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てんつぶ

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リーマンとパン屋 20231207

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無味乾燥な日々を送る40歳手前リーマンは行きつけのパン屋に入ってきたバイトと親しくなった。きっかけは聞いてもないのに「これが今日のオススメですよ」とグイグイ勧めてきたからだ。30歳過ぎだろうにバイトの男を、リーマンは最初バカにしていた。
だがしつこい男に根負けして喫茶店に行くと、地頭がいいのか話題に困らない。それどころか楽しい時間すら過ごせてしまう事に驚いた。
それからリーマンは以前にも増してパン屋に通い、時折男に誘われ内心喜びながらも渋るフリをして一緒にい食事に行くようになった。
行先はラーメン屋だったり流行りのカフェだったり、一貫性はないがどこも美味しかった。
リーマンは年上の自分がそんな店を知らないことがなんだか恥ずかしくなり、会社の後輩にお勧めを聞いたりした。
ガラスに映る自分の白髪がふと気になり始め美容院に行って染めた。
これが恋たと気がついたのは3ヶ月経った頃だ。
「俺ね、もうすぐ姉と一緒にカフェやるんですよ」
聞けば専門学校を卒業後、リーマンでも知ってる有名店でシェフをしていたらしい。長年の夢であった自分たちの店を持つ合間に、人手が足りないとパン屋を手伝っていたのだという。
リーマンは今度こそ自分の浅慮に恥じ入った。そしてバイトだと侮って男を見ていた事も。
男は自分などより夢を持って立派だった。興味の分野も広く深くてその上経営者にもなる。
リーマンが男の隣に立つには何もかも足りないと、恋を自覚した瞬間に理解した。
そしてひっそりとこの恋心に蓋をすることにした。
「そうか。おめでとう」
リーマンは笑顔を作った。笑えているかは分からなかった。
冷たくなっていくリーマンの手を男がふいに握る。
「だから今までみたいに会えないかもしれませんが...大事にします。付き合ってください」
思いがけない告白にポカンとするリーマンに、男ははにかみながら言う。
「真面目な顔でパンを選ぶ貴方を好きになりました」
話してみたら天然で面白く、思いがけない変化球が楽しいのだと言う。リーマンはそんなつもりがなかったから、目をまん丸にして男を見るしかなかった。
自分は面白みもない卑屈な人間だと思っていたリーマン。
「いつもはこんなに話さない。きみをバイトだと侮ってたから...俺は嫌な人間なんだよ」
そう素直に言っても男は微笑んだままだった。
「いいんですよ。俺に言っちゃう素直なところ、好きです」
髪の毛を綺麗にしてくれたの、俺のためって思ってもいいですか?そう耳元で囁かれた。
リーマンは耳を赤くして、しずかに頷くしかなかった。


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