ショートストーリーまとめ

てんつぶ

文字の大きさ
20 / 77

ポメラニアンになった兄 20230714

しおりを挟む
受けくんは今日も兄をワシャワシャと可愛がる。正確にはポメラニアンになった兄を、だ。
ストレスがたまると兄はポメ化してしまう体質で、大変そうだけど、受けくんはいつもそれをこっそり「いいなぁ」と思ってた。
少なくともポメ化したら皆に可愛がってもらてるのだ。
自分だって兄みたいに甘やかされて可愛がられたい。受けくんはこっそりそんな願望を抱いていたけれど、いい歳をしてそれを言うのははばかられた。だから今日もポメ化した兄を撫でて、そしてポンと人間に戻る兄をただ見つめていた。
「こんな体質もうヤダ」という兄にまさか自分がそうなりたいなんて言えるはずもない。
こっそり自分で自分の頭を撫でても満たされるはずもなく、ある日こっそりと隣の幼なじみくんの家に忍び込んだ。
別に何かしようという訳じゃない。隣のおばさん曰く、いま寝ている幼なじみくんの手を借りて、頭を撫でて貰うだけだ。親にも恥ずかしくて言えないが、ただ手を借りるだけなのだから問題ない。そうっと忍び込んだ幼なじみくんの自室は、そういえば久しぶりだった。中学から少しづつ距離ができて、高校では同じところに進学したのにすっかりつるまなくなったからだ。
寝ている彼が目覚めないように、そっと腕を持ち上げ頭に乗せた。
「……なにしてんの」
途端に幼なじみくんの声が。わたわたと慌てる受けくん。なんで、どうして、と言いたかったが、それは向こうのセリフだろう。勝手に受けくんが忍び込んできているのだから。
言い訳を許さないようなその視線に、受けくんは洗いざらい話した。ナイショだよ、と釘を刺して。
兄がポメ化すること、人に戻るには甘やかす必要があること、それはいつも自分の役目で、羨ましくて仕方ないこと。自分で自分を撫でても満たされなくて幼なじみくんの手だけこっそり借りて撫られようとしたこと。
全部吐き出すと幼なじみくんは大きな大きなため息をついた。
そりゃ不愉快だよね、勝手に利用されかけたんだもんね、と反省する受けくん。
「誰がどんなつもりで距離置いたと」
幼なじみくんがそう小さな声で絞り出すような呻いた。
それから受けくんを抱きしめた。びっくりする受けくんの頭をワシャワシャと撫でる。大きな手は意外にも優しくて、髪の毛を梳くようにして撫でられるのは心地よい。
次第にトロンとする受けくんを幼なじみくんは改めて抱きしめる。
「いつでも撫でるし、甘やかしてやるよ」
その代わり俺と付き合え。幼なじみくんは受けくんにそう言った。
なんと彼は昔から受けくんの事が好きだったらしい。だけど告白も出来ずに距離を置くしか無かったのだと。
「諦められない。やっぱ好きだ。俺ならお前を誰より可愛がってやる」
次々飛び出す甘い言葉に、受けくんの方が顔を赤くする。
とりあえずお試しで付き合う事になり、彼氏となった幼なじみくんはそれはもうトロトロに甘やかしてくれた。次第に心を通わせて、受けくんも本気の恋になるんだけど、それを知ったポメ兄(ブラコン)が、キャンキャンと幼なじみくんに噛み付くのはいたし方ないことなのかもしれない。
ポメにはなれない受けくんだけど、ポメよりも可愛がられる日々にふにゃっと笑みを崩すのだった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私の庇護欲を掻き立てるのです

まめ
BL
ぼんやりとした受けが、よく分からないうちに攻めに囲われていく話。

【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?

キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。 知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。 今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど—— 「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」 幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。 しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。 これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。 全8話。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

【8話完結】いじめられっ子だった俺が、覚醒したら騎士団長に求愛されました

キノア9g
BL
いじめられ続けた僕は、ある日突然、異世界に転移した。 けれど、勇者として歓迎されたのは、僕を苦しめてきた“あいつ”の方。僕は無能と決めつけられ、誰からも相手にされなかった。 そんな僕に手を差し伸べてくれたのは、冷酷と恐れられる騎士団長・ジグルドだった。 なのに、あいつの命令で、僕は彼に嘘の告白をしてしまう――「ジグルドさんのことが、好きなんです」 それが、すべての始まりだった。 あの日から彼は、僕だけをまっすぐ見つめてくる。 僕を守る手は、やさしく、強くて、どこまでも真剣だった。 だけど僕には、まだ知られていない“力”がある。 過去の傷も、偽りの言葉も超えて、彼の隣にいてもいいのだろうか。 これは、いじめられっ子の僕が“愛されること”を知っていく、嘘と覚醒の物語。 全8話。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

帰宅

pAp1Ko
BL
遊んでばかりいた養子の長男と実子の双子の次男たち。 双子を庇い、拐われた長男のその後のおはなし。 書きたいところだけ書いた。作者が読みたいだけです。

花屋の息子

きの
BL
ひょんなことから異世界転移してしまった、至って普通の男子高校生、橘伊織。 森の中を一人彷徨っていると運良く優しい夫婦に出会い、ひとまずその世界で過ごしていくことにするが___? 瞳を見て相手の感情がわかる能力を持つ、普段は冷静沈着無愛想だけど受けにだけ甘くて溺愛な攻め×至って普通の男子高校生な受け の、お話です。 不定期更新。大体一週間間隔のつもりです。 攻めが出てくるまでちょっとかかります。

処理中です...