記憶を無くした魔法使いと、彼を愛する一人の弟子

てんつぶ

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弟子が見た師匠

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 それはある日突然だった。本当にそれは普段の朝に唐突に吹き荒れた嵐だった。
 寝起きの悪い師匠の布団をいつも通り引ん剝いて起こすと、いつもならゴネてゴネて煩い師匠が、ぱちりと目を開けた。

「ごめん、きみ、だれ?」

「は?」

 俺を見つめるすっきりとした淡い碧色の瞳は、まるで知らない人間を見るようだった。10年、弟子として暮らしている俺を、だ。

「ふうん?僕の弟子?へえ~僕が弟子なんてとる日がくるとはねえ」

「村に師匠が来てくれて、俺を引き取ってくれましたけど」

「へえ?僕が?すごいなあ」

 自分の事を他人ごとの様に話す師匠は、一見いつもの師匠だ。その話をまとめて総合させると、ちょうど俺を拾う辺りから記憶が無いらしい。なので精神年齢としては師匠は今、俺と殆ど変わらないという事だ。
 まあ、10年前と殆ど外見も内面も変わっていない師匠は、俺にしたらそう違和感は無かったのだけど。
 他人にあまり興味が無かったのも、大して変わらない。




 動くたびにサラサラと揺れる髪の毛はとても綺麗で、滅多に見ないはちみつ色だ。
 人好きするような優し気な瞳は淡い碧色で、吸い込まれそうな美しさに人はつい見惚れてしまう。
 その肌は白く滑らかで、ローブから覗く手や首筋はなまめかしく見える……いや、俺の偏見かもしれない。俺よりも少しだけ目線が下がる彼は、傭兵と間違われる自分と一緒にいれば、確実にか弱い印象を与えるはずだ。魔法使いらしいそれなりの体格なのに。

 まあそれも全て、黙っていればの話だけれど。

「師匠!!あなた何してくれてるんですか!?」

「ナナオごめんよ。なんか失敗しちゃったみたいで」

「失敗、じゃないです!夕飯全部ぶちまけて!アホですか!」

 魔法の腕は一級品どころか特級品、外見だってそうなのに、なんでか中身が伴わないのがこの師匠だ。普段はなんだかぼんやりふわふわとしていて、こうして触るなと念をおした鍋すら倒すという間抜けぶり。
 火傷したらどうすんだ。

「全くナナオは口が悪いなあ。誰に似たのやら」

「10から師匠に育てられたんで、師匠のせいですかね」

「はいはい、僕が悪いよー。……はい、これでいいでしょ」

 手をかざせば一瞬で鍋もスープも元の位置に戻った。数分であれば時間すらも戻せる。これが他に類を見ない天才魔法使いの力だった。
 記憶を失った今でもそうなのだから、本当に恐ろしいと俺は思う。


 食事が終わると、師匠は出されたお茶を一口飲むと、俺に改まった。

「ねえナナオ、僕の記憶の事なんだけど」

 記憶を失ったこの一週間、師匠はずっと文献を漁っていた。時には王立図書館に転移しては様々な書物をあさっていたらしい。

「僕はこれを人為的なものだと考えるんだけど、どう思う?」

「人為的……というと、誰かが師匠の記憶を奪った、って事ですか?」

 穏やかではない話に、思わず食器を洗っていた手を止める。
 師匠の方に視線を移せば、話の内容の割にはいつも通りのんびりとしていた。

「うーん、まあ。こういったら何だけど、僕多分世界一の魔法使いだと思うんだよね。だからその僕に干渉できる人間なんて本当にいるか?とも思うんだけど。うーんまあ、心当たりがない事もないかなあ……」

 確かにその自己評価通りに師匠は恐らく世界一と言っていい魔法使いだ。
 わずかながら時間を操る事ができ、失った命までは戻らないとはいえ、ケガや被災した建物なんかも師匠にかかれば一発だ。
 それ故利用される事も多く敵も少なくないし、人目につくことを嫌がった彼は殆どこの森の中で俺と一緒に暮らしていた訳だ。隠ぺい魔法を辺りにかけているここには、並みの魔法使いではたどり着けないはずだ。

 そんな師匠の魔法を潜り抜けて来る相手……。俺はその姿の無い敵に一瞬恐怖した。だが師匠よりも力は劣るにせよ、俺も魔法使いの端くれだ。
 師匠を――惚れた相手を守りたい。


