雪女と鬼の長

河伊

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性教育講座

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朝餉の片付けが済むと、トキは何冊か本を持ってきて六花の前に座った。オホン、と咳払いをして気合い充分だ。

「それでは奥方様」
「それなんだけど、私はまだあいつと結婚してないし、奥方様と呼ばれるのは慣れてないから六花でいい」
「では六花様。恐れながら指南役としてお教えさせていただきます。まず始めに、六花様がどれほどの知識をお持ちか確認させてください」

トキは眼光鋭く六花を見据えた。

「どうやって赤子を作るか、ご存知ですか?」
「……? 赤子は作るものじゃないけど……」

トキはもう頭を抱えて蹲りかけた。どうやらトキの期待した答えではなかったらしい。

「……雪女はどうしたら赤子を腹に宿すのですか?」
「成長して月のものが来れば、そのうち自然に腹に宿る。授かりものだから一生産めないものもいれば、ポンポン産むものもいる」
「男がいなくても赤子はできる、ということですか?」
「そうだけど……鬼は違うの?」

トキは重苦しく頷いた。
六花はピンと来て、ある結論にたどり着いた。

「あいつが夜、私の股にマラを入れることが、子作りなの?」
「そうです! その通りです!」

トキの顔がぱあっと明るくなったが、反対に六花は血の気が引いた。

「じゃ、じゃあもう私の腹には赤子が……」
「いえ。子供が授かりものなのは鬼も同じです。簡単にはできません」
「そう。ならまだ赤子はできてないんだね」

六花はホッと胸を撫で下ろした。雪女の郷から追われる身の六花は、重荷となる子供を産む気は全くない。それに六花の子供となると、雪女の頭領の血を引くものだ。頭領がその存在を知れば黙っていないだろう。


トキは持ってきた本をパラパラと開いた。そこには男女が裸でもつれ合う絵がいくつも描いてあった。

「この本は?」
「春画でございます。男女の交わりの絵が描いてあります。六花様は魔羅はご存知なのですね?」
「あいつが口にしていたから……」
「たいていの生き物は、女の股に男の魔羅を挿れて、精液を出して子作りするのです。ですが、子作りを目的としなくても交わります」
「何のために?」
「快楽のため、男女の愛のためでございます。酒吞様に抱かれて気持ちよくありませんでしたか?」

六花は黙った。体は酒吞に抱かれた快感を覚えている。口を吸われ胸を揉まれ、最奥まで突かれる。その気持ちよさを思い出すだけで、六花の脚の間は濡れてしまう。
沈黙を肯定と受け取ったのか、トキは眩しいものを見るように微笑んだ。

「愛されて抱かれる気持ちよさは格別でございます。気持ちが通じ合えば赤子もできやすくなります」
「別に私は、あいつを愛してなど」
「酒吞様が六花様を見初めて連れてきたことは伺っております。いつか気持ちが追いつく日が来ましょう」

そんな日は来ない、と六花は言いたかったがトキには何を言っても無駄だと感じた。トキは鬼だからどうしても酒吞の味方なのだ。
「ただ」とトキが難しい表情になった。

「ただ酒吞様は鬼の長で、最も強い鬼ですからそう簡単に赤子ができないのです」
「何故?」
「酒吞様は強すぎるあまり、精液にまで強い妖力が含まれております。弱い妖怪では耐えられず、精液を浴びただけで死にます。酒吞様の奥方となる方は、まずこの精液に耐えられることが第一条件なのです」

六花は途端にゾッとした。そんな恐ろしいものをこちらに何の承諾もなしに腹に解き放ったのかと、酒吞に対して怒りが湧いてきた。

「あいつ、私に何も言わずに勝手に精液を出した。私の腹が痛んだらどうしてくれるんだ」
「でもお元気ではないですか。そのご様子なら大丈夫です。耐えられないものは、一夜目の交わりで床から起き上がれないほどになります。二夜目の交わりで体を壊して三夜目を迎えられません」
「三日三晩交われば結婚と聞いてたけど、体が耐えられるか確かめるためだったの?」
「そういうわけではなく、ただの鬼の文化なのですが……結果としてそうなっています」

(じゃあ三夜目まで耐えられなければ結婚できないってこと? 今日の夜、お腹に出されたらお腹が痛くなったフリしようかな)

六花がお腹が痛いと言ったところで、酒吞はやめない気もするが一回試してみる価値があるような気がした。

トキは本のあるページを開き、六花に見せてきた。

「こちらをご覧ください。女の体の気持ちいいところが描いてあります」
「乳首はわかるとして……これは?」
「陰核でございます。ほと、さね、豆など色々な呼び方がございます。女の魔羅のようなものです」
「じゃあ私の陰核を、酒吞の股に挿れることができるの?」

