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誰にも跪かないSub 20240305
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誰にも跪かないSubとして有名な、美しく華やかなSubがいた。ある配信から火が付き、その外見もあって瞬く間に有名になる。有名配信者のDomや見るからに強そうなDomのコマンドに全く屈する様子がない。人々は驚き、そして痛快な気持ちになった。
だが当の本人は違った。
最初は面白かった。命令をするのが当たり前のDom達が自分に命令したくて群がり、そしてコマンドが効かないと分かると自信喪失し狼狽える様はスッとした。
周囲は貴重なSubとして、美しい外見も相まってもてはやす。
男は正真正銘のSubだ。だがその美しさは人工的に造られた。
有名になればなるほど自分が整形している事が、いつ誰に暴かれるのか不安で眠れなくなっていった。
Subであることは検査が証明してくれているが、そもそもそれが勘違いだったらどうしようか。
そんな自分への疑惑を抱くようにもなってきた。
Subとしても出来損ないなのではないか――
そんな風に感じて、普段通りの配信を行いながらも苦しい日々を過ごしていた。
ある日たまたまいつもと違う路線を使って外出した時に、すれ違う男の放つ言葉に思わず従いそうになった。初めて感じたSubとしての本能。
嬉しくなった男はその日の配信で思わずその話をした。
結果として配信は炎上した。切り抜き動画も沢山出回り、結局SubはSubだと落胆の声が上がる。男は自分の喜びがリスナーのそれではなかった事に衝撃を受けた。美しく誰にも従わないSubでなければ価値がないのだ。男は心を病んだ。配信もせず外にも出ず、ただ布団にくるまる。
『俺を見ろ』
そのコマンドに男はうっとりと顔をあげ、それからハッとした。眼の前には宅配便の人間が、自分の家の中でコマンドを発していたからだ。
「ああよかった。生きてる。再配達期限ギリだったから、持ってきたんですよ」
荷物を抱えたその人は爽やかな笑顔を見せた。
男はなんたか泣きそうになった。服も髪もよれよれだし、いくらメスを入れて整えた顔でも痩せこけて見れたもんじゃないだろうに、否定され続けた男のこころにじんわりと温かい気持ちが染み込んでいく。
それからその誰にも跪かないSubは画面から消えた。
その代わり、首輪をつけた美しいSubと優しげなDOMが日曜の公園を散歩する姿が何度か見かけられたという。
その様子があまりにも幸せそうで、彼の最後の配信を知っていた人たちも、誰も何も言わずにただ見守っていたそうだ。
終
だが当の本人は違った。
最初は面白かった。命令をするのが当たり前のDom達が自分に命令したくて群がり、そしてコマンドが効かないと分かると自信喪失し狼狽える様はスッとした。
周囲は貴重なSubとして、美しい外見も相まってもてはやす。
男は正真正銘のSubだ。だがその美しさは人工的に造られた。
有名になればなるほど自分が整形している事が、いつ誰に暴かれるのか不安で眠れなくなっていった。
Subであることは検査が証明してくれているが、そもそもそれが勘違いだったらどうしようか。
そんな自分への疑惑を抱くようにもなってきた。
Subとしても出来損ないなのではないか――
そんな風に感じて、普段通りの配信を行いながらも苦しい日々を過ごしていた。
ある日たまたまいつもと違う路線を使って外出した時に、すれ違う男の放つ言葉に思わず従いそうになった。初めて感じたSubとしての本能。
嬉しくなった男はその日の配信で思わずその話をした。
結果として配信は炎上した。切り抜き動画も沢山出回り、結局SubはSubだと落胆の声が上がる。男は自分の喜びがリスナーのそれではなかった事に衝撃を受けた。美しく誰にも従わないSubでなければ価値がないのだ。男は心を病んだ。配信もせず外にも出ず、ただ布団にくるまる。
『俺を見ろ』
そのコマンドに男はうっとりと顔をあげ、それからハッとした。眼の前には宅配便の人間が、自分の家の中でコマンドを発していたからだ。
「ああよかった。生きてる。再配達期限ギリだったから、持ってきたんですよ」
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それからその誰にも跪かないSubは画面から消えた。
その代わり、首輪をつけた美しいSubと優しげなDOMが日曜の公園を散歩する姿が何度か見かけられたという。
その様子があまりにも幸せそうで、彼の最後の配信を知っていた人たちも、誰も何も言わずにただ見守っていたそうだ。
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