ショートストーリーまとめ

てんつぶ

文字の大きさ
21 / 77

20年振りの高校の同窓会 20230712

しおりを挟む
20年振りの高校の同窓会。昔付き合っていた男と再会したが、結婚指輪をはめていた。
田舎町で男同士の恋愛が許されるほど、寛容な時代ではなかった。親にバレて別れを選び、大学進学で音信不通になった。
それきり俺は地元に帰らなかったけれど、今回は何故か同窓会にきた。
地元の人間が多い同窓会で、俺は随分珍しい客人だったらしく随分飲まされた。喉を通る地酒は初めて飲むもので、例えば東京で見かけてもあえて地元のものは避けてきた事を思い出す。
喉を通り抜けていくのはキツいアルコールと、甘み。そして苦い過去の別れ。

アイツとは結局視線すら交わることなく同窓会が終わった、らしい。帰省のために取った駅前のホテルの天井を眺め、二日酔いで痛む額を抑えた。ここに戻った記憶が無い。身動ぎをすると温かい何かに足が当たる。
アイツがいた。
指輪をはめたまま、俺の腕を握る。ハッとして見れば2人とも裸だ。
しかし一切の記憶がない。
男がまつ毛を震わせ目を開けた。覗く強い瞳が俺を見た。ああそうだ、俺はこの目も好きだったんだ。
「なあ昨日のこと覚えてるか?」
男はそう言った。どう答えるのか正解なのか分からず、一瞬言葉に詰まる俺を、男は笑う。
「馬鹿正直なとこ、好きだよ」
ただの社交辞令、そう思うのに心はどこか浮かれてしまう。
20年。20年だ。
捕らわれてた気持ちを吹っ切るために、同窓会に参加したのに。それなのに嫌でもコイツと出会い、恋をして、愛し合った時のあの鮮やかな日々に引き戻されるのだ。
男の唇は弧を描く。あの時よりすこしカサついて、だけどあの時と変わらない唇だ。
「デキ婚したけど俺の子じゃなくて、結局すぐ離婚したって話は覚えてるか?」
「…は?」
「地元じゃ有名な話なんだがな。これは魔よけみたいなもんだよ」
そう言って男は指輪を外す。
呆気なく指から抜けて、するりとベッドサイドのゴミ箱に落ちた。硬い音が妙に室内に響く。
「いや、願掛けかな」
そう言って男は俺の胸にひたりと体を寄せた。寝汗で少し汗ばむ肌がくっつく。
これは夢だろうか。俺の願望が見せた夢。
「泣くなよ…昨日も散々泣いてただろ」
情けない俺は既に痴態を晒していたらしい。男の胸に子供のように顔を寄せられて頭を撫でられる。
あの頃もよくこうして甘やかされていた。
好きだとか、愛してるとか、離れてる間の事とか、話したいことは沢山あったけれど。
「なあ、モーニング食いに行こうぜ」
男はなんの情緒もなく、そんな事を提案するのだった。
シャツを着る男のうなじに散らばる鮮明な鬱血の跡。
手元のスマホは日曜日を知らせていた。そして今取り掛かってる仕事の算段をして、明日は風邪をひくと決めた。
「なあ早く行こうぜ」
呆れたように伸ばされた手を、俺は今度こそ離すまいと掴んだのだ。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私の庇護欲を掻き立てるのです

まめ
BL
ぼんやりとした受けが、よく分からないうちに攻めに囲われていく話。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?

キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。 知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。 今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど—— 「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」 幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。 しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。 これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。 全8話。

契約満了につき

makase
BL
仮初めの恋人として契約を結んだ二人の、最後の夜。

【8話完結】いじめられっ子だった俺が、覚醒したら騎士団長に求愛されました

キノア9g
BL
いじめられ続けた僕は、ある日突然、異世界に転移した。 けれど、勇者として歓迎されたのは、僕を苦しめてきた“あいつ”の方。僕は無能と決めつけられ、誰からも相手にされなかった。 そんな僕に手を差し伸べてくれたのは、冷酷と恐れられる騎士団長・ジグルドだった。 なのに、あいつの命令で、僕は彼に嘘の告白をしてしまう――「ジグルドさんのことが、好きなんです」 それが、すべての始まりだった。 あの日から彼は、僕だけをまっすぐ見つめてくる。 僕を守る手は、やさしく、強くて、どこまでも真剣だった。 だけど僕には、まだ知られていない“力”がある。 過去の傷も、偽りの言葉も超えて、彼の隣にいてもいいのだろうか。 これは、いじめられっ子の僕が“愛されること”を知っていく、嘘と覚醒の物語。 全8話。

帰宅

pAp1Ko
BL
遊んでばかりいた養子の長男と実子の双子の次男たち。 双子を庇い、拐われた長男のその後のおはなし。 書きたいところだけ書いた。作者が読みたいだけです。

花屋の息子

きの
BL
ひょんなことから異世界転移してしまった、至って普通の男子高校生、橘伊織。 森の中を一人彷徨っていると運良く優しい夫婦に出会い、ひとまずその世界で過ごしていくことにするが___? 瞳を見て相手の感情がわかる能力を持つ、普段は冷静沈着無愛想だけど受けにだけ甘くて溺愛な攻め×至って普通の男子高校生な受け の、お話です。 不定期更新。大体一週間間隔のつもりです。 攻めが出てくるまでちょっとかかります。

処理中です...