 それなのにその日から師匠はぱたりと調べる事をやめてしまった。相手が分かったのだろうか、以前と変わらずのんびりと、いや以前以上に俺のやることを楽しそうに覗き込んでくることが増えた。

「へえ、君はとても器用なんだねナナオ」

「まあ、魚くらいは捌けますよ。街で教えて貰いました」

 俺たちの住む森の中には大きな泉があり、そこには様々な川魚が生息していた。
 そういえば魔法で一瞬で捕まえられるのに、趣がどうとか言っては何時間も掛けて釣りをしていたことを思い出して笑った。

「おや、ナナオも笑うんだね」

「……俺だって笑いますよ。師匠が俺を怒らせるだけで」

「ふふふ、君は笑うととても素敵だね、ナナオ」

 ふわりと華が開くような笑みに、ほんの少し見とれてしまうのは許して欲しい。
 ただでさえ見た目が良いのに、俺だけにしか見せない甘い顔に優越感すら抱くのは仕方の無い事だろう。
 あの村から救い出されて10年、俺にはこの人しかいなかったのだから。




 買い出しに行くと言った俺に、師匠は珍しくついてきた。人嫌いの師匠は、用事があればいやいや転移していく筋金入りの引きこもりだ。まさか転移できない俺にくっついて、街まで歩いていくとは信じられない。明日は空から槍でも降るかもしれないな。

「はい、師匠は目立つので、きちんとフードを被っていてくださいね」

「わかってるよ。本当にナナオはまるで僕のお母さんだ」

「俺にはこんな年上の子どもはいませんよ」

 被せたフードの隙間から覗く金髪が揺れ、どうしても人目をひく。
 街を歩く人々は殆どが無彩色の髪色で、美しいはちみつ色のそれに目を引かれれば、さらに繊細な師匠の美貌に視線を縫い留められる。
 そうして何人もの男女が師匠に見惚れている姿を横目に、俺たちは目的の場所へと歩いて行った。

「おや、ナナオ!いらっしゃい!例のやつ取り寄せてあるよ!」

 ドアを開ければこの店の薬師―――エリザが明るい声を掛けてくれた。
 豊かな黒髪に豊満な身体つき。愛想が良くて誰にでも好かれるエリザは、この店どころかこの商店街でも有名な看板娘だ。数か月に一度しか来ない客である俺の名前まで覚えてくれているのだから、師匠がいなければ俺だったら逆上せていたかもしれない。そんな魅力的な女性だった。

「ん、初めましてだね。そちらさんは。なんだい、あんたのイイ人かい?」

 師匠を見たエリザがそんな風に声を掛けるから、俺は一瞬この気持ちを見透かされたのかと焦った。

「初めまして。僕はナナオと一緒に住んでるんだ。よろしくね」

 なのに師匠はそれを否定もせずに受け流すから、それはそれで変な汗をかいたのだが。取りようによっては際どい発言なのを知ってか知らずか。
 案の定、勘違いしたようなエリザはにんまりとした笑みを浮かべて、俺の脇腹を叩いた。

「やだねナナオ!あんた、ずっと女の子たちを袖にしてきたのはこの人がいたからかい!?早くお言いよ、水臭い!」

 バシバシと俺の脇腹を叩き続けるエリザ。いくら鍛えているとはいえ、それなりに痛いのだが。

「へえ、ナナオはもてるんだねえ」

「そうなんだよ、こんなゴツイ身体してる割には紳士だろう?それに一握りしかいない魔法使いだ。街の女の子なんてキャーキャーいってねえ―――おっと。ごめんよ、良い人の前でする話じゃなかったね」

「ううん、僕の知らないナナオの話が聞けてよかったよ」

 珍しく愛想を振りまく師匠を、俺はどこか落ち着かない気持ちで見ていた。目的の薬も買ったしもう帰ろうと思ったその時。

「ちょいとお待ちよナナオ。あんたこんな綺麗な人がいながら、なんで性欲を押さえる薬なんて欲しがるんだい?回数が多いなら相談に乗るから、こんなきつい薬はやめた方がいい」

