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異世界転生 16日目

第359話 マナシロ狼さん

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「……あ、悪魔?」

「はい。私の中の悪魔は、ときどき私の外に出てきて暴れようとするんです。そして私の祈りは、その悪魔を鎮めるためのものなんです。誰でもない、私自身のため……私の心の中の悪魔を抑えるための、私利私欲のための祈りだったんです」

 ティモテの話はあまりにも突拍子がなかったけれど、その声色は、顔の表情は真剣そのもので。
 だからきっとこれは真実を話しているのだと、そう思った。

「……でもそれが周りからは敬虔な祈りだと勘違いされちゃって。いつしか未来の教皇候補なんて言われるようになっただけなんですよね……」

「その、悪魔とか、ちょっとよく話が見えないんだけどさ……」

 真剣なティモテの言葉に応えるためにも、俺も適当じゃなくて、ちゃんとした答えを返さないといけない――。

「物心ついたころから、私の中にはずっと――」

「ティモテ……」
 
「……なーんて! これも冗談でした。ごめんなさい、真夜中のテンションで、ちょっとだけいたずらしちゃいました。ふふっ、どうでしょうか。私ってばとっても悪い子でしょう?」

 そう言っておちゃらけてみせるティモテからは、さっきまでの雰囲気はまったく感じられなくて――。

「もう、なんだよ、びっくりさせるなよぉ」
「いたずら、大成功でした。私は役者としてもやっていけるかもしれませんね」

「おいおいまったく……そんないたずらが過ぎるいけない子には、俺もいたずらしちゃうぞ? 狼さんだぞ、ぐへへへ……」

 言って俺は、ティモテを襲うふりをする。

「きゃー、マナシロ狼さんに食べられちゃいますー」

 ティモテも楽しそうにそれに乗っかってくる。

「ふっふっふ、美味しそうなシスターだな、じゅるり……うりうり、イケナイシスターさんは狼さんがひん剥いちゃうぞー」

 俺はティモテのミニスカートの裾に手を伸ばして――、

主様ぬしさま、夜も更けたというのにこれまたえらく楽しそうじゃのぅ」

 突然かけられた声に、俺の身体はピタッと制止した。

 声のした方向にゆっくりと振り向くと、

「こんばんはなのじゃ主様ぬしさま

 開いた扉に寄りかかるようにして、《神焉竜しんえんりゅう》が立っておられました。

 俺のことを不機嫌そうに睨んでいます。
 どうやらとてもお怒りのご様子でした。

「こ、こんばんは、《神焉竜しんえんりゅう》……いやそのね? これはちょっとした戯れというか、ほんと、ただの冗談で……」

「ほう、女子おなごの部屋に深夜に入り浸り、さらには冗談でスカートをめくっていたと主様ぬしさまはそう言いたいわけなのじゃな?」

「ま、まだめくってはいないよ! まだ全然未遂だし!」

主様ぬしさま、まずは落ち着いて手元を見るがよいのじゃ」

 言われるがままに俺は自分の手元を見てみた。

 すると、なんということだろうか……!

「め、めくっている……! 俺の右手が、いつの間にかティモテのスカートを半ばまでめくってしまっている!? パンツが見えそうになってしまっている!?」

「で、主様ぬしさま。なにか言い残すことはあるのかのぅ?」

「うぐっ……突きつめればその、米粒ほどの出来心はなくもなかったというか……も、もう いけない右手ちゃんだな、ぺちん! なんちゃって……」

 そんな俺の誤魔化しを見て、《神焉竜しんえんりゅう》の怒りはさらに増したようだった。
 だよね、茶化したら怒られる場面だよね。

 やばいよ、マジやばい。
 どうしよう。

 何がやばいって、今は手元に日本刀クサナギがないんだよね……。

 軽く歩いたら戻るつもりだったので、自分の部屋に置いてきてしまったよ……。
 つまり最強S級チート『剣聖』が使えない……となると当然、《神滅覇王しんめつはおう》も使えない……。

「シスターよ、主様ぬしさまが迷惑をかけたの。あとはわらわに任せるがよいのじゃ」
「いえ! マナシロさんは全然そのようなことは!」

「よいよい、気を遣わずともよいのじゃ。わらわはすべて見ておったゆえ。ぐへへと言いながらスカートをめくろうとしていたところをの」

「ぶ――っ!」

「では主様ぬしさま、ついてくるのじゃ」
「え、いやその……俺もそろそろ寝ようかな、なんて思うんだけど……明日、いやもう今日か、は大事なタイミングだし?」

「そんな大事なタイミングに、主様ぬしさまは夜に女子おなごの部屋にやってきてはスカートをめくって遊んでいたわけじゃの?」

「……」
 か、完全に藪蛇やぶへびだった……!

「なに、少しお灸をすえるだけじゃ。大して時間は取らせぬのじゃ」
「……あの」

「なんじゃ主様ぬしさま? 言いたいことがあればどうぞ、言えばよいのじゃ?」
「……な、なにとぞ、お手柔らかにお願いします……」

「それは主様ぬしさまの態度次第じゃの」

 そのまま俺は、《神焉竜しんえんりゅう》に半ば引きずられながら、ティモテの部屋を後にしたのだった……。
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