4 / 7
4久しぶりの友達
しおりを挟む地元を離れて何年か経つが、意外と道を忘れていないものだ。
身体も心も、少しずつ当時の感覚を取り戻しながら学校への道のりを歩く。
風で髪が舞い上がったが、身体が震えることは無かった。
暖かい風が優しく吹いていたからだ。
学校は自分の家から近い所を受験したので、電車やバスを利用せず徒歩で通学できる。
歩いて大体10分程の距離。
だからあっという間に学校に着いてしまった。
校門の前で立ち止まる。
久しぶりに見る校舎に、なんとも言えない感情が沸いてきた。
懐かしいとか、感慨深いだとか、どちらも当てはまるようで当てはまらない。
言葉では言い表せない感情だ。
校門の脇には桜の木が数本生えていて、まるでピンク色の雲のように満開だった。
風に吹かれて桜の花びらが時折舞う。
綺麗だ。本当に。
思わず桜に見とれていると、後ろから背中を叩かれた。
「咲良ー!おはよ!」
「…!!」
そこに居たのは、高校の頃の親友の雪乃だった。
「…雪乃…」
そう呟いたと同時に、涙が流れた。
「ちょっと!なんで急に泣くわけ?!」
焦った雪乃が私の頭を咄嗟に撫でながら心配そうに見つめた。
「ご、ごめん。会えたのが嬉しくて。」
「なんでよ!春休み中も会ってたじゃん!笑」
雪乃がそう言って笑ったので、私も釣られて笑顔になる。
「今日の咲良は変だよ!」
「そうだね。」
雪乃が笑いながら私の手を引っ張り、校舎の方へ走る。
私も手を引かれるまま、雪乃から離れないように合わせて走った。
桜の花びらが風に吹かれて1枚雪乃の頭に乗った。
雪乃、もう一度貴女に会えるなんて。
雪乃に気付かれないように、再び出てきた涙をこっそり拭う。
鈴城雪乃は私の親友であり、そして。
同級生の中で誰よりも早く亡くなった友達だった。
地元を出た私が雪乃が亡くなったことを知ったのは、5年前。
久しぶりに帰省し実家に帰った時、母から聞かされた。
交通事故で即死だったと。
葬式は家族だけで行われたのもあり、私の方までは知らせが回ってこなかった。
ある日を境に雪乃から連絡の返信が返ってこなくなったのでどうしたのだろうとは思っていた。
けど、高校の頃の友達から返信が来なくなり疎遠になるのは珍しい事ではなかったので、あまり気にとめていなかったのだ。
みんな、あの頃とは違ってそれぞれに生活があるから。
けどまさか、二度と会えなくなるなんて。
そして、そんな雪乃がいま目の前にいるなんて。
これが夢なら、幸せな夢だ。
「早く教室入ろ!咲良!」
「…うん。」
教室の扉に手をかける。久しぶりの感触だ。
懐かしい音ともに扉が開いた。
「おはよ!」
「咲良!雪乃!おはよー!」
私の高校は田舎の高校なのでクラスは1つしかない。
なので、卒業するまでみんな同じクラスになる。
クラス替えが無いのは残念だが、お陰で知らない顔は一人もいない。
「ねえ、春休み中何処か行った?」
「私は咲良と一緒に遊園地行ったよ。」
「春休みって本当に短いよね、あっという間すぎたよ!」
「夏休みみたいに1ヶ月は欲しくない?」
みんなと笑いながら、他愛もない会話をした。
こんな風に気を遣わず誰かと話すのも久しぶりだ。
頰をつねってみる。
摘まれた頬は痛みを感じた。
0
あなたにおすすめの小説
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
