【完結】それは、覚めて欲しくない夢だった

ぴえろん

文字の大きさ
7 / 7

7 夢の出口

しおりを挟む

目が覚めると、白い天井が目に映った。

白いベットの上に横たわっていて、自分の体には沢山の管が付けられていた。

それらを見て、ここが病院であるのだとぼんやりと理解した。

横にいた看護師が、私の目が覚めたのを見て慌てた様子で病室を出て行った。










「先生!505号室の患者の意識が戻りました!」

息を切らしながら、看護師が目の前にいた医者達にそう告げた。

「先生!やりましたね!実験大成功です!」
 
1人の若い研修医が隣の医師を称えた。

「いや、運が良かっただけだ。あの患者の脳は奇跡的に大破していなかったからな。」
  
顎に手を当てながら謙遜するように医師が答える。


「飛び降り自殺したけど、落ちた場所が花壇だったんですよね。運がよかったですよね。…いや、本人は死にたかったのだから運が悪いんですかね?」


「でも、ずっと意識不明の重体だったのに、こうして意識が戻るのは奇跡ですよ。やっぱり先生の言う通り、大脳皮質と海馬を刺激して、幸せだった記憶を思い出させ、夢に反映させるのは大成功でしたね。」

二人の会話を聞いて、看護師が俯いた。

「…けど、幸せな記憶を思い出した後に、現実を見て、ショックを受けないでしょうか?

本人にとって、死にたくなるほど辛かったはずなのに。」

看護師の言葉に医師が鼻を鳴らした。

「それは、我々の考えることではない。

私達は最善を尽くして治療するだけだ。助かった患者がその後幸せに生きるかどうかは、本人が決めることだ。」


「それは、そうですけど…。」


「とにかく505号室に急ごう。」

三人が慌てて病室へ向かう。

窓の外はすっかり暖かくなっていて、春が来ていた。

もうすぐ、こっちでも桜が咲くだろう。




それは、覚めて欲しくない夢だった。【終】
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

あなたが決めたことよ

アーエル
恋愛
その日は私の誕生日パーティーの三日前のことでした。 前触れもなく「婚約の話は無かったことにしよう」と言われたのです。 ‪✰他社でも公開

処理中です...