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序章
1-7 3,2,1!
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正直わたしは、体力がない。戦うなんてできない。
第一、そういうのは怖いとしか感じないから。
まだ義母のリーゼロッテと父親のクラウスが生きていた頃。彼らはわたしに「完璧」を求めた。
そして、自分たちの思い通りにわたしがいかないとすぐに殴ったり蹴ったりした。毒を盛られたことも一度や二度ではない。「二度あることは三度ある」という言葉を知った時にはとても共感したのを覚えている。
ー武術を習うのも女性の嗜みです
ー魔法薬など作れて当たり前だ
ー書類仕事も完璧にするのが当たり前ですわ
ー他国の言葉を完璧に話せるのは当然だ
まだ小さな頃から、多くの家庭教師がついていた。
それは、アルフレートも同じだった。
けれどアルフレートのほうが自由な時間も多く、殴られたり蹴られたり、果ては毒を盛られることもなかった。
小さい時の記憶は、正直アルフレートに対する疑問や親に対する怒りが一番多いだろう。
だから、リーゼロッテとクラウスが死んだ時も正直悲しいとは思わなかった。むしろ嬉しいとまではいかないが、確実に悲しんではいなかった。
、、、もういい。
過去を嘆いても変わらないから、現実だけ見よう。
部屋の中には、虹色の半球があった。その中に、透明な箱のようなものに入っている一冊の重厚な本があった。
背表紙には古語で「貴族登録の書」と書いてある。
けど、問題はこれをどうやって取り出すかだ。触ってみたところ、ビリっと静電気のようなもので弾かれた。
、、、むーん、難解。
その時、漫画で言うなら頭の上に電球が出てくるような状態になった。つまり、ひらめいた。
なるべく半球の防護壁に近づいて、魔力を放出していく。ここの部屋の魔力=王の魔力なので、王の魔力をわたしが超えれば良い。たったそれだけだ。
だいぶ魔力が濃くなってきて、半球の下の方が砂に変わっていっている。虹色の。
、、、これ、アルフレートなら喜ぶかな?一応少し持っていこうっと。
魔力の放出を続けていくと、体に影響が出る。例えば、頭痛が止まらなくなるとか足や指の先から血が出てくるとか。気持ち悪いのもそうだ。
そして現在、絶賛吐き気が止まらない状態だ。早いところ終わって欲しいと思った瞬間、半球が小さな爆発を起こした。あまりにもとっさで、防護壁を作り出す呪文を唱える間もなかった。
、、、ヤバい!
陽子時代の避難訓練で覚えた頭を守るダンゴ、、、ムシ?のポーズで頭を守り、やっと目を開けたときには半球は完全に砂になっていた。キラキラ光っていてキレイだ。
箱を開くと、正真正銘の重厚な本だった。
後ろのほうが最近になるので、後ろから開いていく。
、、、これだ。この辺り。意外と落書きが多いんだけど。
さっきいたと思われるアイベンシュッツ侯爵の名前を見つけた。わたしは落書きに紛れてくれるように時間指定の魔法陣と転移魔法陣を描いてすぐに戻した。半球はどうもしようがないので放置っと。
アルフレートと合流しようと思って外に出た瞬間、大勢の騎士に囲まれた。
「何をしている!」
、、、さっきより全然ヤバいよ、うん。
また飴爆弾を使う必要がありそうだ。いっそ全部使ってしまおう。
取り敢えず全部投げてみたところ、騎士たちが悲惨なことになった。
ジリジリと炎に焼かれているのに、凍っている。鎧はスライムに半分溶かされている。蔦が体中に巻き付いたまま気絶している。
、、、うわぁー、ごめん!今回だけは許してっ!
城の入口に戻ると、アルフレートが立っていた。
「首尾よく終わった?」
「最後は危険だったけど終わりました。これどうぞ」
「これは、、、、っ!」
虹色の粉は特別なものらしい。
「何に使うのですか?」
「最上級魔法を組み込んだ魔術具を作れる。『箱』以上のものがね。」
最上級魔法は、従来のハイゼンベルクの魔法五原則のうちの一つ目の
『どのような魔法であっても、無条件で物を新しく作ったりは不可能である』に反した魔法だ。『箱』は何かを出す前に一度物体の形や用途を見なければいけないけれど、最上級魔法を組み込んだ魔術具なら無条件でぽんぽんと見たことのない物体を用意できるのだ。
「おっといけない。一旦館に戻ってから領地に行って、まとめてあるものを取りに行こう」
城のすぐ近くの館なので、移動は楽だ。いつものように転移魔術具で領地に戻る。ゆっくりしていられないけど。
下働きの人が荷物をまとめておいてくれたようで、全て『箱』に入っていた。これだけで済むから楽だ。
これまでずっと仕えてきてくれていた側近たちを置いて行かなければいけないのは少し寂しい。いずれ戻ってくる予定だけど、万が一のこともあるかもしれないのだ。一応二度と会えない覚悟はしておこう。
アルフレートの執務室へ、もう一つの箱を持っていく。
「これいります?」
「ありがと」
問答無用で持っていかれた。
「もうジート、、、ジークフリートとは連絡が付いてるから。いつでも転移具を使える状態だ。」
「そういうところは用意が良いですよね」
「最初が余計」
「実際そうですから。嘘じゃないです」
「はぁ、、、一体私の可愛い妹はどうしてこんなに黒くなったんだ?」
「元々です」
アルフレートが頭を抱えてうずくまる。けれどすぐに復活したのか、立ち上がった。
