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家族からの扱いは最低でした
しおりを挟む広間はその名称通りとても広く、映画でしか見たことがないような長い机に飾りが施された椅子が置かれていた。
そして、この身体の持ち主の家族と思われる人が既に何人か座っていた。
どこに座ればいいかしばし悩んだが、とりあえず空いている席に腰を下ろした。
「ようやく来たか、ユリア。呼ばれたらすぐ来なさい。」
上座に座っている、銀髪の男性が苛立ちを含んだ声で、私に向かってそう言った。
どうやら私はユリアと言う名前らしい。
風貌から察するに、この屋敷の主人であり、恐らくこの身体の持ち主の父親だろう。
「遅くなり申し訳ございません。」
よく分からない私はとりあえず謝罪を述べた。
「遅れてごめんなさい!」
私の後ろから、可愛らしい声が聞こえてきたので、座ったまま 振り返る。
星のように輝く金色の髪。
その頭には可愛らしい真っ赤なリボンを乗せている。
そして身に纏うドレスは、私の着ている着古したドレスとは大違いの高価で可愛い物だった。
「おお、ローラ。待っていたよ。」
その優しい声にびっくりし、声の主の方を見た。
それは正しく、私に先ほど声をかけた父親と思われる男性だった。
どういうこと?
私の時とはまるで態度が違う。
もしかして、私は娘じゃなくて、この後から来た女の子だけが本当の娘なのかと、そう勘ぐってしまいそうになるほどだ。
疑問に思いながらもう一度席に座る人を順番に眺めた。
上座に座る父親らしき銀髪の男性。
その隣に座る母親らしき金髪の女性。
そしてその向かいには兄と思われるような青年。
そして、私の向かいに座るのが、私と同じ歳くらいのローラと呼ばれた可愛らしい女の子。
「全員そろったな。食事を始めよう。」
父親と思われる男性のその声で、その場にいた全員が目の前の料理に手をつけた。
「お父様!」
ローラがそう言いながら上座にいる男性に目を向けた。
ということは、やはりあの男性が父親なのね。
「昨日は児童施設の子達の前で歌を歌って差し上げました。」
ローラは父親に微笑みながらそう話す。
「そうか。お前の歌声は天使のようだからな。きっとみんな、ローラに感謝しているだろう。」
父親もローラに優しい笑みを浮かべながら返事をした。
「ローラの歌声は素晴らしいからな。」
「ローラ、お父様に褒められて良かったわね。」
父親に続き、兄と母親もローラに賛辞の言葉を述べた。
ローラも、満更ではなさそうな顔で笑っている。
父親はしばらくそんなローラを見つめていたが、ふいに思い出したように私を見て、盛大にため息をついた。
「それに比べて、ユリア。お前は昨日どう過ごしたのだ?」
唐突にそう聞かれ言葉が詰まった。
どう過ごしたって聞かれても…、目が覚めたのは今日なのに答えられるはずがない。
何も返せないでいると、父親が先に口を開いた。
「この家族の中でお前だけ、唯一何も才能がない。」
父親はそう言いながら私たち全員の顔を見渡し、続けてこう言った。
「お前の母は、ピアノの天才で綺麗な音色を奏でられる、お前の妹のローラもそれに似て歌の天才だ。ローラの歌声を聴けば人は心を奪われ癒される。」
目の前に座るローラは照れたような表情を浮かべたあと、私に向かって意地悪く笑った。
なるほど、ローラは私の妹で父親のお気に入りってことね。
そして、あのローラの表情を見る限り、私は馬鹿にされている。
ローラが着てるドレスは、私のドレスが着古された上に何も装飾品が施されていないのに対し、新品で装飾品がきらきら輝いているのも、そういうことなのだろう。
「そしてお前の兄は私に似て賢い。将来なんの問題もなくこの伯爵家を継ぐだろう。」
父親はそこまで話してから、手元に置いてあるコーヒーを一口飲んだ。
そして私を見た。
「このフリージア家においてお前だけ、唯一何も取り柄がない存在だ。」
それを聞いて、私はふうっと心の中でため息をついた。
ご丁寧に御説明どうもありがとう。
お陰でよく分かったわ。
つまり転生先の私の名前は、ユリア・フリージア。
伯爵家の長女で、才能が無いと家族からは疎まれている存在。
そして、歌の天才の妹からは、舐められているような姉ってことね。
目の前に置かれた皿に入っているスープを、スプーンですくって口に運んだ。
美味しい。
こんな状況でも美味しいなんて、さすが伯爵家の食事。
料理人はかなりの腕前ね。
「お父様、お姉様も色々頑張っていますので、それ以上言うのは良くありませんわ。」
ローラが父親にフォローを入れた。
ローラが私を見るその顔は、明らかに見下されてるのだと分かるような表情だ。
心の中では恐らく私を嘲笑っているのだろう。
「ローラは優しいな。」
父親がそう言いながらローラに対し感嘆している姿に嫌悪感を抱いた。
けっ。
しょーもな。やってらんないわ。
茶番に付き合う気のない私は、スプーンを机に置き椅子から立ち上がった。
「体調が優れませんので失礼させていただきます。」
この身体の持ち主の記憶が流れ込んだりはしないが、礼儀作法が身体に染み付いているらしく、ごく自然にドレスの裾を持ち優雅に頭を下げた。
そしてそのまま、私は部屋を出た。
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