転生公爵令嬢の婚約者は転生皇子様

撫羽

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第二章

78ー領主代行の邸で

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「どなたかご夫人にもお持ちしてちょうだいな」
「はい! 私がお持ちします!」

 一番若そうで元気なメイドがアイスを何個か手に小走りに出て行きました。

 ――美味しい!
 ――冷たいわ!
 ――口の中で溶けるぞ。
 ――こんなの食べた事ない。

 皆さん口々に感想を言っています。

「公爵様、有難うございます。私共には勿体ない事でございます」
「いや、子爵殿も食べて下され」
「では、有り難く頂きます」

 その時です。

「旦那様! 奥様が!」
「どうした!?」

 先程、アイスを持って行ったメイドが慌てて戻ってきました。

「旦那様、失礼致します」

 あら、ご夫人が入って来られたわ。鑑定……

「もう、大丈夫だな」
「レオン様、そうみたいですね」
「ティシュトリア公爵様。有難うございます。こんなに美味しいものは生まれて初めて頂きました。そして食べた瞬間、頭に掛かっていたモヤがスッキリ晴れました。感謝致します。公爵様、一体どうしてなのでしょう? 何かご存知なのですか?」
「失礼ながら奥様、私達もです」

 さっきレオン様が指摘したメイドと、執事らしき人物が前に出られました。そして夫人の横に、嫡男と妹かしら?

「そうか。それは良かった。今迄の記憶はあるか?」

 お父様が聞かれました。

「はい、御座います。私は公爵様と旦那様にお話しなければならない事が御座います」

 執事さん、何かご存知なのかしら?

「ああ、聞こう」
「ティシュトリア公爵様。何をご存知なのですか?」

 子爵は不安気です。

「何をか? そうだな、全てだな」

 お父様が仰った瞬間……子爵、奥様、嫡男らしき青年、妹、執事、メイドがお父様の前に跪きました。

「全て、お見通しでしたか。言葉も御座いません。しかし、この者達は悪くないのです。どうかご慈悲を!」
「父上! 父上は悪くありません! 私が、私が全て悪いのです!」
「これ、控えなさい」
「構わん。御子息か?」
「はい、嫡男に御座います。ルルーシュア様と同じ学園に通っておりました」
「成る程、詳しく話を聞かせてもらえるか?」
「勿論でございます」

 子爵は話し出されました。

「今から思えば、嫡男の卒業パーティーに出席したのが事の始まりでした」

 話によると……嫡男が話していた卒業パーティーに、子爵は偶々街でどうしても外せない会合があった為出席出来ず、夫人が出席し執事とメイドが付き添った。その時に嫡男が入れ揚げている男爵令嬢を紹介された。それから夫人、嫡男、執事、メイドの言動が変わって行った。
 男爵令嬢は王妃になるんだ。男爵令嬢の邪魔をする者は排除しなければならない。それが私達の使命だ。等と言い出した。
 子爵は何がどうなっているのか訳が分からず、どう対処すれば良いのかも分からなかったらしい。
 そのうち、第2王子の誕生日パーティーでの出来事がこの街にも伝わってきて、もしかしたら嫡男達もそうなのではないかと疑い始めた。
 男爵令嬢が、罰せられた事を聞くと4人は男爵令嬢を助けないといけない。悪いのはジュノー侯爵令嬢だ。と、騒ぎ出した。
 しかしどうする事も出来ず、邸に閉じ込める事しか出来なかった所に私達が訪れた。

「旦那様、私達は話にあった男爵令嬢の魅了に掛かっていたのでしょう。今思うと、何故あんな令嬢に肩入れしていたのか。自分でも分かりません」
「奥方、この街にサクソン・モルドレッドが訪れていたかも知れないのですが、知っておられましたか?」
「公爵様。いいえ、その様な事は全く存じあげません。私はお目に掛かった事も御座いません」
「私が、男爵令嬢を母達に紹介したばかりに、父上にご迷惑をお掛けしてしまいました。母も執事達も悪くないのです。全て私が!」
「其方も訪れていた事は?」
「公爵様、私も母と同じです。お目に掛かった事は御座いません」
「公爵様、この街に滞在されているのですか?」
「子爵、今は既に街を出ている様だ。心配はいらない」
「畏れながら旦那様、公爵様」

 執事が話し出した。

「私は存じておりました。衛兵の中にも一人魅了に掛かっている可能性のある者がおります。その者の手引きで、1日だけこの街に滞在されていた様です」
「なんだと!? その衛兵に会えるか?」
「公爵様、私は知っていて見逃しました。男爵令嬢を助ける為には当然だと思っておりました。その兵だけが悪い訳ではありません。その兵はまだ若く、将来のある者なのです。どうかご容赦頂けないでしょうか?」
「ああ、勘違いするな。私は罰するつもりはない。魅了を解呪したいだけだ。安心するがいい」
「有難う御座います! 感謝致します!」
「寛大なご配慮を有難うございます。しかし、何故突然妻達は元に戻ったのでしょう?」
「ああ、それはこのアイスクリームを食べたからだ。これには魅了の解呪薬が入っているからな」
「なんと!? その様なものがあるのですか!?」
「ある訳なかろう。我が家の薬師と料理人が協力して作った物だ。ところで子爵、相談がある」
「何でございましょう? 公爵様には返せない程の恩義ができました故に、何でも申し付け下さい! アーデス・ティシュトリア公爵様! 我が家の恩人にございます!」

 あー、このテンション誰かさんと似てるなぁ。
 そして直ぐに執事は魅了に掛かっている恐れのある衛兵を呼び出した。アイスクリームを食べさせると、やはり衛兵の身体が一瞬淡く光った。其れからは話が早かった。
 衛兵と同時期に王都へ出向いていた兵士一人、サクソンが宿泊していた宿の使用人一人、王都から派遣されている教師一人が魅了に掛かっていた。
 男爵令嬢は悪食? 雑食? とにかく貴族から兵士や平民、男女関わりなく魅了を掛けまくっていた。しかもやたらとレベルが高い為にタチが悪い。洗脳と言っても過言ではない位ね。

「ルル様、この街はこれで大丈夫みたいですね」
「ユリウス、もう呆れたわ」
「どうしました?」
「男爵令嬢は……あー、もう元男爵令嬢ね。片っ端から魅了を使っている感じじゃない? 何がヒロインよ。これじゃあまるで悪魔か邪神だわ」

 えっ?……ちょっと待って。私、今何て言った? 悪魔? いいえ、違うわ。邪神!? 何処かで見たわよ。邪神……!

「ルル様、どうしました?」
「ユリウス、私モモに会わなきゃ!」

 モモのいる馬車へ急ぎます。

「ルル!どうした!?」
「レオン様! 思い出した事があるの! モモに聞かなきゃ!」
「俺も行く!」

 子爵邸の馬車停めに停めてある、モモのいる馬車の扉を開けました。

「モモ!」
「わふー?」

 モモちゃん寝てたのね……最近、本当に普通のわんちゃんになってるわよ?
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