「領民には話をつけてある。さあ、そろそろ行こう。」
「、、、、、」
第一、そういうのは怖いとしか感じないから。
まだ義母のリーゼロッテと父親のクラウスが生きていた頃。彼らはわたしに「完璧」を求めた。
そして、自分たちの思い通りにわたしがいかないとすぐに殴ったり蹴ったりした。毒を盛られたことも一度や二度ではない。「二度あることは三度ある」という言葉を知った時にはとても共感したのを覚えている。
ー武術を習うのも女性の嗜みです
ー魔法薬など作れて当たり前だ
ー書類仕事も完璧にするのが当たり前ですわ
ー他国の言葉を完璧に話せるのは当然だ
まだ小さな頃から、多くの家庭教師がついていた。
それは、アルフレートも同じだった。
けれどアルフレートのほうが自由な時間も多く、殴られたり蹴られたり、果ては毒を盛られることもなかった。
小さい時の記憶は、正直アルフレートに対する疑問や親に対する怒りが一番多いだろう。
だから、リーゼロッテとクラウスが死んだ時も正直悲しいとは思わなかった。むしろ嬉しいとまではいかないが、確実に悲しんではいなかった。
、、、もういい。
過去を嘆いても変わらないから、現実だけ見よう。
部屋の中には、虹色の半球があった。その中に、透明な箱のようなものに入っている一冊の重厚な本があった。
背表紙には古語で「貴族登録の書」と書いてある。
けど、問題はこれをどうやって取り出すかだ。触ってみたところ、ビリっと静電気のようなもので弾かれた。
、、、むーん、難解。
その時、漫画で言うなら頭の上に電球が出てくるような状態になった。つまり、ひらめいた。
なるべく半球の防護壁に近づいて、魔力を放出していく。ここの部屋の魔力=王の魔力なので、王の魔力をわたしが超えれば良い。たったそれだけだ。
だいぶ魔力が濃くなってきて、半球の下の方が砂に変わっていっている。虹色の。
、、、これ、アルフレートなら喜ぶかな?一応少し持っていこうっと。
魔力の放出を続けていくと、体に影響が出る。例えば、頭痛が止まらなくなるとか足や指の先から血が出てくるとか。気持ち悪いのもそうだ。
そして現在、絶賛吐き気が止まらない状態だ。早いところ終わって欲しいと思った瞬間、半球が小さな爆発を起こした。あまりにもとっさで、防護壁を作り出す呪文を唱える間もなかった。
、、、ヤバい!
陽子時代の避難訓練で覚えた頭を守るダンゴ、、、ムシ?のポーズで頭を守り、やっと目を開けたときには半球は完全に砂になっていた。キラキラ光っていてキレイだ。
箱を開くと、正真正銘の重厚な本だった。
後ろのほうが最近になるので、後ろから開いていく。
、、、これだ。この辺り。意外と落書きが多いんだけど。
さっきいたと思われるアイベンシュッツ侯爵の名前を見つけた。わたしは落書きに紛れてくれるように時間指定の魔法陣と転移魔法陣を描いてすぐに戻した。半球はどうもしようがないので放置っと。
アルフレートと合流しようと思って外に出た瞬間、大勢の騎士に囲まれた。
「何をしている!」
、、、さっきより全然ヤバいよ、うん。
また飴爆弾を使う必要がありそうだ。いっそ全部使ってしまおう。
取り敢えず全部投げてみたところ、騎士たちが悲惨なことになった。
ジリジリと炎に焼かれているのに、凍っている。鎧はスライムに半分溶かされている。蔦が体中に巻き付いたまま気絶している。
、、、うわぁー、ごめん!今回だけは許してっ!
城の入口に戻ると、アルフレートが立っていた。
「首尾よく終わった?」
「最後は危険だったけど終わりました。これどうぞ」
「これは、、、、っ!」
虹色の粉は特別なものらしい。
「何に使うのですか?」
「最上級魔法を組み込んだ魔術具を作れる。『箱』以上のものがね。」
最上級魔法は、従来のハイゼンベルクの魔法五原則のうちの一つ目の
『どのような魔法であっても、無条件で物を新しく作ったりは不可能である』に反した魔法だ。『箱』は何かを出す前に一度物体の形や用途を見なければいけないけれど、最上級魔法を組み込んだ魔術具なら無条件でぽんぽんと見たことのない物体を用意できるのだ。
「おっといけない。一旦館に戻ってから領地に行って、まとめてあるものを取りに行こう」
城のすぐ近くの館なので、移動は楽だ。いつものように転移魔術具で領地に戻る。ゆっくりしていられないけど。
下働きの人が荷物をまとめておいてくれたようで、全て『箱』に入っていた。これだけで済むから楽だ。
これまでずっと仕えてきてくれていた側近たちを置いて行かなければいけないのは少し寂しい。いずれ戻ってくる予定だけど、万が一のこともあるかもしれないのだ。一応二度と会えない覚悟はしておこう。
アルフレートの執務室へ、もう一つの箱を持っていく。
「これいります?」
「ありがと」
問答無用で持っていかれた。
「もうジート、、、ジークフリートとは連絡が付いてるから。いつでも転移具を使える状態だ。」
「そういうところは用意が良いですよね」
「最初が余計」
「実際そうですから。嘘じゃないです」
「はぁ、、、一体私の可愛い妹はどうしてこんなに黒くなったんだ?」
「元々です」
アルフレートが頭を抱えてうずくまる。けれどすぐに復活したのか、立ち上がった。
「領民には話をつけてある。さあ、そろそろ行こう。」
「、、、、、」
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