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てんつぶ

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劣等感で死にそうな攻め 20230709

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努力して報われた人は「努力は報われる!」、天才は「何もしてない、運」と言う。そして多くの凡人は「頑張ってるのに」と嘆く。攻めくんは努力型の凡人で、受けくんは天才だった。何をしても一流の受けくんに好かれて付き合った攻めくんだけど劣等感で死にそう。
だけどその劣等感を押し殺して笑顔で受けくんと付き合ってる。ベッドの中の攻めくんがやや乱暴になるけど受けくんはそれを受け入れていた。
表向きは上手くやれてる二人だけど、攻めくんはもう限界だった。何をしても敵わない、及ばない。
それなのに受けくんは攻めに愛を囁く。
泣きながら別れて欲しいと懇願するけど受けくんから1つずつ丁寧に論破される。それは違うよね、じゃあこうじゃない?と諭されて攻めくんは「あれそうだな?」と納得するけど丸め込まれてることに気づかない。
そんな事が何回も繰り返されて攻めくんは考えることをやめた。
ズブズブに甘やかされて大切にされて愛を与えられるのだから心地よかった。共依存だろうなぁって自覚してたけど、何もかも上の受けくんには反抗するより従った方が心地よい。
そんな関係が何年も続いて、ある日受けくんが交通事故に遭う。幸い大したこと無かったけど攻めくんの事だけポンと忘れちゃっていた。申し訳なさそうに笑う受けくんを見て、攻めくんは「逃げるなら今がチャンスだ」って考える。このままずっと受けくんと一緒にいると思っていたけど、ここにきて逃げ出せる機会に気がついた。
そこから攻めくんの行動は早かった。
見知らぬ土地に引っ越して仕事も変えた。服装も髪型も変えて今までしなかった事をした。
羽目を外してワンナイトしまくって遊び歩いて。受けくんがいなければ攻めくんもモテる。
仕事も、受けくんみたいな天才と比較されなければデキる部類に入る。
攻めくんは嬉しかった。
ついに自分自身を認めて貰えた気がしてた。
でも。
だけど。
楽しくて充実した日々のはずなのに、どこか心にぽっかり穴が空いているようだ。重苦しいまでの愛を与えてくれる人がいない。自分を心配して窘めてくれる人がいない。大丈夫だよと頬を撫でる彼がいないのだ。
攻めくんは、ふらりと受けくんの家を尋ねた。合鍵は持っているけど、自分を忘れている受けくんだからまずはインターフォンを押す。開いたドアからは受けくんが顔を出した。久しぶりに見たその顔にホッとしたのもつかの間、その後ろから見知らぬ親しげな女性が顔を出す。
攻めくんは愕然とした。それはそうだ、ハイスペックな受けくんがどうしてまだ独り身だと思ったのか。打ちひしがれた攻めくんは、きょとんとした顔の受けくんに背中を向けて逃げ帰った。
「がんばっても…結局いつもこうだ」攻めくんなりの努力は結局いつも身を結ばない。
飲み屋で一杯引っ掛けて、それから長い時間をかけて自宅へ帰った。
だけど家に入るとそこには何故か受けくんがベッドに腰掛けてた。驚く攻めくんに気がつくと、受けくんは笑っておいでおいでと手招きする。吸い寄せられるように近づくと優しく頬を撫でられた。
それかはうっとりするような甘い声で「逃げられるチャンスをあげたのに」なんて言う。
何が嘘で何が本当で、どこまでが受けくんの計画だったのか。凡人の攻めくんには分からない。だけど見つめてくる瞳に籠る情熱や全身で攻めくんを好きだと訴える受けくんは、紛れもなく攻めくんの知る彼だった。共依存と呼ばれようと、攻めくんは受けくんの事が好きだった。大切だった。
涙ながらにそう言うと「知ってるよ」と笑われた。そうじゃない、自分は受けくんを利用してたと謝罪しても受けくんは笑ったまま、攻めくんをベッドに誘う。
「愛してる男に利用されるなら本望でしょ」なんて囁かれたらもう終わりだ。そこからは嵐みたいにその身体を貪って、だけど出来るだけ優しく抱いた。
なにもかも受けくんには適わなくて、だけど離したくない。
攻めくんもまた、そんな感情を持っていたのは受けくんにだけだ。
隠してたつもりの本音も全部受けくんには筒抜けで、もう攻めくんは素直になるしか無かった。あれが嫌だこっちにしようと言えば、意外にも受けくんもあっさりと頷いてくれた。彼は攻めくんが離れていく事以外は、大体の事を譲歩してくれる事に気がついた。
「…愛されてる?」
「当たり前でしょ」
そう言って笑う受けくんだった。

数年後、攻めくんは自分の意思で彼に指輪を贈った。感涙でぐちゃぐちゃの受けくんと小さなチャペルで結婚式を挙げる。そこには彼の妹である、あの日攻めくんが勘違いした女性も来ていて散々からかわれたけれど。



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