 薬師としての責任感か、単に俺個人への忠告なのか。エリザの問いかけに曖昧な笑顔を浮かべて逃げる様に店を出れば、案の定師匠は複雑そうな顔をしていた。

「ナナオ、さっきの話。本当?」

「は?いや、本当です、けど」

 珍しく真剣な顔をした師匠が詰め寄ってくる。
 近づけた顔は10も年上なのが信じられない程に瑞々しい。力を持つ魔法使い特有の若々しい滑らかな肌だ。
 
「ふうん、そう、そうなんだ」

「いや、あの。これには理由があって」

 性欲を抑える薬を飲んでいる、その事実は俺がずっと隠してきた事だ。だって仕方がないだろう?家には常に想い人が無防備に一緒に暮らしているんだ。性欲を知った思春期の頃には気が狂いそうで死にそうだった。
 この発散できない想いが暴走しないようにと、数年前から紹介されて服用していたのが、エリザの作るその薬。

「……師匠を守るためですよ」

「守るため?」

「っ、俺から!師匠を!あなただって男の俺に抱かれたくないでしょう!」

 ああ、ほらもう最悪だ。墓まで持っていくと誓った気持ちを、あろうことか本人相手に暴露してしまった。何故俺は急にこんな事を言ってしまったのか自分でも分からない。でも一度零れた水が元には戻らないように、もう全て包み隠さず伝える事が最善のように思えた。

「好きなんですよ!あなたが!あなたを抱きたくて仕方なかった!」

 俺に比べたら儚い位華奢な師匠の両肩を掴んで、そう思いのたけをぶつければ、彼は一瞬ぽかんとしたのち、なんだか――悪ガキのような笑顔を浮かべた。

「は……?」

 そして一瞬にして背景が変わり、師匠の手によって家の中に転移したことを知った。
 転移は別に初めてではない。だがこの告白のタイミングで、家を叩きだされるならまだしも何故家の中に転移されているのか。それも―――師匠の自室に。

「言ったね、ナナオ。僕が好きだって、言ったね?」

「は、い―――んっ」

 飛ぶような勢いで抱きつく師匠の身体を受け止めれば、何故か唇を吸われる。
 驚いた拍子に開いたくちの中には舌が入り込み、俺は一体何をされているのか分からなくなる。

「ちょ…っ!ちょっと!師匠!!」

 その顔を引きはがせば、明らかに不満そうな師匠がいた。すこし垂れた口元の唾液を伸ばした舌で舐めとる仕草は厭らしくて―――そういえば今日はまだエリザの薬を飲んでいなかったことを思い出した。
 一気に下半身に集まる熱を自覚して、師匠の身体を離す。

「やばい、師匠。いいましたよね、俺あなたが好きなんですよ?こんな……っからかうのはやめてください……!」

「からかっていないよナナオ。本当にきみは頑固だね?子どもの頃から何も変わっていない。あんな扱いをされてた村を出るときだって文句ひとつ言わないし、あの真鍮でできていた玩具だって、欲しそうにしていたのに言わずに我慢していただろう」

「な……っ、それはあなたが―――」

 言いかけて、はたと気が付く。昔?師匠はこの10年の記憶を失ったはずなのに。
 記憶が戻った?
 俺の視線で理解したのか、師匠はいたずらが成功したような楽しそうな顔で言った。

「記憶かい?戻っているよ。だって僕が僕にかけた魔法だからね。記憶が戻るキーワードは、ナナオが僕に愛を伝える事、だよ」

「は……?は!?」

 呆然と、座り込みそうになる身体を足を踏ん張って耐えた。それくらい目の前の男が言う言葉は衝撃的で、何を言っているのか理解が出来ない。

「ねえナナオ、君はそのキーワードを僕に伝えるとき……妙に素直になったりはしていないかい?隠していた気持ちがはなかった?」

「……あ、りました」

 そうだ、何故こんなことをと、何故ずっと隠していた気持ちを暴露しているのかと思いながらも、その言葉を止める事は出来なかった。まさか。

「多分記憶の無い僕が君に魔法をかけたんだろうね?自白……いや、素直になる魔法を。いやあ流石10年前の僕。自分の欲望に容赦ないよね。流石に君にその魔法を掛ける事は躊躇していたのに、あっさりやっちゃうんだから」

 自白って言ったな?
 いや、それよりも。師匠は自分で記憶をなくして、俺に……愛を告げさせる事で記憶を戻した。それは、何故だ?

