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てんつぶ

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アサヒとタカラ 20220625

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普段日が沈んだ後に外に出ることは無い。
うちの大学は郊外だし、酒が飲みたいなら家で飲む。外で飲むのは割高だし、一緒に飲みたい友人もいないのだから。
せいぜい自宅近くのバイト帰りに、コンビニかスーパーに寄る程度。
そんな俺の生活が、変わった。
缶チューハイしか知らなかった俺をバーとやらに連れ出した。目の前で海鮮を捌く居酒屋を知った。女の子のいる店に案内されて、尻込みする俺を笑った恨みは忘れてない。  
「タカラ、ほらこっちこっち」
今夜もアサヒに誘われて、焼き鳥が美味いという店に連れていかれた。
やれこの地酒がどうとか、やれこの銘柄は冷がいいとか、同い年だと言うのにアサヒはやたら酒に詳しい。
「ほらタカラ、ここ座れよ」
いつも行く夜の街、駅前の大きなオブジェは人々の休憩所になっている。
アサヒは店で飲んだあと、決まってここに座らせる。
夜の華やかなネオン街の一角、穏やかな光に照らされたそのスペースは、ロマンチックな場所で安上がりなベンチに早変わりだ。
「ほら、タカラ。水飲んで」
「ん…」
酒が飲むと眠くなって、いつもこうしてアサヒの肩に頭を乗せてしまう。
友人としては近い距離なんだろう。
酒を言い訳にして、こうして自然に触れられるのが嬉しくて。だから俺はアサヒと飲みに出る。
その事をこいつはまだ、知らなないんだろう。
ウトウトと目を閉じていると、体の半分にアサヒの体温を感じた。
肩にまわるアサヒの腕は、友人を案じている優しさなのだろうか。
頬に感じる柔らかな感触は、果たして俺の願望が成したものなのか。
「なぁタカラ、好きだって言ったら、お前はどうする?」
どんな顔をして目を開けたらいいのかわからなくて、俺は酔って寝たフリを続けた。
バクバクと高鳴る心臓の音は、果たしてどちらのものだろうか

おわり
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