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【クレナイ視点】生まれた里の話
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「我が鬼神の一族を守りし大いなる御霊に畏みももうす。我が角を捧げし誓いを――と結ぶ、我が名は――。誇り高き血脈の交わりをもって、今、真の縁を結ぶ――」
時は戦乱。
小さな里で種族ごとに固まり暮らすはずのオレたち妖の世界で、ある日争いが起こった。
始まりは里同士の、ほんの些細な出来事だったと聞く。しかし争いは山火事のようにあっという間に燃え広がり、オレが生まれた頃には後戻りが出来ないほどだった。
そんな世に生まれ落ちた鬼神の里で、オレは生まれながらに神子と呼ばれた。
オレの持つこの赤髪は、鬼神の一族では『始まりの方』と呼ばれる遠い先祖だけだったらしい。何かと尊ばれ、祭事の際には実際に神子(みこ)として立つこともあった。
だが周りの同族は、家族すら皆黒髪で、里の中でオレ一人が異質だった。決して村八分ではないが、畏怖か尊敬――わからないが兎に角オレは遠巻きにされる存在だった。
それに拍車をかけたのは角がない事だった。
里の者は生まれて1年も経てば鬼神らしい立派な角が出ていたというのに、オレだけはいつまでたっても角が生えてこなかった。
長老曰く『始まりの方』もそうだったらしく、文献によれば縁を結んだとき――つまり、鬼神の一族で最も深い血の誓いである「授受の儀」を完遂した後に生えてきたのだそうだ。
そうして生えてきた始まりの方の角は、恐ろしい程の神通力を持ち、里を繁栄に導いた、と言う。
ならばオレは同じように、授受の儀を捧げられる相手を探す必要があった。
誰にでも行えるものではないその儀式は、お互いの魂を結びつけるものだ。体も命も全てがお互いに捧げられ、その血と交わりによって神通力を高めていく授受の儀は夫婦以上の繋がりとなって違えることは許されない。
今は僅かである神通力をより強大なものにするために、それがその戦乱の世に生を受けた神子としての責任だと思っていた。だが、魂を明け渡したいと考える相手に出会う事が無いまま、
しかし戦火はあっという間に広がり、種族間の対立も深まった。
オレが生まれて5年――鬼神は十で成人する――も経つと鬼神の里も巻き込まれる事となる。
寒い雪の深い夜だった。他種族同士が手を結び、難攻不落と言われた鬼神の里にまで侵攻の手が伸びてきた。何故鬼神の里を狙ったのかは分からない。中立を宣言したはずの我らの里は、表面上は豊かで平穏だった。それがひょっとしたら気に入らなかっただけなのかもしれない。
数の暴力に対抗できるほど里の人数は多くない。必死で戦う男たちに追い立てられて、炎と怒号の乱れる里を後にした。里に積もる雪は煤と血で汚れ、わずかな里の女たちに手を引かれ、オレを含めた子供たちは必死で走った。
追いかけてくる敵から必死で走った。無我夢中で林を駆け抜け山に入り、どうにか追っ手から逃げ延びた頃には周りに同胞はおらず、オレは声を上げようとした瞬間、一人雪に足を滑らせ崖から落ちたのだ。
時は戦乱。
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長老曰く『始まりの方』もそうだったらしく、文献によれば縁を結んだとき――つまり、鬼神の一族で最も深い血の誓いである「授受の儀」を完遂した後に生えてきたのだそうだ。
そうして生えてきた始まりの方の角は、恐ろしい程の神通力を持ち、里を繁栄に導いた、と言う。
ならばオレは同じように、授受の儀を捧げられる相手を探す必要があった。
誰にでも行えるものではないその儀式は、お互いの魂を結びつけるものだ。体も命も全てがお互いに捧げられ、その血と交わりによって神通力を高めていく授受の儀は夫婦以上の繋がりとなって違えることは許されない。
今は僅かである神通力をより強大なものにするために、それがその戦乱の世に生を受けた神子としての責任だと思っていた。だが、魂を明け渡したいと考える相手に出会う事が無いまま、
しかし戦火はあっという間に広がり、種族間の対立も深まった。
オレが生まれて5年――鬼神は十で成人する――も経つと鬼神の里も巻き込まれる事となる。
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追いかけてくる敵から必死で走った。無我夢中で林を駆け抜け山に入り、どうにか追っ手から逃げ延びた頃には周りに同胞はおらず、オレは声を上げようとした瞬間、一人雪に足を滑らせ崖から落ちたのだ。
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