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5 明日もまた会える
しおりを挟む夢じゃない、これはきっと夢じゃないんだ。
もしかしたら、今までの方が夢だったのかもしれない。
雪乃が死んじゃうなんて有り得ないよ。
お父さんとお母さんが離婚するのも信じられない。
お母さんが認知症になるのだって、そんな訳ないよ。
私が会社のストレスで自殺したのも、全部全部、悪い夢だ。
ホームルームが終わり、体育館で始業式を終えた私達は再び教室へ移動した。
みんながそれぞれ自分の席に座った後、一つだけ空いている席が自分の席だと思いそこに座った。
私の席は教室の窓側にあり、暖かい春の光が差し込むせいで眠たくなってくる。
「咲良、眠いの?授業始まるよ。」
後ろの席に座る雪乃がそう言いながら私の背中をつついた。
「ね、眠くないよ。」
「ふーん。あ、ねえ。あれ見て、咲良。あんたの好きな先輩じゃない??」
「えっ!!」
雪乃が窓の外を指差したので、その方向を見る。
窓の外からは運動場が見え、そこには人集りがあり、その中に当時片思いをしていた拓哉先輩がいた。
拓哉先輩は、10年以上経った今では何処で何しているかも分からない、気持ちを告げることなく片想いで終わってしまった初恋の先輩だった。
「拓哉先輩、やっぱりかっこいいなぁ。」
「1時間目から体育なんだ?いいな~。」
友達の言葉に頷いていると突然背後で咳払いが聞こえた。
「コホンッ。今は授業中なんだけど?何見てるの?」
そこには、当時担任の先生だった岡本先生が立っていた。
懐かしい、本当に懐かしい。
岡本先生も、卒業後から関わりが無いので10年後は教師を続けているかどうかすら知らない。
この頃の先生は若くて イケメンで、女子から人気のある男性教師だった。
「…先生!これはその、咲良が眠そうにしてて…」
「え!?」
あっさり雪乃にそう告げ口されて思わず声が出た。
「しっかり集中して聞けよ、咲良。」
「す、すみません…先生。」
謝りつつも、頬がにやけそうになった。
先生って単語を口にするのも懐かしすぎる。
そんな言葉、もう一度言う日が来るなんて。
その後も上機嫌で授業を受け、一通り終わって帰りの時間が近づいた頃。
雪乃が私の席に近寄ってきた。
「ね、今日さ学校帰りにあそこ寄らない?」
「あそこ?」
雪乃がニヤリと笑った。
学校が終わり、私と雪乃はファミレスに来ていた。
雪乃が言っていたあそこというのはファミレスの事だったのだ。
そういえば当時はよくここで雪乃と時間を忘れて色々語り、長居していた事を思い出した。
「新学期早々授業ってきついよね、半日で良くない?」
「ほんとそれね。」
2人でドリンクバーを頼み、ジュースを片手にあの頃と同じく話に花を咲かせていた。
「明日って数学の小テストあるよね。確か。」
「えっ、やばいそれは。」
やばいと言いつつも、私の心情は決して荒れてはいなかった。
口にする言葉はどれも懐かしくてかけがえのない響きだ。
ファミレスを出て解散する時も。
「じゃあ、また明日学校でね!」
「うん、またね。」
雪乃と笑顔で別れて帰路に着く。
ああ、そうか。
友達とこうして毎日学校で会えるんだ。
わざわざ休みを合わせたり、遊ぶ約束をしなくても毎日友達に会える。
そう思ったら、嬉しくて仕方がなかった。
死のうなんて考えは、微塵も浮かばない。
明日が来るのが楽しみで待ち遠しい。
身体が羽根が生えたように軽い。
どこまでも走れそうなほど。
そう思ったら、ついつい家に走って向かってしまった。
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