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第四部 古の盟約(いにしえのめいやく) 異世界転生 12日目(前編)

第237話 べんとらー、べんとらー

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「で、《精霊神竜》は俺と――《神滅覇王しんめつはおう》とやりあいたいんだろ? 精霊殿ってとこにいるんだよな?」

「そうだよ? でもアンタたちに行けるかなぁ? 精霊はアストラル界にいるからね、まずはアストラル界に入らないと何もできないんだよーっだ! ってイタタタタ! やめて、腕がもげちゃう! もげちゃうから!?」

 小生意気な精霊さんを《神焉竜しんえんりゅう》が折檻していた。
 すぐにキレて手が出る《神焉竜しんえんりゅう》も大概だけど、精霊さんは精霊さんで囚われの身なのに、すぐ調子にのりすぎだぞ……。

 でもどうする?
 アストラル界ってとこに行かないとなにも始まらないわけだけど、

「どうやって行くんだ? そもそもどこにあるんだ?」
 精霊さんからその辺もろもろを聞きだそうとした時――、

「じゃあクレアが案内しますー」
 のほほんとした声があがった。
 もちろん巫女エルフちゃんだ。

「えっと、案内って……?」
「案内は案内ですよー、じゃ、みなさん、クレアについてきてくださいねー」

「え? ええぇぇ……っ!?」
 そんな軽いノリで行けちゃうの……?

 …………
 ……

 移動すること数分。
 良く分からないままに巫女エルフちゃんに連れてこられたのは――、

「……ここって、エルフ村の入り口だよな?」
 ウヅキとのデートで最初に説明されて行ってみたものの、特に何があるわけでもなかった村の入り口だった。

 雪が積もり始めて真っ白なせいでだいぶん印象が違うけど、何もないことは変わりない。

「こんな何もないところで、なにをどうしようってんだ?」
 そんな俺の疑問に、巫女エルフちゃんはスマイルオンリーで応える。

 その笑顔の可愛さときたら「あ、この女の子って俺に気があるな、間違いない」と勘違いすること請け合いの極上のモテかわスマイルだった。

 そしてモテかわ巫女エルフちゃんはというと、

「べんとらー、べんとらー、精霊せーれー世界にGoごー! べんとらー、べんとらー、精霊せーれー世界にGoごー!」
 適当すぎる(ようにしか聞こえない)呪文を唱え始めたのだった。

「べんとらー、べんとらー」

 必死に祈ること数分――、

「なっ!?」

 一瞬、周囲がぶれたかと思うと、いつの間にか目の前には壮大な神殿がそびえ立っていた。
 さっきまで激しく降っていた雪も跡形なく消え去っている。

「は? ええぇっ?」
 正直な感想を言っていい?

「初めて巫女エルフちゃんが巫女っぽいことをした!」
 巫女エルフちゃんは、治療と称してえっちな遊びをするだけの「自称・巫女」じゃなかったんだな!

 しかもよく分からないけど、マジですごいことをやってのけたっぽい!!

「ふむ、世界の二重螺旋……アストラル界と物質世界の捻じれを利用して、周囲の空間ごと位相同調させたのか」
 《神焉竜しんえんりゅう》が大変に難しいことを言っていた。

「そんなかんじですー。ちょうど村の入り口が、アストラル界の精霊殿の入り口と同じ概念位相にあるのでー、ここからならいーかんじに繋げられるんですー」

 しかも巫女エルフちゃんはそれにさらっと受け答えしていた。
 すでに俺は理解するのを諦めていて、「つまりワープしたんだろ?」と思うことにしていた。

「しかしさすがのわらわもこれには驚かされたのじゃ。わらわですら見ることがやっとのアストラル界に、空間ごと転移させるとはの。これはもはやSS級の転移術……エルフの小娘よ、お主いったい何者じゃ?」

「巫女エルフですからー」
 《神焉竜しんえんりゅう》すら驚くようなことをしながら、いつものフレーズで返しちゃう巫女エルフちゃんってばマジ大物!

 っていうかこの人たち、さっきからなにを話してるの?
 俺さっぱりついていけてないんですけど?

「なにがどうなったのかさっぱりだけど、うん! すごい、すごすぎるぞ巫女エルフちゃん!」
「これくらい、ふつーですよー」

 そして何よりも誰よりも一番驚いていたのが、

「はいぃぃぃぃぃぃっっっっっっ!!??」
 目を大きく見開いて呆然としている精霊さんだった。

「とりあえずアストラル界には行けたみたいだけど?」
「ぽっかーーーーん…………はっ!? きょろきょろ……ま、まぁ、その? アンタたちもなかなかやるみたいね? まぁ来ないと始まらないんだし、来れて当然だから?」

「いやお前『アンタたちに行けるかなぁ?』って嫌らしい笑みを浮かべながら言ってただろ……」
「イチイチうっさいわねっ!? アンタ《神滅覇王しんめつはおう》のくせに細かいこと気にしてんじゃないわよ!」

「なんで俺が怒られにゃならんのだ……」
「いいから次よ次っ! 勝負はここからが本番なんだから! 覚悟してなさいよ!」
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