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第五話 盛装と決意④
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この国に生きている人間は等しく、竜の恩恵に預かっている。
セデンス国は竜という強い武器を飼い慣らしているおかげで、他国に対して強く出られるのだ。それは国内の平穏に繋がり、戦争の少ない豊かな生活をもたらしている。
だがリウは思うのだ。
それは竜たちにとって幸せなのだろうか、と。
竜が自由に空を飛べるのは、専属となる竜騎士が現われてからだ。それまでは特殊な枷を足に嵌められ、飛べないようにされている。いくら卵から育てあげても竜は元々魔物だ。逃げ出さないとは限らない。
そして竜騎士を失えば、その命が大地に還るまで再び空を飛べる機会を失う。
竜にとってこの国で生まれたことは、不幸なのではないか。
「人間は勝手だよな。お前が怒る気持ちも、分かるよ」
その上、竜によって平穏が守られているはずのセデンス国内でも、近年では反竜派と呼ばれる竜を不必要だと思う派閥が現われ始めているのだ。
国庫を圧迫する竜を減らせ、金になる竜の亡骸は切り刻んで売るべきだ、いや竜などもはや国に不要だ――そう考える者も少なくない。
ショアを死に追いやった、身勝手な第二王子もその一派だと言われている。
リウは植えられたばかりの、まだしなやかな幹を撫でる。
「けど、ガジャラのためにも俺はまだ生きていたい。本当は償って苦しんで死ぬべきなのかもしれないけど……そのためなら」
膝の上で硬く握る拳の上に、別の手のひらが重なった。
リウは見覚えのあるその手の持ち主を見上げる。
「ラーゴ?」
「竜のためじゃなく、僕のために生きてほしいところですね」
いつから隣にいたのか、仮にも竜騎士であるリウが全く気づけなかった。
軽口を叩くラーゴはリウと目が合うと、ニコリと口角を上げる。
「叙勲式の前にリウの正装を見たいと思い一度自宅に戻ったのですが、こちらだと聞いたので……迷惑でしたか」
「いや、大丈夫だ。挨拶も終わったし」
差し出された手を取って、リウは立ち上がり大きく伸びをした。
上等な硬い生地で作られた上着は、何度着ても着なれない。
「そういえば朝からこっちで仕事だったんだよな。もう一段落ついたのか」
「ええ。全く、早朝から急な呼び出し上司には困ったものです」
「ははは、ラーゴでもそんな風に思うんだな。なんでも涼しい顔でこなすから、上司受けがいいんじゃないか」
そう話して、ふとリウは気付いた。
ラーゴの上司は誰なのだろうか。魔法使いとしてゴッドランド宰相の後援を受けているがラーゴだが、ただの魔法使いではなく認定魔法使いだ。
認定魔法使いともなれば一貴族相当の立場となり、一つの家に縛られることなく活動することができる。
あくまで後援者は認定魔法使いを支持しているという表明であり、上司というには適切ではない。
しかしラーゴは「上司に呼び出された」と言っているのだ。
その上呼び出されたのは早朝の王宮だ。つまりラーゴの上司は王宮にいる――?
(いや、深入りすることでもないだろう)
親しくしてくれているとはいえラーゴの身分はリウよりも上だ。
迷惑をかけている恩人の身辺を探ろうとするなど、あまりに恩知らずだろう。リウは一瞬湧いた疑問を振り払う。
「さあそろそろ急がないと。城に入りましょう。控室までエスコートする名誉をいただけますか?」
「ふは。ああ、よろしくお願いするよ」
手をスイと掬いあげられる。芝居がかった様子でいつものようにふざけるラーゴと共に、リウは元来た道を歩く。
なんだかんだラーゴの隣は居心地がいい。
だからリウは気づかなかった。
そんな自分を、木の陰から見つめる男の視線に。
セデンス国は竜という強い武器を飼い慣らしているおかげで、他国に対して強く出られるのだ。それは国内の平穏に繋がり、戦争の少ない豊かな生活をもたらしている。
だがリウは思うのだ。
それは竜たちにとって幸せなのだろうか、と。
竜が自由に空を飛べるのは、専属となる竜騎士が現われてからだ。それまでは特殊な枷を足に嵌められ、飛べないようにされている。いくら卵から育てあげても竜は元々魔物だ。逃げ出さないとは限らない。
そして竜騎士を失えば、その命が大地に還るまで再び空を飛べる機会を失う。
竜にとってこの国で生まれたことは、不幸なのではないか。
「人間は勝手だよな。お前が怒る気持ちも、分かるよ」
その上、竜によって平穏が守られているはずのセデンス国内でも、近年では反竜派と呼ばれる竜を不必要だと思う派閥が現われ始めているのだ。
国庫を圧迫する竜を減らせ、金になる竜の亡骸は切り刻んで売るべきだ、いや竜などもはや国に不要だ――そう考える者も少なくない。
ショアを死に追いやった、身勝手な第二王子もその一派だと言われている。
リウは植えられたばかりの、まだしなやかな幹を撫でる。
「けど、ガジャラのためにも俺はまだ生きていたい。本当は償って苦しんで死ぬべきなのかもしれないけど……そのためなら」
膝の上で硬く握る拳の上に、別の手のひらが重なった。
リウは見覚えのあるその手の持ち主を見上げる。
「ラーゴ?」
「竜のためじゃなく、僕のために生きてほしいところですね」
いつから隣にいたのか、仮にも竜騎士であるリウが全く気づけなかった。
軽口を叩くラーゴはリウと目が合うと、ニコリと口角を上げる。
「叙勲式の前にリウの正装を見たいと思い一度自宅に戻ったのですが、こちらだと聞いたので……迷惑でしたか」
「いや、大丈夫だ。挨拶も終わったし」
差し出された手を取って、リウは立ち上がり大きく伸びをした。
上等な硬い生地で作られた上着は、何度着ても着なれない。
「そういえば朝からこっちで仕事だったんだよな。もう一段落ついたのか」
「ええ。全く、早朝から急な呼び出し上司には困ったものです」
「ははは、ラーゴでもそんな風に思うんだな。なんでも涼しい顔でこなすから、上司受けがいいんじゃないか」
そう話して、ふとリウは気付いた。
ラーゴの上司は誰なのだろうか。魔法使いとしてゴッドランド宰相の後援を受けているがラーゴだが、ただの魔法使いではなく認定魔法使いだ。
認定魔法使いともなれば一貴族相当の立場となり、一つの家に縛られることなく活動することができる。
あくまで後援者は認定魔法使いを支持しているという表明であり、上司というには適切ではない。
しかしラーゴは「上司に呼び出された」と言っているのだ。
その上呼び出されたのは早朝の王宮だ。つまりラーゴの上司は王宮にいる――?
(いや、深入りすることでもないだろう)
親しくしてくれているとはいえラーゴの身分はリウよりも上だ。
迷惑をかけている恩人の身辺を探ろうとするなど、あまりに恩知らずだろう。リウは一瞬湧いた疑問を振り払う。
「さあそろそろ急がないと。城に入りましょう。控室までエスコートする名誉をいただけますか?」
「ふは。ああ、よろしくお願いするよ」
手をスイと掬いあげられる。芝居がかった様子でいつものようにふざけるラーゴと共に、リウは元来た道を歩く。
なんだかんだラーゴの隣は居心地がいい。
だからリウは気づかなかった。
そんな自分を、木の陰から見つめる男の視線に。
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