「本当に、君は鈍いねナナオ。一緒に暮らしてきた男の気持ちに10年も気づかないなんて」

 そう言って唇を寄せてくる師匠を、今度は自分の意志で引き寄せた。







 ずっと撫でたいと思った肌を目に焼き付けたくて、不要な服は全て剥いた。
 下着一枚、装飾品の一切を取り払った師匠の身体は真っ白で美しい。
 今まで俺は何を見ていたのか。まさか師匠が俺を想っていたなんて知らずに、自分の気持ちに蓋をしていた。過去の自分を殴りたい位だ。

「ふぁ、あ……っ」

 何も隠す事の出来なくなった男の身体はひどく頼りなく、そして艶めかしい。
 髪と同じ色の下生えを優しく梳くと、その中心はピクリと硬度を増して震えた。
 白いシーツに寝ころんだ師匠に覆いかぶさり優しくキスをすると、嬉しそうに応えてくれる。顔を埋めた首筋からは、師匠の体臭が濃く香って俺の下半身を刺激する。

「ん、そこ……っ、首、弱いからっ駄目……っ!」

 耳から首筋にキスを落とせば、面白い位に体を跳ねさせる。
 堪えようのない甘い嬌声をもっと聞きたくて、しつこくそこに吸い付けば、薄い皮膚に容易く所有の跡がついた。真っ白な肌に残るそれが、まるで俺だけの男だという証のようで興奮して、首筋だけでは飽き足らず、鎖骨、そして胸へと移動してはその花びらを散らした。

「ひ……っうンっ!ん、や……っ!ナナオぉ……!ぼく、ほんとに、駄目だって、あっ!」

 胸元へと至った時に、その赤い尖りにも口を寄せた。
 口の中へ迎え入れてキツく吸い上げれば、細い悲鳴のような声がする。舌先で奥へと押し込み押し付ければ、俺の身体に寄せたその腰はくねくねと厭らしく動く。
 時折触れてくる固い男のモノが、俺が与えた愛撫に反応したものだと思うだけで無性に興奮を掻き立てた。

 募る愛しさに師匠の昂ぶりにそっと手を添えれば、つるりとした先端からは透明の涙が零れていた。

「ひ、……っあ!ナナオ、だめだよ……っ!離し、てっ!あああっ!」

 弟子は素直には師匠のいう事を聞かないものだ。
 言葉を遮って強く乳首を転がし、陰茎を軽く扱けば、それだけであっという間に手の中に白濁を放った。
 びくびくと断続的に震えるそれを、根元からグッと押し上げれば、中に溜まったモノがとぷとぷと溢れてくる。

 そうして見れば、なぜか枕で顔を隠す師匠がいた。
 恥ずかしいのだろうか、でもその顔が見たくて枕を取れば、意外と抵抗なくそれを渡してくれた。

「きみは……意地悪だねナナオ」

「でも師匠、気持ちよかったんじゃないですか?凄く沢山出てましたし……いて」

「ばか。ナナオのばか」

 顔を真っ赤にした師匠が、軽く頭を叩いてきた。可愛い。照れ隠し以外の何物でも無いそれを、俺は甘んじて受け入れた。
 師匠は一つため息をつくと、その両足を自分で開いて見せてくる。

「ほら、……恋人同士は……こっちだろう?」

 また何かの魔法を使ったのか、初めてみた師匠の後孔はとろとろと濡れそぼっていた。
 誘われるようにそこに指を差し込めば、一瞬だけ入り口が締まるものの、素直に俺の指を吸い込んだ。

「……柔らかい……」

「ふふ、濡らしたのは魔法だけど……柔らかい理由、知りたい?」

 そっと声を潜めた師匠の声に耳をそばだてる。
 いつもの美貌に加えて匂い立つような色気と、この指から伝わる淫肉の感触に、俺の頭が煮え立つようだ。

「僕がね、ずっと―――君を想ってココを弄ってたって言ったら……どうする?」

 普段の師匠からは考えられない程厭らしいもの言いに、俺はもう抵抗する手段など無かった。性急とも思えるほどその孔に指を差し入れ、二本、三本と足される指を易々と飲み込む淫孔に、俺は挿れたくて挿れたくて仕方がなかったのだ。

「はぁ……っ、師匠、入れ、ますよ……?」

「んあ……っ、は、やだ……」

 両足を抱えてそこに陰茎を宛がえば、すぐにでもそこに押し込みたい。それなのにお預けの言葉を出されれば、俺は一体どうしたらいいのか?
 人差し指をそっと唇に当てられ、師匠は肩で息をしながらも楽しそうに笑った。