ふふふ、とトキは笑い出した。馬鹿にされているように感じて六花はむっとした。
トキはすぐに「オホン、失礼しました」と表情を正した。

「女の魔羅と言っても、男と比べたら小さすぎます。それに男にはまんこがないので挿れられません」
「まんこ……」
「膣とも言います。赤子を産むときの通り道です。まんこに男の魔羅を入れて、交わるのでございます。まんこも女の気持ちいいところです」

六花は腹いっぱいに酒吞の魔羅で満たされたことを思い出した。六花の感覚では下腹に挿れられたような気がしたが、実際は腹ではなく膣に入っていたらしい。

「話を陰核に戻しまして、ここはとても敏感なので触られただけですぐ気持ちよくなるでしょう。しかしもっと敏感になる方法がございます」
「何?」
「陰核の皮を剥くのでございます」
「えぇっ!?」

六花の脳内には、皮を剥がれ筋肉が丸見えになっている罪人が思い浮かんだ。

「こ、こんな小さなところの皮を剥ぐ……拷問でしょ。絶対気持ちよくない」
「剥ぐ、ではなく剥くでございます。弄られた陰核はぷっくり膨らんで皮からはみ出るので、割と簡単に剥けるのです。そして皮を向かれた下にはさらに敏感な薄皮がございますから、それを舌で舐められた日には天にも上る心地でございます」

想像するだけで六花の下腹部はキュンキュンと疼いてきた。綺麗な着物の下で、まんこがヌルヌルと湿っている。
ふと六花は気になっていることを聞いてみた。

「酒吞に触られるとまんこが濡れるの。漏らしたかと思ったら酒吞は違うと言ってたけど、これはどういうこと?」
「それは魔羅を受け入れるために体が出す愛液でございます。体が高ぶるとお漏らしのように出てしまうこともありますが、汚いものではございませんよ」
「そうなんだ……」

六花はホッとした。酒吞の前で漏らした挙げ句、そこを舐められたのかと思っていた。どうも尿ではないと思っていたが、他人にちゃんとそう言われると安心した。

トキはページを捲り、今度は男の体が描かれている部分を見せてきた。

「六花様だけが気持ちよくなるのではなく、酒吞様のことも気持ちよくして差し上げねばなりません。男の体の気持ちいいところはずばり、魔羅でございます」
「わ、私も触ったり舐めたりしないといけないの?」
「無理にとは申しませんが、妻となるからにはご奉仕するべきでしょう」

トキは以下のように話した。
まずは優しく口づけをし、亀頭を優しくねっとり舐める。(ここで「亀頭って何?」と六花の質問が入った)。
根元を手でしごきながら裏筋など全体を舐める。そして口の中に入れ舌を絡ませながらも、口を窄めてジュポジュポと出し入れする。
大事なのは噛まないこと。魔羅は男の最大の弱点である。

(む、無理……絶対にあんな太いもの口に入らない……)

六花は早々に諦めて、トキの話の後半はちゃんと聞かなかった。とにかく噛まなければいいのだろう。そんな命知らずなことは六花とてやらないから大丈夫だ。


それから「男をそそる艶っぽい声とは」「口では嫌々言いながらも、体は快楽に素直に」などトキ独自の情事の哲学を六花は聞かされた。
昼餉の時間が近くなると、トキは「話しすぎました」とハッとなった。

「私は昼餉の用意をします。午後もご指南して差し上げたいところですが……夜の準備があるので今日はここまでにしておきます。この本は渡しておきますので目を通しておいてください」
「わ、わかった。ありがとう……」

六花は本を受け取った。トキの一方的な話に六花も疲れ果てていた。

トキが台所に行くのを見てから、六花は厠に急いだ。トキの講義を受けている間ずっと股が濡れていて、着物についていないか心配だった。幸い、着物は無事だった。
六花は紙で秘部を拭いたが、拭っても拭っても秘部はヌルヌルしていた。
咄嗟に魔が差して、六花は花芯へと指を伸ばした。チョン、と指先が触れただけで六花はビクッとなった。

(こ、こんな汚いところ、やっぱり触れない……なんで酒吞は触るどころか舐めることもできるんだ……理解できない)

「男女の交わりとは挿れればいいというものではないのだ。互いに気持ちよくならなければ意味がない」

六花は昨日、酒吞がこう言っていたのを思い出した。
酒吞は六花を気持ちよくするためにあちこち触ったり舐めたりしているのだろう。六花が汚いと思うところすら、躊躇いなく舌を伸ばす。六花にそんなことはできない。

(……あいつは気持ちよくなっているのかな)

厠から出て、六花はトキからもらった本をペラペラと捲ってみた。予想を遥かに超える、信じられない体勢で交わっている男女の絵が目に飛び込んできた。

六花は本を箪笥の奥深くにしまいこんだ。やはり自分にはできない、という意思をさらに強くした。


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