ誠也。彼のことを一番よく知っているのは、実際に面接した君だ。彼が《神滅覇王しんめつはおう》を顕現させるためには、彼に最も適した条件を設定するのが、望ましいだろう?」


 その後、この部屋からしか入ることができない隣の小部屋へと通された私は、『剣聖』の昇華システムの最終調整を始めることになった。
 《アガニロム》の危険性を考えれば、1分1秒でも早く完成させなければならない。

 修練、気合、根性、ガッツ、名声、自己犠牲、運、雰囲気、場の空気etc...解放に必要な各種パラメータを精査していく。

「根性とガッツは同じでは……? それに雰囲気、場の空気……?」
 この項目の存在する意味が、まったくもってわかりません……。

 でもでも。
 時に意味不明な異世界転生局の『仕様』に、今更突っ込んでもしょうがありません。
 今やるべきは、あの人のために、あの人のための最終調整を行うことのみ!
 それ以外はすべて、後回しですから――!

 各項目を見ていく中で、私の中に一つの答えが生まれていた。
 ううん、この答えは既に最初から決まっていたんだ――!

「全てのパラメータを最低値に……でも代わりに一つだけ、『想い』だけを最高値に――!」
 
 強い強い、誰よりも、何よりも強い『想い』。
 ただそれだけをトリガーとし、最強チート『剣聖』を雛型とすることで、《神滅覇王さいきょう》を顕現させる――!

「これだけの極振りをしてしまえば、完全な顕現は無理かもしれません。それでも顕現さえできれば、最強SS級チート《神滅覇王しんめつはおう》の力を30%――いえ20%でも行使できれば――!」

 だからこの一点突破に、私は賭けます――!

 あとは、あの人次第。
 ……だけど私は、成功の可能性を微塵も疑ってはいなかった。

 だってそうでしょう?

「異世界への並々ならぬ希望と愛を抱いていた、四万十川の清流よりも美しく、マリアナ海溝よりも深い、そんな異世界への最強の想いを持った麻奈志漏まなしろさんなら、きっと向こうの《神滅覇王さいきょう》にだってたどり着いてみせるはずだから――」

 ある種の確信を胸に抱きながら、私は完成の報告を告げに行った――。
しおりを挟む
感想 289

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!

霜月雹花
ファンタジー
 神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。  神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。 書籍8巻11月24日発売します。 漫画版2巻まで発売中。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

処理中です...