「ナナオ……恋人は、名前でよびあうもの、だよ?」

「……っ!フィン……っ!!」

「あっナナオ……っあ、あっ――!!」

 どこまで俺を煽れば気が済むのか。師匠――いや、フィンが側にいるだけで俺の理性は直ぐに決壊してしまう。
 そして昨日まではエリザの薬を飲んでいたことに感謝をした。薬がなければきっとフィンにすぐにでも襲い掛かっていただろうから。

 一気にその身体を俺のモノで貫いた。

「っあ!ああっ……、う、ンっ、んんん…ああ…!!」

「……っく、フィン……」

 指で十分に解したそこはうねうねと俺に絡みつき、そして締め上げる。フィンの魔法によって潤うそこは、内部の熱さとぬるりとした感触で直ぐにでも果ててしまいそうだ。

 奥歯を噛み締め、ギリギリのところで射精を堪える。どうにか揺さぶりながら一番奥にまでソレを収めれば、フィンの腹にはねっとりとした水たまりが出来ていた。

「フィン……あなた、入れただけでイったんですか?」

「……弟子よ、こういう時は言わずにおくべきじゃないかな」

「今はただの恋人ですんで」

「ふ、ふふっ、そうだったね」

 笑うフィンの振動が内部に伝わって、俺の陰茎を締め付ける。正直ギリギリのところで堪えている身には、きつい。

「ね……ナナオ。嬉しい。君といつかこうしたいって、ずっと想ってたから。どう?君のために用意したトコ……きもちい?」

「っ!フィン、うごきます……よっ!」

 本当に、悪い師匠だと思う。どこまで俺を煽って、忍耐を試すのか。返事を待たずに腰を使って、きつく締め付ける孔をがむしゃらに穿った。

「ひっ、あっ!ああっ、ナナオ……っ、なな、お……っつよい、つよいよ……っ!」

「あなたがっ、煽るからでしょう……っ!どれだけ俺が、我慢していると……っ!」

「んんん!!!だめ、駄目そっちぃ……っ、いっしょ、だめっ!」

 美しいはちみつ色の髪の毛は汗でしっとりと濡れ、フィンがその頭を振る度に乱れて落ちる。とろけきったその碧の瞳は、駄目だと言いながらもっともっとと俺を誘って視線を逸らす事すら許さない。
 小さな赤い突起を指でさすれば、払いのけるつもりなのかもっと欲しいのか、俺の手首を握りしめた。

 ああ、もうたまらない。
 この美しい男を征服している圧倒的な所有欲、そして長年押し込めてきた気持ちを交わすことができた喜び、全てが混じりあってもう我慢できそうもない。

「っフィン、すみません……、出る……っ!」

「んっ、出し、て!いっぱい、ちょうだい……あ、ああっ!」

 ズン、と奥の奥まで押し込んで、俺はため込んでいた気持ちと共に射精した。ブルブルと、身体の全てが崩れ落ちそうなその快感は、腰の感覚を失いフィンの中に溶けてしまうようだ。
 きゅう、っと一際締め付ける後孔の動きで視線を落とせば、フィンも奥に放たれた衝撃で達したのだろう。ビクビクと薄いものを零して震えていた。

「は……っ、フィン……」

「ナナオ……」

 自然と重なりあう唇はお互い少しかさついていた。すこしだけそれが面白くて、その感触を楽しむように擦り合わせた。






「だーかーら!!フィン!あなたは食事の用意はしないって言ってるじゃないですか!また火傷したらどうするんですか!?」

「……魔法で治せるけどね?」

「そういう問題じゃないでしょう!?だいたい―――」

 恋人になったからと言って、俺たちの毎日は別段変わらなかった。
 俺はいつも通りに家事をするし、フィンは時折入る通信で魔法使いとしての才能を切り売りしていた。そしてたまに俺に魔法を教えてくれて……そして夜は、そうだな、ここだけ以前と違って共に眠るようになった。
 フィンの痴態に毎晩煽られ、俺はいつまでたっても振り回されてばかりだ。

 しかし振り回されるそれは、以前の苦しみを伴うものではなない。
 のほほんとした美しい男が見せる夜の姿。
 それは今もそしてこれからも、俺しか知り得ない幸せなのだから。
 


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