ビターな初恋

かぼす

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(12)エピローグ

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 母に言われたとおり私は仲の良い友達に相談した。友達は、真剣に話を聞き終わった後、「おかしいよ。」と忠告してくれるとともに私の決断だからと口を濁した。毎回、彼氏の話をするとき、大好きな彼氏についてさげすんで言わなければいけないのがつらかった。友達や周りの人に彼氏に対して文句を言われるのを聞くとより心が痛んでしまうから自分から彼氏を少し悪く言うしかなかったのだ。何回彼が同い年だったら、同じ学校にいたら、子供が
いなかったら、と願ったことか。どんなけ他の同級生の恋愛話を聞くのが羨ましかったか。みんなにはこの気持ちは到底理解できなかっただろう。
 遂に、私は壊れた人形のようになり、彼の前でも泣き出すようになった。彼は、「ごめんね。僕が...だったら。」と言って何度も泣いた。違う。あなたの悲しんでいる顔が見たいんじゃない。あなたに謝ってほしい訳ではない。彼の言動・行動がより私を苦しめた。
 そして、私は彼に何も言わずに去った。彼の苦しんでいる顔をもう見たくない。自分をこれ以上だませない。彼の未来を背負えない。そう感じたのだ。

 
 ♪~♪~♪
イヤホンから流れる曲。これは、お気に入りでありつつもコーヒーのように苦い。

私に大好きという恋愛感情を教えてくれた君。もう私への思いは薄れたかな。楽しく過ごしているかな。私は君に感謝しているよ。他の人が何と言おうとも。だって、大好きって気持ちは嘘ではなかったから。ありがとう。大好きだったよ。そして、さようなら。

私は今日もお気に入りの曲を聴きながら、君の面影を探すように、街中へ溶け込んでいった。
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