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ローラの新しい一面を見ました。
しおりを挟むローザン・モンテヌ伯爵家に嫁ぐまで1週間を切った。
だからといって、私の日常は特に変わりはしなかった。
好きな時に出掛け、妖精たちと一緒に絵を描く毎日を送っていた。
「役立たずのユリアが、ようやくこの家を出て行くんだな。」
家の廊下ですれ違った兄が、私に冷たくそう言った。
全く、この家の人は何かしら私に嫌味を言わないと気が済まないわけ?
私の周りを飛んでいる妖精も、この屋敷に住む全員が見えないみたいだし、思った通り心の綺麗な人はいないようだ。
まあ、その方が、色々聞かれたりしないので助かるが。
そう思いながら兄を見上げた。
ローラとおなじ金色の髪。
ユリアと同じ紫色の瞳。
顔も整っているけど、でも、この前街で見かけた男の方が整ってたな。
何も言い返さない私を見て、兄が再び口を開こうとした時だった。
「お兄様、お父様が呼んでいましたよ?執務室に来るようにって。」
唐突にローラの声が聞こえたので2人とも振り返る。
振り向いた先には、相変わらず豪華で可愛いドレスに身を包むローラが立っていた。
「ああ、分かった。ありがとう、ローラ。」
兄はローラの頭を撫でてから、執務室へ歩いていった。
私に対しては仏頂面の兄も、 ローラの前では父親と同じく甘々な態度へ変わるようだ。
ローラが兄の背中を見送った後、私を見た。
「お姉様.......、ここ最近ずっと聞きたかったのですが......」
珍しく口篭るローラに首を傾げた。
ローラが言いにくそうにしている事の方が、こっちには不思議だった。
いつもなら息を吐くように嫌味をすらすら言う癖に、今日はどうしたのだろうか。
早くはっきり言ってくれないかな?
「何?私もう、部屋に戻るけど。」
私が自室に戻ろうとした時、ローラが慌てて私の腕を掴んだ。
なんだろう。そんなに慌てて何が言いたいの?
「その周りにいる妖精はなんですか?」
その言葉に思わず目が見開いた。
えっ.......。
「なんで.......」
何であんたに妖精が見えるの!?
そう言いたいが言葉を呑み込んでしまった。
ローラは心が綺麗なはずがないのに、一体なぜ!?
それに、どうして妖精だってすぐ分かるの?
聞きたいことがたくさんあるのに、言葉が出てこない。
そんな私に、ローラが顔を近づけてきた。
「答えてください。その妖精たちはなんなのですか?」
近づいたローラの顔は背すじが凍るような冷たさだった。
今までローラが私を見下したり、愛嬌を振りまく笑顔なら散々見てきたが、冷たい表情を見るのは初めてだ。
なんなの?
私が妖精と一緒にいると、何かまずいことでもあるの?!
どうするべきか分からず、つい妖精たちの方を見てしまう。
エリザ、ルクス、イグニスの3人とも、ローラの迫力に怯えているようだった。
3人のその顔を見たら、なんだか守ってあげなくてはという気持ちに駆られ、気がついたら妖精たちを隠すように抱え、ローラを押しのけて走っていた。
「どこ行くの?!お姉様!?!」
ローラの大声が聞こえてくるが、関係なしに走り屋敷を飛び出した。
とにかく、とにかく遠い所へ.......!!
その一心でがむしゃらに走った。
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